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ベトナム ホーチミンについて【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2015/11/02 最終更新日2023/10/31

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はじめに

2015年10月にベトナムのホーチミンを訪問してきました。この記事ではホーチミンについて記載をします。

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写真は、フランス領インドシナ時代に建築されたホーチミンの中央郵便局です。観光名所とされており、夜はライトアップされています。

ベトナム概況(国・地域名から日系企業進出状況までJETROベトナム基礎データより引用)

・国・地域名:ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam
・面積:331,689平方キロメートル(日本の0.88倍)
・人口:8,971万人(2013年、出所:ベトナム統計総局(GSO))
・首都:ハノイ 人口693万7,000人、なお、ホーチミン人口781万8,000人(2013年)
・言語:ベトナム語、ほかに少数民族語
・宗教:仏教(約80%)、そのほかにカトリック、カオダイ教、ホアハオ教など
・公用語:ベトナム語
・実質GDP成長率(%):5.4
・一人あたりのGDP(名目):ドル1,902
・消費者物価上昇率(%)6.6
・日系企業進出状況:企業数:1,299社

ホーチミンという都市

今回訪問したのは、ベトナム南部にある経済都市のホーチミンです。ベトナム戦争終結まではサイゴンという都市名でした。ベトナムの首都は北部にあるハノイですが、経済的にはホーチミンのほうが栄えています。

ホーチミンの一人あたりのGDPは4,986ドル(2014年)となっており、ベトナム全体の値の倍以上となっています。また、ホーチミンの経済成長率は10%前後となっています。四季がなく、気候が安定しています。また、タイのように、大きな自然災害により経済に悪影響を与えたことがないそうです。写真は、ベトナム料理のフォーです。実際に筆者がいただきました。フォーは、野菜がおいしいし胃にもやさしい料理でした。

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ベトナム国民の平均年齢

ベトナム国民の平均年齢は27歳もしくは28歳程度といわれています。日本が45歳程度ですので、若い労働者・消費者が多いのです。インドネシアと同様、活気があるなと感じました。

進出企業の業種

製造業5割、商社2割、IT系1割、その他小売業などが進出しています。大企業はすでに進出済みですので、新規に進出するのは中堅企業が多くなってきています。ホーチミン近辺は、人件費が高くなってきているので、今後はメーカーの進出は適していないとの声を聞きました。

これに対してIT系については優遇税制が用意されており、進出を促進させたいという意図が伺えます。しかし、小売業については、行政よりENT(Economic needs test)という試験をパスしないと、2店舗目以降が出店できないというルールがあり、外資小売業の進出の障害となっています。しかし、このルールは廃止の方向に向かっているとのことです。

直近の進出事例としては、牛角や湘南美容外科が進出しており、今後もサービス業の進出が増加していくと予想されています。

言語

英語もしくはベトナム語が使われています。このため、ビジネスでは英語とベトナム語を併用する形で意思疎通を図ることとなるでしょう。日本語を話すベトナム人もいます。しかし、日本語が話せるベトナム人を雇用する場合、雇用主は平均相場より1.5倍程度高い給与を支給することとなります。

人件費

新卒の通常の労働者で月30,000円から40,000円程度、勤続5年目ぐらいで80,000円程度、管理職クラスになると月150,000円から200,000円程度となるそうです。この給与額はホーチミンでオフィスワーカーとして採用する場合の相場です。

なお、給与相場が年10%程度ずつ上昇していることや、役職が上がると給与が大幅に増える傾向があることに注意が必要です。また、日本語が出来るベトナム人を採用する場合は、通常の給与より増額しなければ、採用が難しいと思われます。

写真は、ホーチミン市内の農作物販売のお店の様子です。三角の帽子が印象的です。

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労働者

タイと異なり、ホーチミンでは人材の確保にそれほど困っていないようです。ベトナム人からみて、日本企業は信頼度が高いようで、シンガポールのように、なかなか日系企業に労働者が入社してくれないということはありません。なお、転職が盛んにおこなわれており、同じ企業に5年勤続している労働者は多くないとのことです。

ベトナム人労働者の気質としては、親日的で手先が器用で、仕事後も勉強することも多く勤勉です。しかし、時間にルーズであり、納期をあまり守らない、メモを取らないことがあり、管理者による一定の管理が必要となりそうです。

よく話題になるのは、年間の残業時間について、法律で年200時間を上限とすると決められていることです。しかし、労働者も残業代欲しさで働きたい方もいますし、会社としても出来る労働者には残業をしてほしいという気持ちがあります。残業時間の規制に対し、会社としてどのように対応するのかがポイントとなっているようです。

