人事労務のご担当者の方にとって、ご自身の仕事に関係する法律の改正は気になりますよね。
2022年には、代表的なものだけでも、人事労務に関係する法改正が8つも予定されています。
<2022年版 人事労務に関係する主な法改正一覧>
1. 【2022年1月施行】雇用保険マルチジョブホルダー制度
2. 【2022年1月施行】傷病手当金の支給期間の通算化
3. 【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業)
4. 【2022年4月施行】育児介護休業法
5. 【2022年4月施行】女性活躍推進法
6. 【2022年4月施行】個人情報保護法
7. 【2022年10月施行】育児介護休業法
8. 【2022年10月施行】社会保険適用拡大
上記の法改正に伴って、就業規則の改正・雇用環境の整備など、雇用主側の対応が発生します。遺漏があると助言・指導・勧告の対象となる場合もあるため、施行に合わせてスムーズな対応を行うことが大切です。
そうはいっても、法改正の数も多く、法律の条文は複雑であるため、
「結局、何に対応しておけば問題ないのかがよくわからない」
「対応に漏れがありそうで不安」
と心配される方も多いでしょう。
そこで当記事では、2022年の人事労務関係の法改正を無事に乗り切るために知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。このブログをお読みいただければ、各法改正の基本的な情報や、いつどのような対応が必要かを把握できます。「法改正への対応を漏れなく行いたい」、「事前に準備しスムーズに対応したい」とお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
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【2022年最新】人事労務関係の法改正一覧
冒頭でもご紹介したとおり、2022年の人事労務に関係する主な法改正は、次の8つです。
<2022年版 人事労務に関係する主な法改正一覧>
1. 【2022年1月施行】雇用保険マルチジョブホルダー制度
2. 【2022年1月施行】傷病手当金の支給期間の通算化
3. 【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業)
4. 【2022年4月施行】育児介護休業法
5. 【2022年4月施行】女性活躍推進法
6. 【2022年4月施行】個人情報保護法
7. 【2022年10月施行】育児介護休業法
8. 【2022年10月施行】社会保険適用拡大
ここでは各法律の概要と今回の法改正に伴う主な変更点を簡単に見ていきましょう。
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1-1. 【2022年1月施行】雇用保険マルチジョブホルダー制度
2022年1月1日から施行される「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは、65歳以上の労働者について、複数の事業所で勤務する場合であっても、条件を満たせば雇用保険に入れる制度です。
元々、雇用保険には、1つの事業所で週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みなどの条件を満たさないと入れません。この条件を緩和し、2つの事業所で合計20時間以上勤務している場合でも雇用保険に入れるようにしたのが、マルチジョブホルダー制度です。
マルチジョブホルダー制度の対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。
・複数の事業所に雇用されている65歳以上の労働者
・事業主が異なる2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上
・上記の2つの事業所について、それぞれの雇用見込みが31日以上
※参考:厚生労働省「Q&A~雇用保険マルチジョブホルダー制度~」
マルチジョブホルダー制度を活用する場合、雇用保険の加入手続き自体は労働者本人が行います。ただし、労働者から申し出があった場合、雇用主側は、雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)への必要事項の記入や、雇用契約書や出勤簿など資料提出に協力する必要があります。
1-2. 【2022年1月施行】傷病手当金の支給期間の通算化
傷病手当金とは、病気やけがで仕事ができず十分に報酬が受け取れない場合に、本人や家族の生活を守るために支給される手当金です。2022年1月1日より健康保険の傷病手当金の支給期間が以下のとおり変更され、より柔軟な支給ができるようになります。
・改正前:同一の病気・けがについては、傷病手当金の支給開始日から1年6ヶ月目までが対象
・改正後:同一の病気・けがについて、傷病手当金を支給した期間が合計1年6ヶ月になるまで対象
具体的には次のとおりです。
※厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」より引用
改正に伴い、雇用主側は、傷病手当金の開始日だけでなく、従業員が同一の病気・けがで傷病手当金の対象となった日数も把握する必要がでてきます。
1-3. 【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業)
パワハラ防止法とは、職場でのパワーハラスメントを防止するための措置を義務付ける法律です。2022年4月1日からは、中小企業もパワハラ防止法の対象になります。これに伴い、中小企業は次の4つの措置を講じなければなりません。
・パワーハラスメントについて、該当する内容・行ってはならない旨・行った場合の対処などを周知徹底させる
・相談の内容や状況に応じ適切に対応できる相談窓口を設け、従業員に周知させる
・パワーハラスメントについて迅速に事実関係を把握し、適切な措置及び再発防止策を講じる
・パワーハラスメントに関する相談・事実確認への協力などしたことに関するプライバシーの保護や不利益な取り扱いをしないことを定め、周知する
上記に関連して、パワハラに関する規程を就業規則に盛り込むことも必要です。
1-4. 【2022年4月施行】育児介護休業法
育児介護休業法とは、育児や介護と仕事を両立させ、働き続けることができるよう取得できる休暇などが定められている法律です。2022年4月1日から施行の改正内容は、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和と、育児休業を取得しやすい雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務付けの2点があります。
「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和」では、以下のとおり、引き続き雇用された期間が1年以上なくても育児休業・介護休業を取得できるようになります。これに伴い、就業規則の改正が必要です。
