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【2026年法改正】労働基準法はどう変わる? ハラスメント対応義務化など人事担当者・経営層が対応すべき重要ポイントを社会保険労務士が解説

記事作成日2026/01/16

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2026年は、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化に加え、労働基準法の40年ぶりの改正に向けた議論も本格化しており、法制度への的確な対応がこれまで以上に求められる年となります。

「改正の内容が多すぎて整理しきれない」「具体的にいつまでに何をすべきか不安がある」とお悩みの総務・人事担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、中小企業の現場を良く知るTOMAコンサルタンツグループの社会保険労務士が、2026年に向けて押さえておくべき法改正の全体像と、今から準備すべき実務対応についてわかりやすく解説します。

1.確定している2026年の法改正

2026年に施行が予定されている法改正は、職場環境の整備や人件費、さらには採用戦略にも直接関わる内容となっています。制度の変更点を確認するだけでなく、実務においてどのような影響が生じ、どのような準備が必要になるのか。ここでは、特に優先順位の高い項目を中心に詳しく解説します。

1-1.カスタマーハラスメント(カスハラ)・就活セクハラ対策の義務化

2026年10月(予定)より、これまでパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント等について法律上対策が義務付けられていましたが、さらに対策を義務づける範囲を拡大し、すべての企業に対して「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」および「就活セクハラ対策」の講ずべき措置が義務化されます。



(1)変更の内容:カスハラ防止に向けた事業主の措置義務を明示

厚生労働省の調査では、直近3年間にカスハラを受けたことがあると回答した企業は約15%から20%にのぼり、現場の疲弊は深刻化しています。これまでは「お客様だから」という理由で、従業員に忍耐を強いる風潮がありましたが、今後は「従業員を守るための体制を整えていない企業」が法的責任を問われることになります。

また、改正法に基づき示された指針案では、職場におけるカスタマーハラスメントを

職場において行われる
①顧客等の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすもの

と定義しています。事業主には、毅然とした対応方針の明確化や周知、相談窓口の整備、そして事後の迅速な被害者ケアといった具体的な雇用管理上の措置を講じることが義務付けられることになります。

※参考/厚生労働省サイトより:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について【概要】

(2)具体的な影響と対策:放置が招く「3つの経営リスク」

①安全配慮義務違反のリスク:カスハラにより従業員がメンタルヘルス不調をきたした場合、企業が適切な措置を講じていなければ、安全配慮義務違反として損害賠償を請求される可能性があります。

②人材の流出と採用難:カスハラを放置する職場は「ブラック企業」としてSNS等で瞬時に拡散されます。特に若手層ほど「自分を守ってくれない会社」をすぐに見限る傾向にあります。

③ブランドイメージの毀損:不適切な顧客対応や、就活生へのハラスメントが明るみに出れば、企業の社会的信頼は一夜にして失墜します。

(3)義務化までに整備すべき3つの柱

①方針の明確化:就業規則等に「カスハラを許さない」という姿勢を明文化し、従業員および顧客へ周知する

②対応マニュアルの策定:どこまでが「正当なクレーム」で、どこからが「ハラスメント」なのか。現場が迷わないための基準と、組織的な報告・相談ルートを構築する

③研修の実施:管理職だけでなく、現場担当者に対しても「自身の身を守るための対応スキル」を習得させる研修が必要

TOMAでは、法改正に準拠した就業規則の改定はもちろん、現場の混乱を防ぐための「ハラスメント研修」や、社内で解決しにくい問題を受け付ける「外部相談窓口」の提供を通じて、貴社の組織防衛をトータルでサポートしています。お気軽にご相談ください


1-2.在職老齢年金の見直し(支給停止調整額の引き上げ)

高齢者の就労意欲を削がないための施策として、年金額を調整する「支給停止調整額」の基準が引き上げられます。



(1)変更の内容:51万円から62万円へ(2025年度価格ベース)

現在、65歳以上の働く年金受給者について、「月給(総報酬月額相当額)+年金額(基本月額)」の合計が51万円を超えると、超えた分の半額の年金が支給停止となります。2026年4月からは、この基準額が62万円まで引き上げられる予定です。

(2)具体的な計算例:手取り額はどう変わる?