事務所家賃

ホーチミン中心地である1区で平均的なグレードの物件では、1㎡あたり25ドルから35ドル(3,000円から4,200円)程度となっています。通常、スケルトン(内装などない状態)での引き渡しとなります。

また、ホーチミンにもサービスオフィスの会社が進出しており、月900ドルから1,600ドル(108,000円から192,000円)程度で4名程度まで勤務できる部屋を提供しているとの話も聞きました。サービスオフィスは、さまざまな形態のサービスを提供していますので、詳細はサービスオフィス会社各社へお尋ねください。

賃貸物件を借りる際には、ベトナム人はバイクで通勤する方がとても多いので、駐車・駐輪場のスペースを多く必要とすることを頭に入れておくことをお薦めします。

また、貸主が土地の利用権、建物所有権、賃貸業を営むことのできるライセンスを保有していることを確認することが必要です。

なぜなら、ベトナムで法人を設立する場合や、駐在員事務所を設置する場合、設立や設置の申請時に、上記の権利やライセンスを保有していることを証明する書類を申請で求められているからです。

住居家賃

賃貸物件の種類として、サービスアパートメントとコンドミニアムの2つがあります。サービスアパートメントとは、部屋の提供はもちろんのこと、清掃などのホテルようなサービスも受けることが出来る物件をいいます。通常、法人が物件を所有しています。

これに対し、コンドミ二アムとは、プールやスポーツジムつきの比較的大きめのマンションの一室を借りる物件をいいます。通常、個人が物件を所有しています。

サービスアパートメントの相場は、2ベッドルームで1,500ドルから4,000ドル(180,000円から480,000円)程度、コンドミ二アムの相場は、1,000ドルから2,000ドル(120,000円から240,000円)程度となっています。日本人ファミリーは、日本人学校などがある7区といわれるエリアに物件を借りる方が多いそうです。

コンドミ二アムはオーナーが個人事業主のため、契約書や領収書を発行してくれない人がいます。借主としては、税務申告時に書類が必要であっても、オーナーから書類を受け取ることが出来ない場合、いろいろ支障をきたします。この点注意が必要です。対策としては、日本人に物件を供給した実績のあるオーナーの所有物件を借りたり、日系の不動産仲介業者にお願いして交渉していただくことが考えられます。

写真は、ホーチミンの7区といわれる新興住宅地のエリアのショッピング街です。とても綺麗な町並みでびっくりしました。

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政治

ベトナムは社会主義国であり、共産党の一党独裁です。ベトナムに住まわれている日本人によると、法律がころころ変わったり、賄賂を求めてきたりするなど、面倒なことが多いようです。

進出形態

駐在員事務所・支店(銀行業・保険業・証券業・法律サービス業など特定の業種に限定されている点に注意)・現地法人が考えられます。

駐在員事務所は市場調査やマーケティングなどに業務が限定されますが、ベトナムでは駐在員事務所の設置が多いとのことです。これは日本法人とベトナム法人でなんらかの契約がある場合、その履行状況を確かめるべく、ベトナムに駐在員事務所を設置して日本人を駐在させるためだそうです。また、撤退も容易ですので、進出に当たっては検討をしてみてはいかがでしょうか。

現地法人の設立については、行政の方の対応がいまいちであることが多く、スケジュールどおり手続きが進まないという話を時々聞きます。新規設立をされる際には、余裕をもった計画を練られたほうがいいかもしれません。

税金・監査

税制については、日本と同様に法人税(税率原則22%、2016年1月1日より20%)、個人所得税、付加価値税(日本の消費税に近い税金、原則10%)が課せられますが、地方税がありません。

よく話となるのが、税務当局による税務調査です。現地の会社の方に伺うと、調査開始前から結論ありきで話しをしてきたり、便宜をはかるように仕向けてきたりすることが多いとのことでした。外部監査については、主に上場企業が対象となりますが、外国資本が1%でも入っている会社も規模を問わず、監査の対象となってしまいます。

宗教・文化

仏教徒が8割を占めています。宗教対立などでビジネスに悪影響を及ぼしていることもありません。

治安

ホーチミン市内で治安が悪いエリアはありません。私も町を歩いていて身の危険を感じることはありませんでした。なお、スマートフォンが高額で売買されているので、旅行者のスマートフォンをひったくる事件は多いと聞きました。

教育

日本人学校は7区といわれる新興住宅地のエリアにあります。町並みの綺麗なこともあり、家族でベトナムに住まれる方は7区を希望する方が多いと聞いています。

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