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【採用時の注意点Q&A】現役社労士が解説!採用時のミス・トラブルを事前に防ぎましょう

記事作成日2022/05/11 最終更新日2022/05/11

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よい人材を獲得する絶好の機会である採用は、企業を発展させるために欠かせない業務です。一方で、年に数回しかなく多くの採用希望者と関わる業務であることから、ミスやトラブルの起こりやすい業務でもあります。

厚生労働省によると、令和2年度個別労働紛争解決制度で、募集や内定取消など採用に関する相談件数は4,580件でした。一方、紛争や訴訟にまでは発展していないトラブルは、それより多く発生していると考えられます。採用時に誤った対応をすることでトラブルに発展すると、企業のイメージや信頼が損なわれるなど多くのリスクがあります。無用のトラブルに巻き込まれないようにするための予防策を取っておくことが欠かせません

そこで今回は、採用時によくあるミス・トラブルを事前に防ぐ採用時の注意点をQ&A形式で解説します。トラブルは起こってしまうと解決に時間や労力がかかったり、業務や企業の経営に悪影響を及ぼしたりと大事になってしまいます。そうならないためにも、予防のポイントを確認しておきましょう。

Q1.採用面接のとき、「尊敬する人は誰か」と、質問をしてもよい?

A.採用面接時に「尊敬する人は誰か」と質問するのは不適切です。
業務に関係のない個人に関する質問や収集目的がはっきりしない質問などは、就職差別につながるという理由で、厚生労働省が避けるように指導しています。採用面接時は、応募者の本質を見抜き会社のニーズに合った人材に入社してもらうためにも、さまざまな質問を投げかけたくなります。しかし、何を質問してもよいわけではなく、禁止事項も定められていることに注意が必要です。

以下では、上記の質問について検討しながら、トラブル予防に効果的な面接方法を解説します。
避けるべき質問のジャンルは、具体的には次のとおりです。

このように、本人の適性や能力に関係のない質問は法律違反や差別になるリスクが高いので、するべきではないことを覚えておきましょう。また、目的の明確でない質問をしているとニーズに合う人材かどうかの判断がしづらくなってしまうため、本当に必要な人材を逃してしまう危険性があります。

コンピテンシー面接の導入を検討しよう

「よい人材を採用するには、どのような面接をすればよいのだろう」。そうお悩みでしたら、コンピテンシー面接の導入を検討してみてもよいでしょう。コンピテンシーとは、高い成果を上げられる人が共通して持っている行動の特性です。コンピテンシー面接では、自社のニーズに合ったコンピテンシーを持つ人物を探し出し採用することを目的とした質問をします。過去の具体的な行動に着目し、「どのような考えで、どういうふうに行動したのか」を掘り下げる質問を行うことがコンピテンシー面接の特徴です。

例えば、
・チームの中に協調性がない人がいた場合、どのように行動しましたか
・目標を設定し達成した際のことを、詳しく教えてください
などの質問が挙げられます。
コンピテンシー面接のメリット・デメリットは次のとおりです。

必要なコンピテンシーのモデルが自社内にいない場合は、特に、コンピテンシーを見抜くための評価軸を決めることが難しくなります。そのような場合はプロに相談し、基準を作成することを検討したほうがよいでしょう。

Q2.採用時に身元保証書を一度提出してもらえば、退職するまで有効?

A.身元保証書には有効期限があります。
被雇用者の身元を第三者に保証してもらう身元保証書の提出を、採用時に求めている企業は多いでしょう。しかし、提出させる意味合いや身元保証書の性質をきちんと把握していない方も多いのではないでしょうか。トラブルを避けるためには、特徴を把握して有効活用する必要があります。上記の質問について検討しながら、身元保証書とはどのようなものなのかを確認します。

身元保証契約の有効期間は、「身元保証に関する法律」で5年が上限と定められています。特に期間の定めがない場合の有効期間は3年です。そのため、採用時に身元保証書を提出してもらったとしても、退職時に有効期間の3~5年を経過していれば無効となります。
有効期限が切れた後は、従業員と交渉し更新契約を結ぶことも可能ではあります。しかし、身元保証書が入社した当初の身元の保証を目的とするものであることから、更新しないケースが多い状況です。

 身元保証書とは

有効期限以外にも、身元保証書を有効活用する上で押さえておくべきポイントをご紹介します。まず、身元保証とはどのようなものか、再確認しておきましょう。

上記のような身元保証契約を証明する身元保証書を提出してもらう主な目的は、次の3つです。
1. 従業員によって損害を被った場合に確実に賠償してもらう

2. 従業員が企業に損害を与えるような行為をすることを抑止する
3. 緊急連絡先を把握する
このように、身元保証書にはさまざまなリスクを軽減する目的があります。このような趣旨を踏まえると、精神疾患が増加している現代では、社員が精神的・身体的に問題がないことを保証する人物保証機能を併せ持った身元保証契約を締結することがおすすめです。

なお2020年の民法改正に伴い、身元保証契約書に物的保証を設けている場合は、保証の限度額の記載がなければ無効となるルールに変わりました。これまでは不要だった「賠償額の上限」ですが、改正後は上限の記載のない身元保証書は無効になってしまいますので注意が必要です。

Q3.試用期間中に産前産後休暇を請求された場合、認めなければならない?

