租税条約とは
租税条約とは、居住地国と源泉地国の両方から課税されること、すなわち二重課税が生じるのを回避したり、脱税を防止したりするために、二国間で結ばれている取り決めのことをいいます。
租税条約が締結される際には、国際標準とされる「OECDモデル租税条約」に沿った規定が採用されることが多いようです。日本では平成30年3月1日時点で、シンガポールを含む70の条約が123の国や地域と締約されていて、今後も数は増加していく見込みとなっています。
日本の企業や個人が海外で商業取引を行う際、同一の所得に対して居住地国と源泉地国の両方から課税されてしまう場合があります。こうした事態を回避するために、居住地国で納税する際、国外での所得に対して課された税金を控除する「外国税額控除制度」がありますが、完全に二重課税を解消することは難しいとされています。
租税条約を締結し、海外での所得を居住地国もしくは源泉地国のいずれかのみにおいて課税することを両国が認め合い、課税の仕組みがシンプルになることで、二重課税が回避しやすくなるといえるでしょう。
ただし、条約があっても双方に課税権が認められているケースや、そもそも条約が存在しない国もあるため、注意が必要です。
日本における租税条約の届出の方法
届出書は、源泉徴収する支払者ごとに正副2部必要となります(支払者は副本を控えとして保管)。所得の支払日の前日までに必要書類をもって手続きしなくてはなりません。
もし、所得の支払日の前日までに提出できない場合、届出書と一緒に「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を、源泉徴収した支払者が自らの所轄税務署長に提出することで、還付を請求することもできます。
この場合は、源泉徴収された税額から、軽減もしくは免除の適用を受けていた場合の源泉徴収税額を差し引いた額が還付されることになります。
また、最近では租税条約の締約国にペーパーカンパニーを設立し、そこを経由して商業取引することで、租税条約による減免特典を不当に享受しようとするケースが多発しています。それを受けて、租税条約の適用を受ける際、「特典制限条項」が設けられる例が増えてきています。
租税条約に関する届出書
なお、租税条約の手続きを行うための書類「租税条約に関する届出書」は、支払いの種類によってフォーマットが異なるため、正しいものを選ぶ必要があります。その主なものを以下に取り上げます。
様式1. 配当に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除
様式2. 利子に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除
様式3. 使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除等
様式4. 外国預託証券に係る配当に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収の猶予
これに加えて、支払いを受け取る相手が居住する国によっては、「特典条項に関する付表」が必要になるケースがあります。その場合、届出書と合わせて「特典条項に関する付表」および「居住者証明書」を提出しなくてはなりません。
シンガポールにおける租税条約の届出の方法
「居住者証明書」とは、租税条約を締結する相手国の居住者であることを証明するものであり、税務当局であるIRASのホームページからダウンロードし、必要事項を記入、日本の税務当局の押印などを得た上で、原本をIRASに提出します。
支払いがあった年の次の年の3月31日までが提出期限です。
まとめ
現在締約されている租税条約は、改正が行われることもあります。スムーズに租税条約の届出・手続を行うためにも、常に注意を払っておく必要があります。