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減損 日本と国際財務報告基準(IFRS)との違い その3 Impairment (Differences between Japanese GAAP and IFRS) Part 3

記事作成日2016/06/14 最終更新日2017/01/27

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【はじめに】

今回は減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを見ていきます。

 

【まず、会計基準の設定の仕方が違う】

国際財務報告基準(IFRS)では、IAS36号として「資産の減損」(Impairment of Assets)で固定資産に限らず独立してキャッシュ・フローを生むものの減損を包括的に規定しています。

これに対して、日本の会計基準は、売上債権や株式などの金融資産の減損については、「金融商品に関する会計基準」、固定資産の減損については「固定資産の減損に係る会計基準」、棚卸資産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」というように、減損の対象となる資産ごとの会計基準で取り決められています。

もちろん、国際財務報告基準(IFRS)でも棚卸資産や金融商品の減損については別の会計基準で定めがありますが、日本よりも包括的な規定を定めているように見えます。

 

私見ですが、国際財務報告基準(IFRS)の特徴として会計ルールについて包括的もしくは演繹的(与えられた命題から、論理的形式に頼って推論を重ね、結論を導き出すこと。)に設定をする傾向があります。

これに対し、日本の会計基準は実務慣習を重視して帰納的(個々の具体的な事例から一般に通用するような原理・法則などを導き出すこと。)に会計基準を設定する傾向が残っています。

最近、日本の会計基準も国際財務報告基準(IFRS)など、海外の会計基準の影響を強く受けるようになりました。その表れとして、日本の企業会計基準委員会は、我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、検討を進めています。日本の会計基準も国際財務報告基準(IFRS)と同様包括的に会計基準を設定しなければ現在の実務に対応できないという気持ちの表れだとも言えます。

収益認識の会計基準の話についても、本ブログで今後取り上げていきます。

 

【減損の兆候に関する違い】

“減損の兆候”とは、各資産の収益性が低下しているだろう兆しの有無を把握することです。

日本の「固定資産の減損に係る会計基準」では、減損の兆候の例として以下の事象をあげています。(同会計基準、二 減損損失の認識と測定1.減損の兆候より)

① 資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること

② 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること

③ 資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること

④ 資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと

 

日本の会計基準の特徴として、①から④について、客観的な判定基準を補足的に設けています。例えば、①については“営業活動から生ずる損益”とは“「継続してマイナス」”の言葉の定義を定めていたり、固定資産を購入した直後の立ち上げ時の扱いなどを明記しています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第12項)。

これは、一定の目安を定めた方が、実務上役に立つので定めているのです(同適用指針第77項参照)。日本のほかの会計基準や実務指針(減損に関するもの)も、客観的な指標や詳細な取り決めを定めているケースが多く見られます。

しかし、国際財務報告基準(IFRS)では、このような取り決めはあまり見られません。

 

【次回】

次回も減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを少し細かく見ていきます。

 

 

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