はじめに
今回は、監査法人が㈱東芝の第3四半期レビュー報告書で報告があった、意見不表明について説明をします。
監査意見・レビュー意見とは?
監査法人もしくは公認会計士は、企業から監査やレビュー(※)を依頼された場合、監査結果に関する意見やレビュー結果に関する意見を表明することで役割を果たすこととなります。
ほとんどの監査意見は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって、会社の財務状況をすべての重要な点において適正に表示しているとする「無限定適正意見」となっています。この結果、企業は、決算書について信頼性が付与されることとなります。
しかし、監査の状況によっては、無限定適正意見と異なる意見が表明されることがあり、今回の株式会社東芝の件は、そのようなイレギュラーなケースにあたります。
(※)レビューというのは監査よりも水準の低い保証行為をいいます。イメージとしては簡略化された監査と思っていただいて結構です。
意見不表明とは?
監査人が監査やレビューを進めていったが、企業が作成した会計資料の紛失や企業が監査に協力が不十分などの理由で、重要な監査手続きが実施できず、その企業の決算書全体の確からしさがわからない場合があります。この場合、監査人は「意見不表明」という監査報告を行うことにより、その決算書が信頼できるものかどうかわからないという報告を行います。
監査の対象企業が上場企業の場合は、「意見不表明」の監査報告書やレビュー報告書を受け取った場合、証券取引所の上場廃止基準に抵触することとなり、大きな影響を受けることとなります。
実務では
意見不表明を報告する場合は、監査法人による審査もより慎重となります。監査人は、企業や利害関係者への影響が大きい行為だということを知っていますので、覚悟をもって意見不表明としています。この点は一般の皆様にも知っていただければと思います。
依頼者である企業としては適正意見がほしいと思い監査契約を締結しているのが通常ですので、監査人も適正意見を表明しようと努めます。考えられるケースとしては、監査時間を延長し、適正意見が表明できるまで監査を行って、期限が遅れてでも無限定適正意見を表明するケースです。しかし、監査人が監査時間を延長せず、意見不表明を表明せざるを得ないというのは、イレギュラーなケースにあたります。
監査人が意見不表明を表明する場合は、監査人と企業との信頼関係がなくなっていることも多く、監査人の交代が予想されます。