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労働時間・休憩・休日のポイント②残業命令と36協定の関係から振替と割増賃金まで解説

記事作成日2022/10/04 最終更新日2022/10/05

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年末年始や異動時期は、残業や勤務時間が変則的になる機会が増えますよね。慌ただしい中で、ついつい何となく残業命令や休みの振替をしてしまいがちですが、ルールを踏まえて行わないと罰則の対象になってしまうリスクがあるのをご存じですか?

残業命令や1日当たりの休憩時間、振替休日を取った場合に割増賃金が発生する基準は、労働基準法などに定めがあります。違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるなど重い罰則も定められているので、正しい処理をすることが欠かせません。

そこで今回は、残業命令・休憩時間・振替休日に関して、よくある質問に対する回答を中心に、罰則の対象にならないために知っておくべき基礎知識を解説します。

同僚や後輩から下記のような質問をされたら、正しく答えられますか?
「自信がないかもしれない」と少しでも感じたなら、大変なことになる前に、基本を再確認しておきましょう。

【Q1】時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結せずに残業命令すると罰則を受ける?

ここでは、残業命令と関係の深い「時間外・休日労働に関する労使協定」、通称36(サブロク)協定や残業について、基礎知識を確認しておきましょう。

「36協定とは、そもそもどういう内容なのか」「残業の法的な性質とは何なのか」「残業命令するには就業規則の定めは要るのか」といった点を把握しておくことで、残業命令をする側もされる側も、トラブルを避けることができます。

【A1】36協定を締結せずに残業命令すると、罰則の対象になる可能性があります

36協定を締結していなくても、就業規則において時間外労働について規定していれば、残業命令を出すことができます。しかし、36協定の締結がなく、法定の労働時間以上に働かせた場合は、労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を受けることがあります。

つまり、原則としては、残業命令に36協定の締結は必須ではありません。しかし、残業を命じた結果、法定労働時間を超える可能性が少しでもあるなら、必ず締結しておかないと罰則の対象になってしまうので注意しましょう。

36協定とは

36協定とは、時間外・休日労働に関する協定届の別名で、労働基準法第36条に基づく労使間の協定のことです。

◆労働基準法第36条とは?
・以下の場合に、労働組合と事業者間で書面による協定を結ぶよう定めた規定
①法定労働時間(原則として1日あたり8時間、1週間あたり40時間)を超えて労働させる場合
②休日労働をさせる場合
・36協定を労働基準監督署に届出しないまま上記の労働をさせると、労働基準法違反となり、罰則が科される

なお、36協定を結んでおけば、法定労働時間をどれだけ超えても許容されるわけではありません。次のとおり限度があることも、あわせて覚えておきましょう。

◆36協定を結んだ場合の労働時間延長の上限とは?
・1ヶ月あたりの延長時間の上限は、1年単位の変形労働時間制の対象者以外で45時間、1年単位の変形労働時間制の対象者は42時間
・1年間での延長時間の上限は、1年単位の変形労働時間制の対象者以外で360時間、制の対象者は320時間
・特別条項を定める場合は、休日労働を含めて月100時間までなど、延長時間の上限を伸ばすことが可能

残業とは

残業とは、その会社が就業規則などで定めた所定労働時間を超える労働のことです。残業時間をあわせても法定労働時間内におさまると、法定労働時間を超えてしまうの2種類があります。

法定労働時間とは、労働基準法で決められた労働時間の上限で、原則として1日に8時間、1週間に40時間です。それぞれの会社で独自に定める所定労働時間は、この法定労働時間の範囲内で決める必要があります。
先ほどの36協定に関しては、法定内残業では不要ですが、法定外残業では必要です。なお、法定内残業の賃金の割増率は各会社で決めることができますが、法定外残業では割増賃金の支払いが労働基準法で義務付けられ、最低割増率も決まっています。

残業と就業規則

法定内残業を命じる場合、36協定の締結は不要ですが、就業規則や労働協約の定めは必要になります。
原則として、労働義務は就業規則などで定めた所定労働時間についてのみ発生するので、別途「業務上の必要性がある場合は、残業指示に従う義務がある」ことを定めておかないと、残業の労働義務が発生しなくなるからです。

