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介護事業所でBCP策定が義務化!~2024年の義務化に向けて準備できていますか?~

記事作成日2023/02/16 最終更新日2023/09/22

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2021年4月の「令和3年度介護報酬改定」により、2024年4月までに、施設系・在宅系を問わず介護事業所では、BCP(事業継続計画)の策定が義務化されることになりました。

しかしながら、「BCP(事業継続計画)という言葉を知らない」「どのように取り組めばいいのかわからない」などといった理由から策定をされていない介護事業者の方は、多いのではないでしょうか。この記事ではBCPとは?から始まり、BCPの具体的な策定手順について解説します。

なお、BCPについて取り組み状況をチェックするためのリスト(無料)をご用意しております。こちらもあわせてご活用ください。ダウンロードはこちら

BCPとは

BCPとは、Business Continuity Plan(事業継続計画)の頭文字を取った言葉で、介護事業者が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合、経営資源の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続、早期復旧を可能とする計画です。平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを事前に取り決めておきます。

※経営資源・・・企業経営をするうえで役立つ要素や能力を経営資源と呼ぶ。主に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を示すことが多い。

BCPを策定しない場合の罰則はあるか

介護事業者は、BCPを2024年4月までに策定することが義務化とされました。その背景には、「利用者及び職員の生命を守り、継続的かつ安定的に介護サービスを提供するため」という大きな目的があります。緊急時に混乱を招かないためにも、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが重要となります。

また、BCPを策定しなかった場合の罰則などは具体的に発表されていません。しかし、過去には安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求める判例が多くあります。実際に起こった判例でどのような処置を命じられたか「大川小の津波訴訟」を以下にご紹介します。

【過去判例】大川小の津波訴訟

東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県の小学校の児童23人の遺族が、学校側に対して損害賠償を求める訴訟を提起した結果、第1審も控訴審も行政の損害賠償責任を認められ、市と県に約14億3600万円の支払いを命じた。

なお、その他にも以下のような判例があります。

①日和幼稚園バス津波訴訟
②七十七銀行女川支店津波訴訟
③山元町東保育所津波訴訟
④常磐山元自動車学校津波訴訟
⑤新岩手農業協同組合津波訴訟

など

以上のように、BCPを策定していないため訴訟になるケースがあります。利用者及び職員に安全で安心な事業を展開していくためにもBCPの策定について早急に対応していきましょう。

BCP策定から得られるメリット

(1)介護サービスの早期復旧

BCPを策定することで、施設の業務フローや想定されるリスクなどが明らかになります。事業の復旧・継続に必要な「ヒト」「モノ」「お金」「情報」のリソースの確認を行うことで、早期の復旧が可能になり、利用者に対して安定したサービス提供をすることができます。

緊急事態は突然発生します。効果的な手を打つことができなければ、特に小規模な介護事業所は経営基盤が情弱なため、廃業に追い込まれる恐れもあります。また、事業を縮小し、職員を解雇しなければならない状況も考えられますので、BCP策定を敬遠している方が多いと思いますが、これを機にBCP策定を検討してみましょう。

(2)利用者からの信用度の高まり

BCPの策定により、自施設の職員や利用者の安全を確保し、安定したサービスを提供することで、利用者や地域市民から大きい信頼を獲得することができます。また、介護事業所のBCPの目的は、事業所の早期復旧に限らず、介護事業所がもつ機能(サービス)を生かして被災時に地域貢献を検討することも重要となります。

そのため、被災時に他施設への職員の派遣や、避難所としての運営を行っていくことで社会的な責任を果たすことで「リスク管理に積極的な介護事業所」というブランディング効果も見込めるでしょう。

(3)税制の優遇・金融支援

BCPを策定した後に、介護事業所(中小企業含む)が防災や減災に関する事前対策の計画を中小企業庁に認定されることで、税制優遇や金融支援のほか、補助金など多くの優遇を受けることができます。

