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2016年全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査(東京商工リサーチ作成)から読み取る不正の対応策とは?

記事作成日2017/03/30 最終更新日2017/03/30

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はじめに

今回は、近年頻発している不適切な会計?を防ぐためにはどのようにすればよいのか、筆者の私見も交えてお話をします。

東京商工リサーチによる調査

株式会社東京商工リサーチによると、2016年に不適切な会計・経理を開示した上場企業は、57社で、2008年以降で最多を記録したと発表しています。詳細は下記をご覧ください。

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170315_01.html

原因のトップは会計処理のミス

不適切会計の43.1%は、経理や会計処理のミスによるものだそうです。これは、粉飾などの意図的な行為ではなく、会計知識が乏しかったり、適切な情報が集められなかったり、チェック体制が甘かったなどを原因とする意図的でない誤りです。

読者の方は、上場企業ともなると経理のプロが集結しているように思えるかもしれません。しかし、平成に入って会計基準の数も多くなった上に、見積りの要素も多く求められているため、現代の会計実務に対応できる人材が不足しているのも原因でしょう。

ミスを防ぐ対応策

筆者が考える対応策は以下のとおりです。

1 現在の会計実務に対応できる人材を採用する
2 経理業務を外注する
3 経理体制を見直す

1については、企業側が会計士資格を持った人材を採用することが多くなっており、すでに対策が練られているともいえます。私見ですが、ここ5年で会計士の採用が増えている印象があります。また、会計士の合格者数は毎年1,000人を超えていますので、会計士が集中している東京の企業であれば採用は難しくないと思われます。

2は、財閥系企業を中心に規模の大きい企業に見られます。この場合、内部統制の観点から、発注側に業務を管理する人材を配置することが求められます。

3は、既存のメンバーで対応する方法です。やり方としては、作業プロセスを単純化したり、組織構造をシンプルにして情報の伝達をよくすることが考えられます。しかし、どちらにしても社長や役員クラスの人材の取り組み、現場への後押しが必要です。

外部の会計士にアドバイスを求めることも

3を実行するにあたり、普段お付き合いしている会計事務所の方へ相談する事もお薦めです。通常、会計事務所は税理士が多いのですが、会計士出身の税理士(公認会計士と税理士を両方登録している)もいます。

そのような方は、日本の場合、おおむね大手の監査法人出身で監査の経験があり、多くの企業の仕組みを見てきています。弊社でも多くの会計士を抱えており、アドバイスをすることもできます。続いて、経営者不正や従業員不正について記載いたします。

世間で騒がれるのは経営者による不正

ニュースや新聞で大きく報道される不適切会計は、経営者による不正、もしくは組織ぐるみの不正が多いのではないでしょうか。現在話題となっている㈱東芝がその代表例です。

㈱東芝については、不適切な会計と原発事業の損失の2つが取り上げられています。私見ですが、もし不適切な会計がされていなければ、銀行の融資を受けやすかったり、株式市場から資金調達できたかもしれません。不適切な会計が原因で㈱東芝の信用が崩れ、原発事業の損失で財政的にも厳しくなってしまったというのが現状でしょう。

このように、経営者による不正は、その企業の信用を失墜してしまいます。信用を取り返すにはかなりの時間がかかりますので、不正は避けなければなりません。

経営者不正の対応策

上場企業でも非上場企業でも組織の主宰者である社長は大きな権力と影響力をもっています。私見ですが、会社内部で経営者不正を防ごうと思っても現実的には厳しいのではないでしょうか。

対応策としては、外部の人間によるモニタニングが考えられます。

例えば、㈱東芝の件で監査法人が厳しく非難されましたが、見方を変えれば、外部機関である監査法人こそが経営者不正を抑止できるのはという期待があるためではないでしょうか。

また、銀行もその一つだと思います。特に昭和の時代は資金調達の多くは銀行からの融資でまかなっていたため、銀行からの圧力に屈するケースがあったのではと想像できます。

最近話題となっているのは、株主によるモニタニングです。株主総会開催日を遅くして、株主と経営者のコミュニケーションの時間をより多く持たせようとするための制度改正が予定されています。例えば、税務申告書の提出期限の延長制度の拡充や、決算短信の簡略化があげられます。

最後に従業員や取引先からの内部通報に触れます。経営者による不正を防ぐ方法として、適切ではないのかもしれませんが、現実には内部通報により不正が発覚したケースが多く見られます。このことは頭の片隅に入れておいたほうが良いと思います。

従業員不正もある

内部統制が有効に機能していない場合、子会社などで横領などの従業員不正が起きることがあります。従業員不正については、従業員に動機があり、組織の仕組みに隙があり、チャンスがあれば、どんな従業員でも不正をする可能性があります。

これを防ぐためには、抜き打ちも含めた内部監査を実施したり、定期的に子会社の責任者から財務的な報告もさせるなどの工夫が必要です。

よくある失敗例は本社側の意識が甘く、徐々にチェックが弱くなることです。従業員不正は不正を犯した本人が悪いとされますが、原因をしらべると本社によるチェック機能の低下があり、他の子会社でも同様の不正がされてしまう可能性が十分にあります。

定期的に会計事務所や監査法人の会計士に内部監査をお願いして、組織に刺激を与えることをお薦めします。