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税効果会計 繰延税金資産の回収可能性 その2 (日本とシンガポール(国際財務報告基準)との違い)RECOGNITION OF DEFERRED TAX ASSETS (Differences between Japanese GAAP and IFRS) Part 2

記事作成日2016/04/05 最終更新日2017/01/27

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[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]

【はじめに】

前回につづき、繰延税金資産の回収可能性について簡単に説明します。今回は第2回目です。

 

【日本とシンガポール(国際財務報告基準)との違い】

第1回目のブログにて、繰延税金資産の回収可能性とは、税効果会計の適用に当たって、

A その会社が将来も引き続き儲かる見込みを予測しながら、

B 上記の引当金計上の仕訳一本一本について、繰延税金資産を計上していいかどうかを判断する作業をいうと説明しました。

 

日本の会計基準では、Aについては、儲かり具合を基本5つの分類に分けて、それぞれの分類ごとに Bの扱いを決めていくというスタンスを取っています。

しかし、シンガポールの会計基準や国際財務報告基準では、Aについて儲かり具合を分類わけしないという点が大きく異なっています。

 

実は、先日発表された「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の中では、儲かり具合を基本5つの分類する手法について、これを国際財務報告基準のように分類しないようにするかどうか検討したとのことですが(同適用指針第63項参照)、実務への影響を考えて分類するスタイルを引き続き踏襲するとのこととなりました。

 

日本の場合は、その会社が5つの分類のうち、どの分類とするかが繰延税金資産の回収可能性の結果を大きく左右するので、分類の検討について争いが生じるのです。

 

日本の実務において、監査法人の監査が入っていない企業の決算書を拝見すると、繰延税金資産の回収可能性の判断を行わずに、繰延税金資産を計上している企業を見かけます。

しかし、先日発表された「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」は、以前の監査上の取扱いから会計基準へと扱いが変更となっています。

私見ですが、今後は決算書を作成するに当たり、監査法人の監査を受けていなくても繰延税金資産の回収可能性の判断をすることが求められるのがさらに明確になったといえます。

 

【日本の繰延税金資産の回収可能性の判断の例】

第1回で扱った仕訳例に基づいて、日本の繰延税金資産の回収可能性の判断の例をご説明します。

引当金の計上を初めて行った場合を事例として、引当金計上の仕訳と税効果会計適用の仕訳を記載しました。

なお、これは筆者によるシミュレーションに過ぎず、実際は将来の課税所得についての判断や様々な事項を考慮して決定されます。この点ご留意ください。

 

(単位:円)

《引当金計上の仕訳》

(借)賞与引当金繰入額(P/L) 100,000,000 (貸)賞与引当金(B/S) 100,000,000

(借)退職給付費用(P/L) 200,000,000 (貸)退職給付引当金(B/S) 200,000,000

(借)役員退職慰労引当金繰入額 50,000,000 (貸)役員退職慰労引当金(B/S) 50,000,000

 

《税効果会計適用の仕訳。実効税率を30%と仮定する》実は会社が分類1に区分された場合の結果です。

(借)繰延税金資産(B/S) 30,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 30,000,000

(借)繰延税金資産(B/S) 60,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 60,000,000

(借)繰延税金資産(B/S) 15,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 15,000,000

 

引当金の計上を初めて行った場合、その年の損益計算書の利益を350,000,000円減少させてしまいます。

しかし、税効果会計を適用すると、105,000,000円損益計算書の利益を増加させますので、トータルでは245,000,000円の利益減少で済むこととなります。

 

《もし会社が儲かり具合を分類4(原則)としたとすると》

分類4に区分する会社とは、業績が芳しくない会社であり、下記のいずれかに当てはまった会社をいいます(同適用指針26項)。

・過去(3年)及び当期において、重要な税務上の欠損金が生じている

・過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある

・当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる

 

このような会社においては、以下のような税効果適用の仕訳が考えられます。

(借)繰延税金資産(B/S) 30,000,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 30,000,000

→翌年賞与を支給するため。同適用指針27項参照。

(借)繰延税金資産(B/S) 1,800,000 (貸)法人税等調整額(P/L) 1,800,000

→翌年定年を迎えるなど明らかに退職するとわかる従業員が全従業員の3%いる場合。同適用指針27項参照。

(借)繰延税金資産(B/S) 0 (貸)法人税等調整額(P/L)0

→翌年1年間役員の辞任及び定年等が見込まれない場合。同適用指針27項参照。

 

 

引当金の計上を初めて行い、その年の損益計算書の利益を350,000,000円減少させてしまいます。

また、この会社の場合、税効果会計を適用しても、31,800,000円損益計算書の利益を増加させるに過ぎないので、トータルでは318,200,000円の利益減少となります。

 

 

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