また就業規則に定めがあっても、業務上の必要性が実質的に認められないケースや、健康に悪影響を及ぼすケースなどでは、権利濫用として、残業命令が無効になる場合があります。トラブルを避けるためにも、残業命令をする際は、残業命令を拒否できる場合があることを覚えておきましょう。

トラブルの事例

残業は、トラブルが起こりやすい分野です。対応を誤ると、残業代未払い請求などのトラブルに発展し金銭的なダメージにもつながりやすいので、正しい運用が欠かせません。
残業に関するよくあるトラブルの事例としては、次のようなものがあります。

・固定残業制代を織り込んだ裁量労働制を採用していたので安心していたら、突然、残業代の未払いがあると主張された
・社内の従業員は全員参加の研修を行ったら、残業代を請求された
・フレックスタイム制を採用しているが、従業員から残業が発生していると言われた

現在の運用状況や就業規則の内容が適切かどうかは、社内の人事労務担当者のチェックだけではわかりにくい場合が多いのが実情です。一度、社労士などの専門家に確認を依頼しておくことで、確実にトラブルのリスクを減らすことができるでしょう。

【Q2】休憩時間は、1日1時間与えなければならない?

みなさんの職場では、休憩時間をきちんと取得できているでしょうか。休憩時間も労働時間に応じて取得するべき時間が労働基準法で定められ、これを遵守しないと罰則もあります。
就業規則などでは休憩時間を適切に定めていても、当番がある場合や繁忙時などは、実質的に休憩が取れなくなってしまうケースも多いでしょう。ここでは、休憩時間に関する基礎知識と、うっかりトラブルに発展させないためのポイントを確認していきます。

【A2】勤務時間が8時間を超える場合は、60分の休憩が必要です

労働基準法では、労働時間に応じて取得すべき休憩時間が定められています。休憩時間は、1日につき下記の基準にしたがって付与することが必要です。

・実労働時間が6時間以内であれば、休憩時間の付与義務なし
・実労働時間が6時間超なら、45分の休憩時間の付与義務が発生
実労働時間が8時間超なら、60分の休憩時間の付与義務が発生

以上を踏まえると、よくある8時間ちょうどの勤務時間では、休憩時間は45分以上であれば問題ないことになります。

 休憩時間とは

休憩時間は、労働基準法第34条に労働時間に応じて取得時間の下限の定めがあり、これを下回る休憩時間しか取得させていないと、罰則の対象となります。違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

なお、就業規則などで労働基準法を満たす休憩時間を設定していたとしても、資料の作成をさせているなど、実質的に労働から解放されていないとみなされる場合、労働基準監督署から違反を指摘されるリスクがあります。
注意が必要な事例については、後ほど「休憩時間のトラブル例」で改めてご紹介しますので、職場が似たような状況になっていないか確認しておきましょう。

休憩時間の3原則を把握しておこう

労働基準法を踏まえると、休憩時間を取得させる場合、次の3つの原則を満たしておく必要があります。

◆休憩時間の3原則
①休憩時間には、労働から解放させる
②休憩時間は、労働時間の途中に取得させる
③休憩時間は、原則として従業員に一斉に取得させる

①については、先ほどもお伝えしたとおり、休憩時間に顧客対応や資料作成などに追われ実質的に休めない状態であると、休憩を取得させたとは言えないことになるでしょう。

また、休憩は、いつ取得させてもよいわけではなく、労働時間の途中である必要があります。例えば8時間労働の場合、8時間労働してから休憩を取らせるのでは、労働基準法に反するということです。
休憩時間の一斉取得には例外があり、運輸交通業や商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署などは対象外となります。

休憩時間のトラブル例

休憩時間でトラブルに発展しやすい事例として、代表的なものが手待時間です。
手待時間とは、実際に作業などは行ってはいないものの、必要性が生じればすぐに対応しなければならない時間を指します。

例えば、飲食店でたまたま客足が途絶えたけれども、来店があればすぐに対応する必要がある場合です。また仮眠時間も、対応の必要性があればすぐに業務を行う義務がある場合は、休憩時間とはみなされないでしょう。
このように、一見休憩できているように見えても、「労働から解放」されているとは言えない場合は、トラブルに発展しやすいので注意が必要です。

トラブル回避のポイント

休憩時間にまつわるトラブルを避けるには、休憩時間を取得しやすくなるような対策を行うとよいでしょう。例えば、次のような対策がおすすめです。

・まとまった休憩を取りにくい場合、30分ずつ2回など、分割取得を認める
・顧客対応が必要な職場では、当番制にし、確実に休める体制づくりをする
・上司が率先して休憩を取り、休みやすい雰囲気をつくる

休憩時間にきちんと休めていない状態を放置すると、従業員の不満がたまる、罰則の対象になる、などのトラブルに発展しかねません。また、何よりも休憩時間がないことで、従業員の労働生産性が落ちてしまいます。早めに対策を検討してみましょう。

【Q3】振替休日は、同一月のうちに振り替えれば割増賃金を支払わなくてよい?