BCPの策定方法

BCPを策定していく上で、検討するべき事項は多岐にわたりますが、厚生労働省から提示されているガイドラインを参照しながら、ひな形を埋めていくことで検討するべき事項や課題点を洗い出すことが可能になりますので、まずはフォーマットをもとに穴埋めを行いましょう。

なお、各ガイドラインや書式、詳細情報につきまして、以下を参照してください。

※出典:厚生労働省「自然災害発生時の業務継続ガイドライン」から引用

~自然災害時~

自然災害時のBCPでは、次の4つの分類に分けて記載をしていきます。分類ごとに記載方法についてご説明いたします。

総論

総論では主に、ハザードマップから拠点先周辺の災害リスク(津波や液状化など)を把握することと、重要業務の選定が必要になってきます。優先業務の設定をもとに今後の対応策を検討していきますので、慎重に考えていきましょう。

平常時の対応

平常時では、建物、設備の安全対策や電気、ガス、水道などのライフラインが使用できないときの代替方法を検討します。ライフラインが止まっている中でも、介護事業として安定したサービスを提供しなければなりません。そのためにあらかじめライフラインの代替策を検討する必要があります。

また緊急事態を想定して財務シミュレーションを行うことで、災害時に必要な資金や保険を明確にすることができ、現状の余剰資金から建物・設備の安全対策に向けての改修を検討することができます。また、ライフラインが止まった場合に備えて飲料水や保存の効く食料、治療キットなどの備蓄品を用意しておきましょう。

緊急時の対応

災害発生時の職員の安否確認や避難方法などの明確化を目的に、職員が理解しやすいように初動対応の流れを図面に落とし込みます。また、重要業務の「業務継続・復旧」のための具体的な施策を「ヒト、モノ、カネ、情報」の4つの視点から考えていきます。

他施設、地域との連携

他施設、地域と連携することで、より強固なBCPの策定ができます。連携先、福祉避難所と事前に検討しておくことで、緊急時に職員の派遣確保や、臨時的に入居者を移動などスムーズ行うことができます。普段のネットワークを大切にし、お互い助け合える関係づくりをしておきましょう。

~新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時~

※出典:厚生労働省「新型コロナウイル委感染症発生時の業務継続ガイドライン」から引用

感染症BCPを策定する際には、入所系、通所系、訪問系で検討するべき事項は多少変わりますが、自然災害時と同様、4つの項目に分けて記載を進めていきます。

平時対応

自然災害時と同様、想定される感染症は何か常に最新の情報を収集することや、感染対策をどのタイミングで講じるか、何を講じるかについて検討します。

感染疑い者の発生

感染の疑いについてより早期に把握できるよう、管理者が中心となり、毎日の検温の実施、食事等の際における体調の確認を行うこと等により、日頃から入所者の健康の状態や変化の有無等に留意することが重要になります。

初動対応

実際に職員・入所者がウイルスに感染した場合に、どのように感染者に対応するべきか、報告ルート、報告先、報告方法、連絡先等に分けて事前に整理しておくことが重要になります。

感染拡大防止体制の確立

感染者が現れた場合、介護事業者としてどのように感染防止対策を講じるかについて検討していきます。入居系であれば、密にならないように、入居者を隔離するため個室で対応することや、使用した備品の消毒の徹底などを講じる必要があります。多くの場合は、厚労省、都道府県庁、保健所から指示がありますので、ガイドラインに従うことが大切になります。

TOMAで実現できる効果的なBCP策定・運用

まずは、厚生労働省からのフォーマットに従い策定することも大切ですが、それだけではより効果的なBCPにはなりません。フォーマットに沿って作成していく上で、詳細な追加資料や、今後の課題点(データのクラウド化・資金調達・業務マニュアルなど)の対応策が必要になってきます。

TOMAコンサルタンツグループでは、会計業務を中心に人事・労務、法務、事業承継、業務改善、国際化など幅広いサービスを用意しておりますので、BCPを作成するに当たって発生する、あらゆるお悩みごと・お困りごとをワンストップで解決します。これからのBCP(事業継続計画)の作成にご不安をお持ちの方は、TOMAコンサルタンツグループまでご連絡ください。