例えば、月給45万円、厚生年金を月額15万円受給しているAさんの場合:

現行制度(51万円基準): 合計60万円となり、基準を9万円オーバー。その半額である「4.5万円」が年金からカットされます。

2026年4月以降(62万円基準): 合計60万円ですが、基準内となるため、年金は1円もカットされず全額受給可能になります。

(3)定年再雇用後の賃金設計を見直す絶好のチャンスです

これまでは「年金が減るから、給料はこれ以上いらない(働く時間をセーブする)」という優秀なベテラン層が少なくありませんでした。この改正により、「高い専門性を持つシニア層を、相応の報酬でフルに戦力化する」ことが可能になります。定年再雇用後の賃金設計を見直す絶好のチャンスといえるでしょう。

1-3. こども・子育て支援金制度の創設

2026年4月から、少子化対策の財源を確保するための「こども・子育て支援金」の徴収が開始されます。



(1)変更の内容

医療保険(健康保険)の保険料と併せて徴収される仕組みです。

①徴収開始: 2026年4月~
②負担者 : 事業主および被保険者(従業員)
③拠出額 : 加入している医療保険や所得によって異なりますが、当初は月数百円程度から始まり、段階的に引き上げられる計画です。

(2)実務上の注意点

実質的な「社会保険料の増額」となります。企業にとっては人件費負担の増加、従業員にとっては手取り額の減少を意味します。給与計算システムへの対応はもちろん、従業員に対して給与明細に内訳を記載する義務はありませんが、「なぜ控除額が増えたのか」を説明できる準備が必要です。

もし説明の仕方などで迷うことがあれば、TOMAの経験豊富な社会保険労務士がご相談に乗りますのでお気軽にご連絡ください


1-4. その他の重要変更点:障害者雇用、女性活躍、公益通報

中規模以上の企業において、特に注意すべき3点をまとめます。

項目改正のポイント(2026年)企業がとるべきアクション
障害者雇用率の引き上げ民間企業の法定雇用率が2.7%に。(2026年7月~)未達成企業への納付金増を考慮した採用計画の策定。
女性活躍推進法の公表義務拡大男女間賃金差異等の情報公表義務が、従業員101人以上の企業へ拡大。(2026年4月~)現状の賃金データの分析と、差異がある場合の理由説明の準備。
公益通報者保護法の強化通報者への不利益取扱いの禁止徹底、フリーランス等を通報対象に追加。内部通報規定の見直しと、実効性のある窓口運営体制の再確認。

2026年、自社が具体的にどの項目に該当し、いつまでに何を変えればいいのか?とお悩みの方に向けて、TOMAでは法改正のポイントを実務レベルで解説する特別セミナーを開催します。ご興味あれば是非ご参加ください。


2.2026年以降の継続的な改正項目

法改正の対応において、最も避けなければならないのは「施行直前の泥縄式な対応」です。2026年を起点に、さらにその先へ続く改正の動きを押さえておく必要があります。

2-1. 労働安全衛生法の改正(全事業場でのストレスチェック義務化等)

これまで「従業員50人未満」の事業場では努力義務とされていたストレスチェックの実施が、すべての事業場において義務化される方向で準備が進んでいます。



(1)変更の内容

小規模な事業場や、サテライトオフィス単位でも実施が求められるようになります。また、個人事業者やフリーランスなどの「雇用関係によらない働き手」に対しても、安全衛生対策を講じることが企業に求められるようになります。

(2)具体的な影響と対策

メンタルヘルス不調は、一度発生すると代替人員の確保や休職対応など、企業に多大なコストを強います。「義務だからやる」のではなく、「組織の健康状態を可視化し、離職を防ぐツール」としてストレスチェックを再定義し、産業医との連携体制を今から構築しておくことが重要です。


