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組織の集権化と分権化~シンガポールLCCのTiger AirとScootの統合から~

記事作成日2017/06/26 最終更新日2023/06/09

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雇用冊子

シンガポールの航空会社であるタイガーエアーとスクートが2017年7月25日に合併することとなりました。今回は、組織の集権化と分権化のメリットとデメリットについて私見を記載します。

集権化とは

社長などの組織の上位者に権限が集中している組織を集権化された組織といいます。新規に会社を設立した場合、社長を頂点として集権化された組織からスタートし、規模が大きくなるにつれて分権化していく傾向があります。

今回の飛行機会社の統合は、いわゆる集権化をしたという解釈になるかと思います。

集権化のメリットは以下のとおりです。

・社長など権限と持っている人間に強いリーダーシップがある場合、組織行動が明確になる。権限者の判断が良い場合、経営資源を無駄なく使うことができ、かつ、効率的な運営が可能となる。

・責任の所在が明確になりやすい。

・利用するブランドが一本化されたり、集客方法や人材採用が一本化されるなど、利害関係者からみてわかりやすい組織となる。

・外部環境が安定している業種で一定のシェアがある場合、集権化した組織のほうが利益を生み出しやすい(過去と同じ活動をすれば利益が確保される傾向がある)。

分権化とは

取締役や部長、課長クラスの組織の中位者が一定の権限を持っている組織を分権化された組織といいます。中位者がもっている権限の大きさによって、事業部制やカンパニー制、持株会社制などに分類されます。ネットワーク組織も分権化の一例かもしれません。近代の大企業は分権化せざるを得ない側面もあります。

分権化のメリットは以下のとおりです。

・権限を行使するものが多数おり様々な経験をしていくので、その中から将来の社長候補が見つかりやすくなる。

・グループ全体からみて、グループ間のシナジーを生み出しづらい事業や多額の資金調達をしたい場合は、分権化された事業を容易に売却できる。また、新規ビジネスを行うにあたって、既存の会社を買収してグループの一員として取り込みやすいし、買収しない場合でも、既存のグループ会社の影響を受けない形で新規ビジネスに取り組むことができる。

・環境が変化しやすい業界においては、時代の流れや消費者のニーズを的確に掴みすばやく行動する必要があるが、分権化された組織はその実行がしやすい。

・組織の上層部でない従業員でも意思決定に参画できる可能性があるので、モチベーションを保ちやすい。また、自発的な行動を生み出しやすい。

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実例

1 某重電グループの例

某重電グループが2003年に持株会社制を導入して分権化(分社化)を図りましたが、その後2011年ごろから分社化した事業を持株会社が統合していった事例があります。重電という業界はB to B の業種であるとともに外部環境の変化が大きくないので、分権化したけども、そのメリットをあまり実感できなかった可能性があります。

分権化したほうがよいという論者もいるかと思いますが、集権化しても問題ない組織体であれば、どんどん集権化したほうが意思決定も明確で経営資源の使い方も無駄がない組織になる傾向が見られます。組織の内部事情もありますが、属する業界の外部環境にも大きく左右されます。

2 TOMAグループ(弊社)の例

弊社グループは明治時代から司法書士事務所としてビジネスをはじめましたが、35年ほど前から税理士事務所も始めました。規模が拡大したことなどから、2012年にTOMA税理士法人などいくつかの法人に分社化して現在に至っています。

弊社が属する業界は資格業であり一定の規制をうけるため、保有資格ごとにそれぞれ法人を作らざるをえない(社会保険労務士であれば社会保険労務士法人)、すなわち、分権化せざるを得ない事情もあります。

弊社グループは分権化しながらも職員一同、同じオフィスで仕事しているなど、組織運営には一体感を作るようにしてお客様へのワンストップサービスを実現しています。

弊社の事例を挙げさせていただいたのは、分権化の議論は絶対的な答えがないうえに、集権化と分権化のバランスを図ることが、組織(グループ)の目標を実現する近道と考えられるからです。各事業の時代の変化(外的環境の変化)をみながら、内部の経営資源を吟味して、好ましい組織構造を構築していくことが必要となっています。

今回のLCCの合併の件

シンガポールの航空会社であるタイガーエアーとスクートの合併は、以下のことが考えられます。

・同じLCCを事業としており分社化するメリットが乏しいこと

・予約システムや人員の統合により効率化を図る。特にLCCは安い価格でのサービス提供を売りとしているケースが多いので、効率化を図りたいのでは?

・ともにシンガポール航空の傘下にあり、統合をしやすかった

・ひょっとしたら、ライセンス保有などの事情により統合せざるを得なかった?

飛行機の利用者がますます利用しやすくなり、航空会社の評判がさらによくなったり、利益が増えたり、従業員などの満足度が向上すれば成功といえるのではないでしょうか。

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