[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
前回につづき、繰延税金資産の回収可能性について簡単に説明します。今回は第3回目です。
【日本における繰延税金資産の回収可能性の判断(つづき)】
《もし会社が儲かり具合を分類2(原則)としたとすると》
分類2に区分する会社とは、業績が安定している会社であり、下記のすべてに当てはまる会社をいいます。(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針19項)
・過去(3年)及び当期の全ての事業年度において、臨時的な原因により生じたものをのぞいた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
・当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない
・過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない
このような会社においては、前回のブログ「その2」の引当金計上について、以下のような税効果適用の仕訳が考えられます。
《賞与引当金》
(借)繰延税金資産(B/S) 30,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 30,000,000
→翌年賞与を支給するため。同適用指針20項参照。
《退職給付引当金》
(借)繰延税金資産(B/S)60,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 60,000,000
→分類1及び分類2に区分された会社については、退職給付引当金にかかる繰延税金資産は回収可能性がある旨の規定があるため。同適用指針35項参照。
《役員退職慰労引当金》
(借)繰延税金資産(B/S) 2,500,000 (貸)法人税等調整額(P/L)2,500,000
→3年後に定年を迎える役員が6名中1人おり、過去の実績から本人の退職が確実な場合。同適用指針37項参照。
引当金の計上を初めて行った場合、その年の損益計算書の利益が350,000,000円減少するわけですが,この会社の場合、税効果会計を適用しても、92,500,000円損益計算書の利益を増加させるにとどまり、トータルでは257,500,000円の利益減少となります。
【分類によって決算書の利益が大きく変わってしまう】
上記の結論ですが。
分類1で、245,000,000円の利益減少
分類2(原則)で257,500,000円の利益減少
分類4(原則)で318,200,000円の利益減少
上記では取り扱っていませんが、分類5では、350,000,000円の利益減少
となります。
分類1と分類5で1億円以上も変わってしまいます。繰延税金資産の回収可能性の判断は、企業の当期純利益及び純資産に大きな影響を及ぼしていることがおわかりになるのではないでしょうか。
【次回】
次回は、シンガポール及び国際財務報告基準(IFRS)の繰延税金資産の回収可能性の判断についての続きをご説明します。
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