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日本と国際財務報告基準での棚卸資産の評価の違い その2【TOMAシンガポール支店 公認会計士駐在の会計・税務事務所】

記事作成日2015/12/03 最終更新日2017/01/27

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[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]

【はじめに】

今回も、棚卸資産の評価減についてお話しいたします。

 

【気になる日本固有の規定】

前回は、棚卸資産の評価に関する会計基準は日本も国際財務報告基準も考えは一緒だとお話しました。しかし、日本の会計基準をよく読むと下記の定めがあります。

 

「営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理する。

(1) 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法

(2) 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法」

(企業会計基準第9 号 棚卸資産の評価に関する会計基準 第9項)

 

日本の会社では、上場企業を中心として、この基準に従い滞留在庫について、一定のルールを作って評価損を計上する実務が広く普及しています。おそらく監査法人の指導によると思われます。

たとえば、購入日から1年経過した在庫は50%減の評価、2年経過した在庫は100%減などとルールをつくり、決算日において一律に評価をするという実務です。

 

 

【どう考えるのか】

外国の公認会計士や外国法人のお客様、また、日本国内でも国際財務報告基準を適用しようとするお客様から、この基準に関する対応ついてご質問を頂きます。

ご質問の内容の一つ目として、社内で一定のルールを作るにあたり、そもそも実体と合っていないルールが作れてしまうのではないか、そうなると意味がないのでは、と聞かれます。

答えとしては、ルール策定時に監査法人と協議すると思われますので、その時点で一定のけん制が効いていること、また、含み損を抱えている滞留在庫について、一定のルールに従い、損益計算書の費用として機械的に計上していくことは、会社の恣意的な会計処理を防ぐこととなり、理にかなっていると考えられるというお答えをしています。

また、国際財務報告基準適用にあたり、一定のルールによる滞留在庫の評価損計上を取りやめる必要があるのではというご質問も頂きます。お答えとしては、取りやめる必要はないと思われますので、監査法人と協議してくださいというお答えをしています。

その理由は、国際財務報告基準の棚卸資産の評価の根本思考(※)は、「資産の評価は将来の実現する価額を超えて評価してはならない(=資産の評価は売価より低くあるべき、いいかえると資産は含み損を抱えてはならないという意味)」という思考ですので、滞留していることが明らかであれば、すでに値崩れをしている可能性が高く、評価損の計上をする必要性があると考えられるためです。

 

(※)シンガポールの会計基準FRS2号の第28項下線部分を参照

The cost of inventories may not be recoverable if those inventories are damaged, if they have become wholly or partially obsolete, or if their selling prices have declined. The cost of inventories may also not be recoverable if the estimated costs of completion or the estimated costs to be incurred to make the sale have increased. The practice of writing inventories down below cost to net realisable value is consistent with the view that assets should not be carried in excess of amounts expected to be realised from their sale or use.

 

 

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