目次
はじめに
このたび5月29日金曜日に山口県で開催されましたインドネシア経済セミナーの講師の講師を務めさせていいただきましたので、その時の様子などをお話したいと思います。
セミナー概要
主催 | 在大阪インドネシア共和国総領事館、地域間交流支援(RIT)事業実行委員会、{山口県、(地独)山口県産業技術センター、(一財)山口県国際総合センター、日本貿易振興機構(JETRO)山口貿易情報センター、(公財)やまぐち産業振興財団、宇部市、やまぐちエコ市場} |
テーマ及び講師 | 1.「現場で歩いたインドネシアの環境問題とニーズ」(インドネシア人脈のつくりから、付き合い方、活かし方) (有)スラマット 代表取締役 茂木 正朗氏 2.「インドネシアビジネスの留意点~シンガポールを活用するメリット~」 TOMAコンサルタンツグループ㈱ 公認会計士 神谷隆行氏 |
対象者 | インドネシア及び東南アジアビジネスに関心のある企業、行政団体など |
山口県の企業様でインドネシア進出に関心のある方を対象にセミナーが開催されました。
筆者の感想
びっくりしたのは、在大阪インドネシア共和国のトップであります総領事自らが出席をされていたことです。また、JETROの方も多く出席をしており、インドネシア政府と日本の行政がともに、日系企業のインドネシア進出を支援したいという思いが伝わってきました。
その中で筆者が講演をさせていただけたことが大変光栄だと感じました。
また、在大阪インドネシア共和国の領事館の出席者のうち半分は女性の方でした。シンガポールと同様、女性の社会進出が日本より進んでいるのかなと感じました。
有限会社スラマット 代表取締役 茂木 正朗氏の講演で印象にのこったこと
講師の茂木氏が語るインドネシア
セミナーは2部構成であり、最初にインドネシアで長年ビジネス経験がある有限会社スラマットの代表取締役茂木正朗氏の講演がありました。茂木氏の講演はインドネシアビジネスの経験談を実直に語られており、とても印象的でした。
筆者が印象に残った内容は下記のとおりです。
・人口が2億もある上に親日的である。こんな国はなかなかない。
・ビジネスで信頼を得ようとするなら少額でもいいので取引を開始することだ。
・英語も大切だが、インドネシア語はもっと大切。
・アジアの国をなめてかからない。環境基準等は日本より先をいっている。
・インドネシア進出を検討している方は是非視察にいってほしい。活気がある。
インドネシアは人口が2億人ですが、その半分の1億人が首都ジャカルタのあるジャワ島に暮らしています。人口が分散していないのがビジネス環境としては良いのです。ちなみに同じイスラム系の国のマレーシアは人口が分散している傾向があります。
少額でもいいので取引をすることを薦めているのは、ビジネスの相手が要求どおりの仕事をこなす能力があるかどうかもわかる上に、お金を払うことで相手からの信頼を早く得ることが出来るためとのことでした。日系企業は取引開始までの検討時間が長い傾向がある旨をお話さされていました。
現地の言葉を覚えることは、相手からいろいろ話しかけてもらえるようになることや、会話がスムーズにすすむことによってストレスがかかりにくくなることにつながると筆者は感じております。
日本の方は東南アジアの国は日本よりも後進国と考えている方が多いのですが、かならずしもそうとはいえません。茂木氏は環境対策の基準の説明を通して、日本よりも厳しい基準もあるから油断しないようにと説明されていました。
最後に、筆者も茂木氏と同感で、是非インドネシアを訪れていただくことをお勧めします。活気がとてもあり驚くと思います。訪れてみて初めてわかることも多いです。
次に筆者が講演した「シンガポール法人を活用したインドネシア進出のメリット」についてご紹介します。
シンガポール法人経由でインドネシア進出をおすすめする理由
現在シンガポール駐在中の筆者がなぜインドネシア進出に関するセミナーで講演させていただいたかといいますと、
・日本法人から直接インドネシア法人に出資するケース(ケース1)
・日本法人がシンガポール法人を設立して、その後インドネシア法人を設立するケース(ケース2)
とで違いが生じる場合があるためです。
インドネシアではいわゆる外資規制があり、業種によっては日本法人からの100%による出資が認められないケースがあります。外資規制をうける業種で事業をするには、インドネシアでビジネスパートナーを探し、インドネシア法人と合弁会社を設立することとなります。
経験されている経営者の方も多いと思いますが、共同事業を長年続けていますと、新規出店先の決定や人事の決定、配当の決定など軋轢が生じることが多くあります。また、各出資元の社長がやがて交代することもあり、先代の社長どうしは仲が良くても、社長交代によりうまくいかないケースもあります。
ビジネスパートナーとうまくいかなくなると、合弁会社の株を他人に譲渡することによって合弁会社から離脱することが考えられます。
ここで、仮に日本法人が直接インドネシアの合弁会社の株を保有していたとすると(上記ケース1)、株式譲渡時に株式含み益に対して日本の法人税が課税されます。
しかし、シンガポール法人がインドネシアの合弁会社の株を保有していた場合(ケース2)は、株式を譲渡したとしてもシンガポールで法人税が課税されない可能性が高いのです。
シンガポール法人を拠点にアジア各国に進出するケースも多い
インドネシアの隣の国であるシンガポールは、法人税率が17%と低く、また会社設立も容易であることから、シンガポール法人を各アジアの会社を束ねる法人として位置づけるケースがあります。法人税率が低いシンガポール法人に資金を集め、インドネシアをはじめとする東南アジアの地域に進出するのも手です。また、シンガポール法人を起点としてM&Aを実施するケースも考えられます。
インドネシアに進出して成功を収めると、他国への進出を検討するケースが多く見られます。インドネシアのみに進出すると決めていればシンガポールに法人を作るメリットはありませんが、他国への進出も想定されているのであれば、シンガポール経由での進出も検討する価値はあるかと思います。
インドネシアとシンガポール。それぞれの利点を生かそう
インドネシアは人口2億を抱えるとともに資源もあり、親日的であることから比較的ビジネスがしやすく、また、今後爆発的な成長が期待できる国です。
その一方でシンガポールは小国ではありますが、法整備がされその運用もしっかりされていること、設立が容易である上に弁護士や公認会計士などの専門家もそろっていること、優秀な人材が確保しやすく、有利な税制も多いことが利点としてあげられます。
筆者の私見ですが、両国の利点を生かして進出を検討されることをおすすめします。2カ国は地理的に隣同士であり、移動も楽にできます。タイプの異なる両国のメリットを利用してみてはいかがでしょうか。