「育児休業を取得しやすい雇用環境整備・個別の周知・意向確認の措置の義務付け」では、育児休業に関する研修などの実施、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした従業員に対する育児休業制度に関する個別の周知・意向確認をする必要があります。
1-5. 【2022年4月施行】女性活躍推進法
女性活躍推進法とは、女性が活躍できる職場環境を推進するため、行動計画や自社の女性の活躍に関する情報の公表などを義務付ける法律です。
これまで義務付けの対象は、国・地方公共団体・常時雇用する従業員数301人以上の大企業でしたが、2022年4月1日からは常時雇用する従業員数101人以上の企業も対象となります。
女性活躍推進法の対象になると、次の3つの対応が必要です。
・自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
・その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
・自社の女性の活躍に関する情報の公表
※参考:厚生労働省「女性活躍推進法とは」
1-6. 【2022年4月施行】個人情報保護法
個人情報保護法とは、個人情報に関する権利・利益の保護を主な目的とした法律です。個人情報の取得・保管・削除に関するルールなどが定められています。技術革新や個人情報利用のグローバル化などの進展を踏まえた改正が今回行われました。2022年4月1日からの主な変更点は次のとおりです。
・本人からの個人情報の利用停止・消去等の請求権拡大
・情報の不適正利用の明確化や漏えい等発⽣時の本人への報告を義務化
・提供元では個⼈データに該当しないが、提供先で個⼈データになると想定される情報の提供について、本⼈の同意が得られていることなどの確認を義務化
・安全管理のために講じた措置なども公表対象に追加
・罰則の強化
・海外の第三者へ情報を提供できる要件を追加
これに伴い、プライバシーポリシーの見直しなどが必要となることが想定されます。
1-7. 【2022年10月施行】育児介護休業法
2022年10月1日から施行される育児介護休業法の改正内容は、「産後パパ育休」の新設と、育児休業の分割取得が可能になった点の2つです。
今回新設される「産後パパ育休」は、現行の育休とは別に取ることが可能な休業制度で、子どもが生まれた直後から男性も休むことができるようになります。
また育休制度も改正され、以下のとおり分割取得や再取得が可能になるなど、柔軟な運用が可能になるでしょう。なお、上記の改正に伴い就業規則の見直しが必要になります。
1-8. 【2022年10月施行】社会保険適用拡大
2022年10月1日から、パート・アルバイトの社会保険適用範囲が拡大します。
具体的には、常時雇用する従業員数101人以上の企業も対象になる点と、見込まれる雇用期間が2ヶ月の従業員から対象になる点の2点です。
これまでは常時雇用する従業員数501人以上の企業が対象でしたが、2022年10月1日からは、500人以下の企業にも順次拡大されます。※厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」より引用
また、次の条件を満たす従業員が対象です。
社会保険適用拡大の対象となる従業員の条件
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金の月額が8.8万円以上
・雇用見込み期間が2ヶ月を超える
・学生は対象外
社会保険料負担が増える社会保険の適用拡大に伴い、雇用主側は新たに社会保険加入対象となる従業員に周知が必要になるという影響があります。早めに対象従業員を把握し、対応していくことが大切です。
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2022年法改正対応ポイント
前章で解説した法改正に伴い、大きく分けて、就業規則の改正と雇用環境の整備の2つが必要となります。
それぞれ具体的にどのような対応が必要なのかを、まとめて見ていきましょう。
2-1. 就業規則の改正が必要
就業規則の改正が特に必要となるのは、次の3つです。
・【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業):パワハラに関する規程を設け、パワハラを行った場合の処置などを定める
・【2022年4月施行】育児介護休業法:有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和を規程に盛り込む
・【2022年10月施行】育児介護休業法:「産後パパ育休」の新設・育児休業の改正について規程に盛り込む
特に、「産後パパ育休」制度は、これまでなかった制度で、今回の改正で初めて導入される制度です。すべての企業が必ず就業規則の改定が必要になります。就業規則は、労使トラブルを回避し、働きやすい職場環境を作るうえで欠かせません。漏れや誤りがないよう、作成・見直しには早めに着手しましょう。
2-2. 雇用環境を整備しよう
法改正に伴う雇用環境の整備などとして、次のような対応も必要となります。
【2022年1月施行】傷病手当金の支給期間の通算化
・従業員が同一の病気・けがで傷病手当金の対象となった日数を把握しやすい仕組みづくり
【2022年4月施行】パワハラ防止法(中小企業)
・パワーハラスメントについて、該当する内容・行ってはならない旨・行った場合の対処などを周知徹底
・相談窓口を設け、従業員に周知
【2022年4月施行】育児介護休業法
・育児休業を取得しやすい雇用環境整備
・個別の周知・意向確認の措置を行うための仕組みづくり
【2022年4月施行】女性活躍推進法
以下の作業を行うための情報を収集する仕組みづくり
・女性の活躍に関する状況把握・課題分析
・その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
・自社の女性の活躍に関する情報の公表
【2022年4月施行】個人情報保護法
・プライバシーポリシーの見直し
【2022年10月施行】社会保険適用拡大
・社会保険料負担増分の金額を試算
・新たに社会保険加入の対象となる従業員への説明
このように、法改正に伴いさまざまな対応が必要となります。施行日までに対応を終わらせられるよう、早めに着手・準備をしましょう。
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まとめ
2022年も人事労務に関係する多くの法改正が行われます。これに伴い、雇用主側には就業規則の改正・雇用環境の整備などの対応が必要です。遺漏があると助言・指導・勧告の対象となる場合もあるため、施行に合わせてスムーズな対応が求められています。当記事を参考に、各法改正の基本的な情報や、いつどのような対応が必要かを把握し、早め早めの対応を心がけましょう。