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いいじゃないか!フィリピン

記事作成日2015/01/22 最終更新日2021/05/21

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はじめに

2014年の12月にフィリピンのマニラを視察してきました。今回フィリピンの概要についてお話したいと思います。

フィリピン概況(地域名から日系企業進出状況までJETROフィリピン基礎データより引用)

・国・地域名:フィリピン共和国 Republic of the Philippines
・面積:300,000平方キロメートル
・人口:9,820万人(2013年、出所:国家統計調整委員会(NSCB))
・首都:マニラ首都圏(NCR) 人口1,254万人(2013年、出所:NSCB)
・言語:フィリピノ語、英語、セブアノ語など
・宗教:カトリック教(82.9%)、イスラム教(5.1%)など
・公用語:フィリピノ語、英語
・実質GDP成長率(%):7.2(2013年)
・一人あたりのGDP(名目)ドル:2,790(2013年)
・消費者物価上昇率(%):3.0(2013年)
・失業率(%):7.1(2013年)
・日系企業進出状況:1,260社(2014年10月出所:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成26年要約版)」)

私見では、英語が堪能な人材がそろっているのですがフィリピン国内で仕事が多くない(うまく事業が拡大していない)ため失業率が高い傾向があります。シンガポールにもフィリピンの方が出稼ぎに来ています。

フィリピンの人口ピラミッド

他のアジア諸国と比較してもキレイな三角形の人口ピラミッドとなっています。若い労働力が得やすい環境にありますし、1億近くの人口ですので旺盛な需要が期待できます。

進出企業の業種

インターネットで検索すると、IT-BPO(ホームページや設計などの業務受託)が多いとあります。しかし、実際フィリピンで現地の方に伺ったところ、2012年前後にフィリピンに進出した日系の製造業(キャノン、ブラザーなど)が日本からの進出企業の中心となっているとのことでした。製造業でも最終ラインの組み立ての工場が多いとのことでした。

なお、日本のコンビニやユニクロ等の小売業も進出していますが、外資規制の影響からかフランチャイズでの進出(ユニクロはフィリピン有力企業との合弁)になっているようです。気になるのはアジア進出が目覚しいイオンが進出していない点です。

なお、アメリカのような英語圏の会社は、コールセンターなどをフィリピンに設置するケースが多いです。これは、フィリピン人は皆さん英語を話すため、スタッフレベルの教育もしやすく、人件費の安さや地代の安さもあいまって事業運営上プラスに働くからとのことでした。

また、事業とは直接関係ないのですが、フィリピンのコンドミニアムへの投資ができるそうで、ひそかに注目されているとの情報を入手しました。この件は調査が必要ですが、良い話かもしれません。

言語

全員が英語を話すとのことです。私がフィリピンを訪れた際、タクシードライバーから通りかがりの人まで全員英語で会話をしました。大統領の演説も英語だそうです。

なお、行政に提出する書類等も英語です。英語に対応できればまったく問題はありません。

人件費 以後、換算レートは1ペソ=2.7円で換算して記載します。

最低賃金制度があり、マニラ地区の最低賃金は1日466ペソ(1日1,258円)であり、ちょっとはずれのラグナ地区の最低賃金は1日360ペソ(1日972円)とのことでした。

JETROから入手した給与支給額の統計表によると、係長で月約30,000ペソ(81,000円)、部長で月約80,000ペソ(216,000円)とのことでした。

給与は月2回支払いで、賞与は平均年1.5ヶ月程度の支給にとどまっています。賞与については支給しない会社も多くあるとのことです。

フィリピンの特徴として、ある程度社会人経験を積んだ人は他の国に出稼ぎに出るケースが多いことです。これは、フィリピン国内の係長クラスの給料より、他国のメイドさんの仕事の給料のほうが高いことが多いため、金銭面を理由に出稼ぎに行くという事情だそうです。

家賃

日本人駐在員が多いロックウエル地区では、2ベットルームで月50,000ペソから70,000ペソ(135,000円から189,000円)の家賃でコンドミニアムが借りることが出来るそうです。なお、1ベットルームで月26,000ペソから30,000ペソ(70,200円から81,000円)だそうです。

