[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
今回は、日本の株主総会の開催期日についての現状と変化をお話します。
【現状】
会社法第296条第1項は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものと規定していますが,会社法上,事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないものとされているわけではありません。
しかし,議決権行使のための基準日を定める場合,基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られるため(会社法第124条第2項)、実務では決算日から3ヶ月以内に株主総会を開くケースが多く見られます。
詳細は、下記の法務省のホームページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0011.html
【課題】
日本は欧米諸国に比べ、決算から株主総会までの期間が短い、総会日が集中しているといわれており、企業の情報開示の準備期間が十分出ないとの指摘があります。また、株主総会に出席する株主や投資家の対話期間も十分でないとの意見もあります。
諸外国では、決算日から4ヶ月もしくは5ヶ月後に株主総会が開催されるケースが多く見られます。また、筆者が勤務しているシンガポールでは、決算日から6ヶ月以内に株主総会を開催すれば足ります。
このため、日本の株主総会開催日をより遅い期日に設定することが柔軟にできるような動きが見られています。
詳細は、下記の経済産業省の平成29年度経済産業省税制改正要望をご覧ください。こちらは、株主総会開催日設定の柔軟化に伴う法人税申告期限の見直しを要望しています。
http://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2017/zeisei_r/index.html
【決算短信も見直しの方向へ】
日本の上場企業は、正式な決算書(有価証券報告書や計算書類)が発表される前に、決算短信という書類を開示しています。これは、本来投資家の意思決定情報として役に立つよう、速報値として開示する趣旨から始まったと記憶していますが、実務上は、連結財務諸表の添付を要請しているため、決算短信を発表する日をもって決算数値を確定させる企業が多く見られました。
そうなりますと、短い時間で決算作業を行う必要があり、企業の担当者や監査を行う監査法人、さらに、税務申告を担当する税理士法人の作業が一定期間に集中してしまっています。
これを解消するためか、決算短信はあくまでも速報に過ぎず、法定開示が求められている計算書類や有価証券報告書を確定情報として扱う方向で検討されています。
詳細は、下記のサイトをご覧ください。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/disclose_wg/siryou/20160219/03.pdf
【今後の対応】
企業の経理や総務の方は、決算短信で記載する情報の内容の変更や株主総会日が変更されると、決算スケジュールに影響がでてくると思います。
企業の一部には、現状のままでいいのではないかという意見もあり、この意見に従うと、現状と変わらないこととなります。
一方、株主総会日を現状より遅らせる方針である企業の方は、ゆったりとした決算スケジュールを組むことができるかもしれません。
たとえば、3月決算の会社が8月25日ごろに株主総会を開くこととなれば、比較的閑散としている夏の時期に準備ができますので、作業の平準化を図ることができそうです。残業代が抑制できるなどのメリットもあるかもしれません。また、会場予約も楽になるでしょう。
【私見】
日本で仕事をしていたときは、いかに早く正確な数値を発表するかという視点で仕事をされていた方が多かったです。私もその一人です。
このため、3月決算が集中する日本では、4月中旬から6月上旬までは作業時間が多くかかっていました。また、監査に関しては、欧米の監査法人が使っているマニュアルを用いているものの、日本の決算スピードが欧米より速かったために、短期間に多くの作業を行わなければならず、作業員のストレスが強かったです。
さらに、税理士法人でも、上場企業の子会社の税務申告書等を4月の第1週の土日に作成することもありました。土日出勤を前提としなければ対応できないスケジュールなのでしょう。
しかし、シンガポールで勤務するようになってから、決算のスピードが遅く作業という観点から余裕がもて、作業が平準化することができました。これは大きな違いです。
また、東芝のような事件が発生したので、監査時間をある程度設けるというのも、投資家保護のためには必要なのではないかという気持ちもあります。
日本の方とお話していると現状のままでいいのではないかという意見もあります。しかし、決算短信は現時点の速報値、有価証券報告書等が確定数値という区分を明確にすることで、企業の実情の応じた柔軟な設計を許容することは制度上意味があると思います。
日本だけすべての上場企業に早くて正確な決算開示を求める必要性は乏しいように思います。この点は海外の潮流に従ってもいいのではないでしょうか。
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