A.試用期間でも産休は取得できます。
試用期間とは、契約社員以外の雇用形態(正社員・アルバイトなど)について、適性や能力を把握し本採用するかどうか決めるための、言わばお試し期間です。そうなると気になるのが、 試用期間中に産前産後休暇を請求された場合、認めなければならないのか?ということではないでしょうか。

そこで、ここでは、試用期間中の産休やその他の休暇についてポイントを確認しておきましょう。
試用期間中であっても、産休の請求があれば認めなければなりません。労働基準法で規定されている産前産後休暇は、女性の母体保護のための強行法規だからです。試用期間であろうと、請求があった以上は取得させる法的義務があります。あわせて、産前産後休暇のポイントを押さえておきましょう。

労働基準法違反にならないためにも、産前産後休暇は必ず取得させましょう。

試用期間の休暇について

産前産後休暇以外の休暇については、試用期間の取り扱いはどのようになるのでしょうか。代表的な休暇について確認しましょう。

このように、法律上休暇取得について定めがあるものは、試用期間中であっても取得させる必要があるため注意が必要です。定めのない休暇については、就業規則できちんと明記しておくことによって、試用期間中の従業員から請求された場合もスムーズに対応できます。トラブルを避けるためにも、就業規則を整備しておくことが大切です。

Q4.試用期間中であればいつでも解雇できる?

A.試用期間でも合理的理由がないと解雇できません。
試用期間とは、適性や能力を確認するための解約権が留保された労働契約です。雇用者側には解約権があるのだから、試用期間中であればいつでも解雇できると考えがちです。
確かに試用期間なので、試用した結果、雇用を継続しないという判断自体は可能なのですが、解雇あるいは本採用を拒否する際には注意点しなけれなりません。どういうことなのか、以下で詳しく見てみましょう。

冒頭でもお伝えしたとおり、試用期間とは、採用した当時は企業が把握できなかった従業員の適正などを実際の勤務状態により確認し、引き続き雇用することが適当かどうかを判断する期間のことです。この試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められています。しかし、試用期間中であっても、合理的理由のない解雇は、解雇権濫用として解雇無効とされるため注意が必要です。なお、通常は解雇をするためには、少なくとも30日前までに解雇の予告をする必要がありますが、試用期間中であれば、解雇予告をしなくてもよいことになっています。ただし、引き続き雇用された期間が14日を経過した場合は、解雇予告が必要となるので、注意が必要です。

合理的理由の例

試用期間であっても、解雇するには客観的に「合理的理由」が存在することが必要です。
では、社会通念上解雇が相当と認められるような合理的理由とは、どのようなものなのでしょうか。

合理的理由が存在し試用期間中の解雇に踏み切る場合でも、トラブルを避けるためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。

試用期間中に解雇する場合のトラブル回避ポイント

・解雇の理由について証明する証拠を揃えておく
・就業規則にあらかじめ試用期間中のルールや解雇の条件などを明示しておく
解雇の合理的理由があることを証明する責任は、雇用者側にあります。後々、解雇について争いに発展しないようにするためにも、物的証拠をきちんと確保しておきましょう。

採用時のトラブル予防のポイント

採用時のトラブルを効果的に予防するためには、面接時や試用期間中などシーンごとの注意点を把握することに加えて、次のような対策を取ることが有効です。
・就業規則を整備する
・アウトソーシングを検討する
採用時のトラブルを未然に防ぐために、どのように役に立つのかを以下で解説します。スムーズに採用業務を行うためにも参考にしてください。

就業規則を整備する

必ず行っておくべきなのが、採用に関係する就業規則を整備することです。例えば、以下のような規定を整備しておくと、トラブル予防に効果的と言えるでしょう。就業規則を整備することで、次のようなメリットがあります。

採用に関係する就業規則の規定例

・身元保証書の有効期間や内容で、特に指定しておきたいこと
・試用期間の具体的な期間及び守るべきルール
・試用期間中に取得することのできる休暇の種類や期間
・試用期間中の解雇に関すること

就業規則は、可能な限り詳細にわかりやすく整備しておきましょう。

 アウトソーシングを検討する

業務が忙しくて採用に手が回らない場合や、手軽に優秀な人材を採用したい場合などは、採用アウトソーシングを検討するのもおすすめです。採用アウトソーシングでは、採用計画の作成・募集活動や書類選考・面接・合否の通知・内定者への面談や入社前の研修まで幅広い業務を依頼することができます。採用の一部またはすべてを必要な範囲で外注できるのが魅力です。アウトソーシングの主なメリット・デメリットを見てみましょう。

アウトソーシングを効果的に活用するには、業務は任せつつもすべてを任せっきりにせず、必要に応じてアウトソーシング業者や応募者とコミュニケーションを取るようにしましょう。

まとめ

採用面接や試用期間中にトラブルが発生すると、解決に時間や労力を要したり業務や企業の経営に悪影響を及ぼしたりと、多くの負担が発生します。法律の内容を正しく把握するとともに、就業規則を適切に整備するなどして、対策を徹底しておきましょう。TOMAコンサルタンツグループでは、就業規則の整備から採用のアウトソーシングまで、採用活動をトータルにサポートしています。

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