はじめに
今回は、キャッシュ・フロー計算書の説明と見方をお話したいと思います。
キャッシュ・フロー計算書とは?
噛み砕いてご説明しますと、企業(もしくは企業グループ)の資金獲得能力を第三者に示す決算書をいいます。この資金獲得能力は、営業活動によるキャッシュ・フローの金額で表現されます。
日本の経営者からみると、資金繰り表を作成したり預金残高の増減をみれば、わざわざキャッシュ・フロー計算書なんて不要じゃないかと思われるかもしれません。しかし、貸借対照表や損益計算書と同様に、その事業年度の資金獲得能力を公開するためにキャッシュ・フロー計算書を作成するのです。諸外国ではキャッシュ・フロー計算書が有用だと思われているので強制されている国が多いのです。
キャッシュ・フロー計算書のどこをみればいいのか?
キャッシュ・フロー計算書は、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローの3区分に分かれて表示されています。このうち、是非確認していただきたいのは、営業活動によるキャッシュ・フローの金額です。日本で働いていたときから、経営者の方や投資家の方に説明していましたが、営業活動によるキャッシュ・フローこそ、その企業の資金獲得能力を示しているのです。
損益計算書とセットで見ることをお勧めします
筆者がお勧めする見方は、損益計算書の経常利益と営業活動によるキャッシュ・フローとのバランスを確認することです。実例として江守ホールディングスという上場会社(のちに民事再生法申請)の決算数値を見てみましょう。
平成21年3月期 | 平成22年3月期 | 平成23年3月期 | 平成24年3月期 | |
経常利益(千円) | 1,523,212 | 1,832,255 | 2,339,294 | 2,532,345 |
営業活動によるキャッシュ・フロー(千円) | 1,592,135 | △717,625 | △6,678,987 | △6,915,518 |
一般的に損益計算書は企業の収益力を示すといわれていますので、資金獲得能力を示す営業活動によるキャッシュ・フローとある程度相関関係があるのが通常です。しかし、上記の会社の例では、どんどん乖離しているのがわかると思います。
この会社は中国子会社の架空売上の不正をおこなっていたため、やがて民事再生法を申請することとなりました。
株式市場ではもてはやされていた会社だったそうですが、キャッシュ・フロー計算書を理解していれば、なんだか怪しいと思うことがあったでしょう。
次回
次回も引き続き、キャッシュ・フロー計算書についてお話をします。