セーラー万年筆株式会社は2015年12月、旧大蔵省(現財務省)出身の中島義雄社長が解任され、比佐泰取締役が社長に就任しました。 専用ツールで同社の経営を分析してみました。
◆2006年から2014年12月期までの9年間の分析
企業力総合評価は右下がりに下落後、2014年から改善の傾向が見え始めました。これは流動性、安全性が牽引したためです。
資産効率(資産の利用度指標)は改善傾向ですが総資産額が9年間で53.29%減に対し、売上高が37.65%減と資産の減少割合が高い事が要因です。この資産効率の改善をどう評価するかがポイントで、総資産の減少額6,557百万円の内、3,619百万円は赤字となり社外流出し、売上減少に伴う運転資金の減少等(売掛債権1,719百万円減少)が総資産額の減少の要因であるため、喜べない内容です。
流動性は悪化傾向でしたが、2014年改善に転じていきました。新株予約権を無償で株主に割当て、新株予約権を行使してもらうことで資金調達をする「ライツ・オファリング」を行ったためです。
2014年企業力総合評価の改善は、この財務オペレーションの効果によるところが大きく、今後、資金をどう生かしていくか比佐新社長の手腕にかかってきます。営業効率は9年間で営業損失7回、経常損失8回計上しています。
◆定量分析を実施し自社を客観視する
再度、図の企業力総合評価を見てください。2009年12月、中島義雄氏が社長に就任した時点で再生手法等の技能を持った経営者を招聘すべきでした。自社の経営状況と対処法について、定量的考察に基づき、意思決定が出来なかったといえます。自己客観視は誰にとっても難しいものですが、定量分析を基礎に議論をすることで見えてくることも多いのです。
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