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相続時の遺産分割 預貯金も対象へ 最高裁で判例の変更

記事作成日2017/01/06 最終更新日2017/01/06

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預貯金を遺産分割の対象へ 最高裁で初判決

20161219日、最高裁は初めて「預貯金は遺産分割の対象となる」との判決を下しました。過去の判例では、「預貯金は法定相続分に応じて当然に分割される」と考えられていましたが、これが見直される形となりました。

「遺産分割の対象となる」
「法定相続分に応じて当然に分割される」

よく似た言葉に聞こえますが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
また、その違いが皆様の相続にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

遺産分割対象に含まれない相続財産とは?

被相続人が有していた一切の権利・義務は、相続の発生ともに相続財産として相続人に承継されます。しかし、すべての相続財産が遺産分割の対象となるわけではなく、内容や性質によって、遺産分割の対象とならないものもあります。

遺産分割の対象とならないものの一例に、「可分債権」があります。可分債権とは、「分けることができる、分割給付を目的とする債権」を意味し、最も代表的なものとして、「金銭債権」が挙げられます。

相続財産としての預貯金は、「(被相続人名義の)預貯金の払戻請求権」という金銭債権ですから、可分債権に含まれます。この可分債権は、相続開始と同時に法定相続人に法定相続分通りに当然に分割されるのが原則とされていました。

すなわち、法律上は、各相続人は他の相続人の同意が無くとも、「自分の法定相続分に応じた預金を払い戻してほしい!」と金融機関に請求することが可能ということでした。今回の最高裁の判決は、預貯金に関してこれまでの判例を覆したのです。

今回の判例の変更が与える影響

預貯金が遺産分割の対象になることで、預貯金を引出すためには相続人全員の合意が必要、ということが法的に確立し、早期に払い戻しすることが今後さらに難しくなるといえます。相続開始後、分割協議で揉める、争う、時間がかかることが想定されます。
争族を防ぐためには、生前に、被相続人が、

  1. 遺言書を作成しておく
  2. 遺言代用信託契約(家族信託)を交わす
  3. 生命保険契約にて、保険金の受取人を指定しておく

など対策をとっておく必要があると言えます。

また、今回の判例の変更は、現在法制審議会において検討されている民法(相続関係)改正にも影響を与える可能性があり、これからますます注目が集まると思われます。

<<参考>>
最高裁判決平成28年12月19日 平成27(許)11
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354
最高裁判決平成16年4月20日 判例集民法第214号13頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62575