業務の都合で休日出勤が必要になったときに運用する機会の多い振替休日ですが、振替の仕方によっては、割増賃金が発生するケースがあります。想定外に割増賃金が発生すると、人件費の増加や支払処理の失念によるトラブルなどにつながりかねません。
ここでは、どのような場合に割増賃金が発生するのか、その他に振替休日関連でトラブルに発展させないために押さえるべきポイントは何か、などを確認しておきましょう。

【A3】割増賃金が発生する可能性があります

1日の所定労働時間が8時間の場合、同一週内で振り替えた場合は、週40時間を超えないため、割増賃金(時間外労働又は休日労働)は不要です。一方で、別の週に振り替えた結果、労働時間が週40時間を超えると割増賃金が発生します。

同じ賃金計算期間に振り替えた場合は、割増賃金と通常の賃金との差額(0.25時間分または0.35時間分)の支払が必要です。なお、同じ賃金計算期間を超えた振替の場合は、割増賃金の支払が必要です。

振替休日とは

振替休日とは、前もって休日を通常の労働日に振り替えることです。土曜が休日の場合に、労働日である木曜を振替休日にすると、木曜日が休日・土曜が労働日に変わります。この結果、土曜に出勤しても休日労働にならず、割増賃金も発生しなくなるのです。

◆振替休日の要件
・就業規則に振替休日に関する規定を設ける
・事前に振替日を決め、従業員に通知する
・1週間に1日または4週間に4日の休日が確保されるように振り替える

なお、似たような制度である代休は、休日出勤した際に事後的に休日を与えるのみで、休日と労働日の振替は発生しません。そのため、休日出勤をした日については、代休を取っても取らなくても割増賃金が発生します。

押さえておくべき割増賃金発生のポイント

これまでの内容をまとめると、休日に仕事をした場合に割増賃金が発生するかどうかのポイントとなるのは、週40時間の労働時間を超えるかどうかと、休日出勤に該当するかどうかの2つです。想定外のトラブルを避けるためにも、どちらの制度を運用することで、どのような割増賃金が発生したり、逆に発生を抑えたりできるのかを、正しく把握しておきましょう。

就業規則や36協定の整備も忘れないようにしよう

振替休日を運用するには、就業規則に定めが必要です。休日を振り替える場合があること、振り替える場合の手続き方法、事前の通知の方法などを、具体的に定めておきましょう。

また、代休を運用する場合は、従業員に休日出勤をさせることになるため、36協定の締結が必要です。就業規則に休日出勤が発生する場合があることを定めるとともに、協定も忘れずに締結し、管轄の労働基準監督署に届け出ておきましょう。

振替休日でトラブルに発展させないための注意点

振替休日は休日労働の割増賃金を発生させずに済むので、雇用主側からすると便利な制度ですが、従業員側からすると、本来の休日に休めないので負担のある制度でもあります。
休める日がくるタイミングがバラバラだと、健康に悪影響を及ぼす場合がありますし、休日のスケジュールが立たないと、モチベーションの低下にもつながるでしょう。

トラブルを避けるには、振替休日が負担を伴うものであることを認識したうえで、早めに振替を通知するなど従業員への配慮をするとともに、必要最小限の運用を心がけることが大切です。

就業規則や36協定に関する疑問からトラブル解決までTOMAがサポートします

普段、何気なく行っている残業や休憩・振替休日には、労働基準法で定められた厳格なルールがあり、違反すると罰則の対象になります。忙しさから、つい見逃しがちな運用上の問題が、訴訟など大きなトラブルに発展することも珍しくありません。ポイントを押さえて知識を再確認するとともに、運用を見直してみることが大切です。

TOMAの人事労務サービスでは、人事・労務のあらゆるお悩みをワンストップで解決できます。
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