注意点としては、鉄道が発達していないので、車とお抱え運転手を手配する必要がある点です。車1台とドライバー1人セットで月40,000ペソ(108,000円)程度で頼めるそうです。

他のアジア諸国では家賃相場の上昇が目立ちますが、フィリピンではそれほどでもなく、物件は借りやすいとのことです。

政治

現在では大統領の任期は6年で再選なしとのルールとなっているのが特徴的です。これは過去に独裁政権があったことから、以後独裁体制にできないようにするためのルールだそうです。

6年ごとに大統領が変わると経済政策にも影響が出るとの懸念をする方もいますが、現地の日本人によると、後任候補といわれているビナイ派も経済政策については現大統領と同じくリベラル路線をとっているため、大きな影響はないだろうとのことです。

税金・監査

一番の驚きは、1回の税務調査が3年から5年程度かかってしまうケースがあるということです。半分嫌がらせのようなところもあるそうで、会社が根負けしたところで、調査官が推定課税をして多額の税金を納めさせることが結構多いとの話を聞きました。

これを避けるためには、投資委員会(BOI) 登録企業に対する優遇措置等を受けておくことだといわれています。そうすると税務調査も厳しくないそうです。

また、監査が必要な会社の規模が小さいのも特徴です。資本金5万ペソ(135,000円)以上であれば監査義務があり、四半期の売上高が150,000ペソ(405,000円)を超える会社は確定申告書に監査済み財務諸表の添付が求められています。しかし、監査の相場が安く、売上高1億円、最終利益300万円の会社で約200,000ペソ(約540,000円)です。

宗教・文化

他のアジア諸国と異なり、キリスト教(カソリック)が約90%占めています。イスラム教徒のようにオフィスにお祈りスペースなど設けるなどの必要はなく、業務にも影響はないとのことです。また、人口が増え続けているのは、中絶等をよしとしないカソリックの文化が影響しているとの声もあります。

仕事より家族が大切と思う方が多く、特に母親の子供への愛情はすごいそうです。しかし、元日本人経営者によるとマネージャー層も含めてフィリピン人の女性は良く働くので助かったとおっしゃっていました。また、現在は労働争議もほぼないとのことです。

日本の漫画・豚骨ラーメン・とんかつが人気ですが、お酒は食事後に家で飲むことが多いそうです。それから、フィリピン人には明るくて親切な方が多いです。接していて気分が良くなりました。

治安

観光客をターゲットにした窃盗・強盗が多い状況です。しかし、駐在員はほとんど被害がないようです。フィリピン人の中には窃盗を生活の手段としている方がいるとのことですので十分注意をする必要があります。

地域によっても違いがあり、マニラ市のマラテ地区・エルミダ地区は要注意地域とのことでした。JETROによると、フィリピンで日本人が殺害される事件が起きていますが、対象は日本の元暴力団員などであり、一般の日本人まで殺されることはないのでこの点は安心していいとのことでした。

なお、公務員以外の駐在員は単身で駐在することが多いそうです。これは、治安もありますが、日本とフィリピンは意外と近い(飛行機で4、5時間)のですぐに日本に帰ることができるためです。

設立時の特徴

日本と違う点でポイントとなるのは、取締役が最低5人必要で、かつ、フィリピンの居住者が過半数を占めている必要がある点です。しかも、外国資本の参入を規制するいわゆるネガティブリストに規定されている規制業種に該当する場合には、外国人の取締役構成比率に占める割合は、ネガティブリストの出資上限の率を超えてはなりません。

たとえば、ネガティブリストで外資出資比率上限30%の業種であるならば、取締役5名を仮定すると、外国人取締役は1名に限られます。日本は取締役1名の株式会社も許容されますが、フィリピンは異なるようです。また、発起人(定款を作成して署名する人)も最低5名必要です。発起人がそのまま取締役になり、株も最低一株所有することになります。