2-2. 年金制度の改正(被用者保険の適用拡大)

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用拡大は、今後も止まることはありません。



(1)変更の内容

2024年10月に「従業員数51人以上」の企業へと対象が広がりましたが、2026年以降はさらにこの「企業規模要件」そのものの撤廃が議論されています。

(2)具体的な影響と対策

「年収の壁」を意識して就労時間を調整しているパート・アルバイト層に対し、社会保険に加入してもなお「手取りを減らさない、あるいはそれ以上のメリットを感じさせる」賃金体系やキャリアパスの提示が必要です。

これは単なる事務手続きではなく、「人材活用の戦略的再構築」そのものです。


2-3. 雇用保険法(被保険者要件「10時間以上」への拡大)

2028年10月の施行に向け、実務的な準備を2026年から始める必要があるのが、雇用保険の適用拡大です。



(1)変更の内容

週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられます。

(2)具体的な影響と対策

これまで加入対象外だった短時間パート・アルバイトの多くが新たに加入対象となります。それに伴い、会社負担分の保険料の増加や、入退社時の手続き件数の大幅な増加が見込まれます。システム改修の検討や、雇用契約書の見直しを計画的に進める必要があります。


2-4. 今後の改正は単発ではなく、“連鎖”している

これらの改正は単発で終わるものではなく、互いに影響し合いながら“連鎖”しています。場当たり的に目の前の変更だけを追う対応では限界があり、数年先を見据えた継続的かつ俯瞰的な視点が、これからの労務管理には不可欠です。

3.労働基準法が40年ぶりの改正へ。労働政策審議会で議論中のテーマ

3-1.労働基準法改正に向けた主要な審議ポイント


現在、労働政策審議会では、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的な見直しに向けた議論が進められています。

法案提出の具体的な時期については今後の議論の進展や国会の動向を待つ形となりますが、検討されている項目はいずれも将来の労務実務に直結する重要なテーマです。

主な議論の柱は、労働時間の適正管理と柔軟な働き方の両立です。具体的には、「時間外労働の上限規制」の再検討や、勤務終了から翌日の始業まで一定の休息時間を置く「勤務間インターバル制度」の導入促進、さらには勤務時間外の連絡を制限する「つながらない権利」のガイドライン策定などが論点となっています。

また、割増賃金のあり方や、企業による労働時間の情報開示義務化、副業・兼業時の労働時間通算ルールの簡素化といった、人件費コストや採用ブランディングに直結するテーマも網羅されています。

これらは直ちに施行されるものではありませんが、将来的な変化の方向性として注視しておくべきトレンドと言えるでしょう。

このような目まぐるしい制度変更や先の見えない法改正情報を自社のみでキャッチアップしていくことに不安を感じる方は、TOMAの人事・労務相談顧問サービスをご検討ください。定期的な打ち合わせや限定関連情報の提供を通じて、常に法改正を先回りして把握できる環境を整え、「先が見えない不安」を解消します。

4.法改正を機に、より強い組織作りを共に進めていきましょう


本記事では、2026年を中心に予定されている主要な法改正の動向を整理しました。カスハラ対策の義務化や社会保険の適用拡大など、実務への影響は多岐にわたります。

相次ぐ制度変更にその都度対応するのではなく、まずは全体像を把握し、自社に必要な準備を順序立てて進めていくことが重要です。

具体的な実務対応や対策について詳しく知りたい方は、下記セミナーへぜひご参加ください。最新情報を整理し、貴社が今すぐ取り組むべき優先順位を確認する場としてご活用いただけます。

また、継続的な情報提供やハラスメント対策に関する助言が必要な方には、TOMAが提供する【人事・労務相談顧問サービス】【ハラスメント防止対策】をお勧めします。専任の担当者を置くことが難しい中小企業の力強いパートナーとして、最新情報の提供からトラブル予防まで総合的にサポートします。

法改正を機に、より強い組織作りを共に進めていきましょう。

セミナー終了後も、お悩みがあればお気軽に下記よりご相談ください。