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経営者のための組織・人材マネジメント実践レポート

記事作成日2025/12/26

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デジタル化や深刻化する人手不足、あるいはグローバル競争の激化など、中小企業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増しています。限られたリソースで持続的な成長を遂げるには、財務戦略・組織改革・経営理念浸透を一体化した経営の実践が不可欠です。

そのため、このブログでは中小企業の経営者の皆様に向けて、将来に向けてどういった施策を取っていく必要があるか、TOMAのコンサルタントが解説します。

自立型人材は数字で話す

曖昧な表現や主観的感覚による情報共有は、会社の現状把握や意思決定に悪影響を及ぼします。数値で話さないことは「経営の羅針盤を失う」ことに等しいのです。

社内共通言語の数値化

会社と社員の間には「目標」や「現状把握」で認識のズレが生じやすいです。「頑張っているのに給料が上がらない」などの社員の悩みは、会社の現状を社員が正しく把握できていない可能性があります。数字とは、客観的な物差しです。

そして、会社を客観的に表す物差しは財務諸表です。財務諸表を正しく分析することは、社員の認識を一致させ、会社・社員の目標をともに達成することにつながります。

取り組むべき手段

会社の数値、いわゆる財務に強くなるためには、以下の3ステップで考えると効果的です。

① 財務リテラシーの習得

財務とは何か
基本的な財務の考え方や、その重要性を理解します。自分の仕事がどのように利益につながるか数値で理解し、モチベーション向上にもつながります。新入社員~入社3年目の社員に必要なスキルです。

主なスキル
・財務諸表の基本的な見方
・利益の仕組みのイメージの習得
・数字に基づいた判断力

② 財務知識のインプット

事業展開の課題発掘
財務数値が経営にどう活かされるか、財務の構造を体系的に理解します。数値化した目標と評価の活用で、適切な目標達成を促します。管理職として働く社員に必要なスキルです。

主なスキル
・財務諸表の活用方法
・財務指標の活用方法
・客観的事実に基づいた目標設定

③ 財務データ分析

知識から実務へ
習得した知識を書類作成・分析・管理・問題解決など実際の業務へ昇華させていきます。会社の現状を数値で把握・分析し、長期的視点で利益の追求を行うことができます。経営者・経営幹部に必要なスキルです。

主なスキル
・予算編成、実績との差異分析
・資金繰りの管理
・コスト削減策の立案作成

数値を精査した後は組織についても見つめ直しましょう。

持続可能な組織改革の実現

変化の激しい現代社会において企業が競争力を維持するために不可欠な要素の1つが組織改革です。

しかし多くの企業が期待する成果が得られないと感じているケースが頻発しています。企業が懸命に組織改革に取り組んでいるにも関わらず、成果が見られないのはなぜなのでしょうか?

組織改革が失敗する理由とその解決策

組織改革が失敗する最大の理由は、戦略や構造といった「見える要素」だけを変更し、企業文化や従業員のスキル、リーダーシップスタイルといった「見えない要素」を軽視することにあります。

この問題を解決するために、マッキンゼー・アンド・カンパニーが開発した7Sフレームワークを活用し、組織を構成する7つの要素を統合的に改革することで、持続可能な組織改革を実現できます。

このフレームワークは、以下の3つのハード面と4つのソフト面で構成されています。

ハード面

1.戦略(Strategy):競争優位性を確立するための基本方針
2.組織構造(Structure):組織の階層や部門構成
3.システム(System):業務プロセスや情報システム

ソフト面

1.スタイル(Style):組織の風土・文化
2.人材(Staff):従業員の能力や特性
3.スキル(Skill):組織が持つ能力や技術
4.共通の価値観(Shared Value):組織の中核となる価値観や文化

取り組むべき手段

ハード面とソフト面の統合的アプローチ

組織改革といえば、戦略や構造といったハード面の変更に重点が置かれがちです。しかし、真の組織改革の実現にはソフト面も同時に改革していく必要があります。「共通の価値観」を中心に全ての要素が相互に連携し合う統合的なアプローチが重要です。これにより一時的な変化ではなく、持続可能な組織改革を実現できます。

現状分析から課題の優先順位付けまでの体系的プロセス

まず7つの要素それぞれについて現状分析及び評価を行います。次に、7要素間の整合性を分析し、要素間のギャップを特定します。例えば、戦略は明確だが共通の価値観が浸透していない、優秀な人材はいるがシステムが非効率といった不整合を発見します。最後にビジネスインパクトと実現可能性の観点から課題の優先順位を決定し、段階的な改善計画を策定します。

持続的モニタリングと調整メカニズムの構築

組織改革は一度実施すれば完了するものではありません。7つの要素が常にバランスを保つよう、定期的なモニタリングと調整を行う仕組みを構築し、変化する外部環境に対応できる柔軟な体制を整備します。

続いて経営理念についても確認します。

経営理念は、社員一人ひとりの心に届いているか

・経営理念はあるが、現場で社員が理念を意識した行動をしていると感じない
・会社が何のために存在し、どこに向かっているのか、よく分からないと言う社員がいる

上記のように経営理念と現状の乖離がある場合には、経営理念を見直す時です。続いては社員に届き、社員を動かす経営理念の見直しから浸透方法までをご紹介します。

なぜ経営理念の浸透が必要なのか?

経営理念は会社の憲法

経営理念は会社の存在意義であり、経営判断の拠りどころとなる「会社の憲法」です。経営理念が浸透していない組織では社員がバラバラの方向を向き、組織力が低下します。社員のベクトルを揃えるための経営理念が不可欠です。

経営理念の浸透がもたらす効果

経営理念が真に浸透した組織では、社員が判断に迷ったときでも理念に立ち返り自発的に行動できます。細かい指示がなくても「今、何をすべきか」を自ら考え実行する文化が生まれ、組織の一体感や顧客への価値提供が向上し、業績アップにもつながります。

経営理念を見直すべきタイミング

・会社の業績が低迷している
・5年後のビジョンが見えない
・体制を根本から一新したい等

見直すときのポイント

最重要「社員の共感を呼ぶこと」

・社員の成長が感じられること
・世の中への貢献が感じられること
・会社独自の価値観が反映されていること

取り組むべき手段

社員参加型のMVV策定

MVV(Mission・Vision・Value)とは

働く目的と役割の自覚化

MVV作成の効果

企業で働く目的が明確になると共に、自分の役割への意義を高めることができます。働く目的と個々の役割への自覚を促すことで経営参画の意識が高まり、社員の自立を後押しすることができます。

多層的かつ継続的な発信体制の構築

経営理念の浸透には繰り返し伝えることが不可欠です。社長からの発信だけではなく、部長クラスやプロジェクトチームリーダーなど複数の立場から策定した経営理念に関する情報・具体的行動事例等を発信します。

また経営理念研修、評価制度への組み込みなど、あらゆる接点で経営理念に触れる機会を設け、経営理念を体現する社員が「次につなぐ・伝える文化」を醸成します。