[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
今回は、マイナス金利が退職給付引当金へ与える影響についてお話しをします。
【まず、割引計算の概念とマイナス金利の影響】
来期に賞与を支給するために、期末に賞与引当金を計上することとしましょう。賞与引当金は支給時期が来期であることから、将来の支給額と現在価値とにあまり相違がありません。このため、来期に支給する金額を賞与引当金として計上します。
しかし、退職金の支給は相当先になるでしょう。このため、将来支給時の10,000,000円と現在の10,000,000円とは価値が結構違ってきます。このため、日本の会計基準及び国際会計基準などでは、将来支給時の10,000,000円を現在の価値に割り引く計算を求めています。
例えば、20年後の10,000,000円を現在価値に割り引くとしましょう。2016年3月31日の20年の国債の利率は0.441%です。
このため、10,000,000円÷(1+0.00441)20の結果、現在価値は9,157,553円となります。
次に、10年後の10,000,000円を現在価値に割り引くとしましょう。2016年3月31日の10年の国債の利率はマイナス0.049%です。
このため、10,000,000円÷(1-0.00049)10の結果、現在価値は10,049,132円となります。
マイナス金利で割り引くと現在価値が増えてしまいます。
【日本の退職給付引当金に関する会計基準】
退職給付債務は、退職により見込まれる退職給付の総額(以下「退職給付見込額」という。)のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算する旨を定めています(企業会計基準第26 号 退職給付に関する会計基準第16項)。
また、退職給付債務の計算における割引率は、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回り(安全性の高い債券の利回り)を使用する旨を定めています(同基準第20項及び注解6)。
このため、もし、20年後に退職する従業員の退職給付引当金を計上する場合は、上記の9,157,553円のような結果となり、10年後に退職する従業員の退職給付引当金を計上する場合は10,451,888円のような結果になるように思われます。
そうなりますと、割引率がマイナスだと負債が大きくなりますので、決算書の見栄えが悪くなるように感じます。
【次回】
退職給付引当金の会計は実に複雑ですので、上記のような結果になるとは限らないのです。続きは次回ご説明します。
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