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【2022年最新】年金制度改正のポイントと企業が取るべき対応とは

記事作成日2022/05/24 最終更新日2022/05/24

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2022年4月から年金制度の改正が施行されました。主な改正点は、次の4つです。

【改正点①】厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大
【改正点②】在職老齢年金制度の見直し・在職定時改定の導入
【改正点③】受給開始時期の選択肢が増加
【改正点④】確定拠出年金加入要件が緩和

上記の改正を受けて、雇用者側は、年金保険適用範囲拡大に伴う対応・シニア層労働者の雇用環境整備・雇用計画の見直しなどを行う必要があります。想定外の社会保険費用や人事労務担当者の負担が発生してしまうなどの不利益を避けるためには、改正内容を踏まえて計画的に対応を行うことが重要です。

また、今回の年金制度改正を上手に活用することができれば、効率的な人材確保を実現することが可能となるでしょう。

このように、トラブルを避け効果的に改正を活用するためには、年金制度の改正内容を正確に把握しておくことが欠かせません。当記事では、2022年4月の年金制度改正を正しく把握するうえで押さえるべき以下のポイントを解説します。

以上のポイントを押さえていくことで、漏れなく年金制度改正に対応することに加え、改正を活かして、安定した人材の確保や従業員の福利厚生の充実を実現することができるようになるでしょう。

年金制度の基本知識

今回の改正内容をスムーズに把握するには、年金制度自体の仕組みについて、次のポイントを押さえておく必要があります。

・年金制度は最大3階建ての構造になっている
・厚生年金で受け取れる年金は4種類ある
・国民年金や企業年金とは位置づけや運営主体が違う

それぞれ、以下でわかりやすく解説しますので確認してみましょう。

【ポイント①】年金制度は最大3階建ての構造

年金制度は、大きく分けて、国民年金・厚生年金・私的年金の3層構造になっています。ベースとなる国民年金に、厚生年金や必要に応じて私的年金をプラスすることで、老後の保障を充実させられることが特徴です。

国民年金とは、20歳から60歳までの国民全員が加入することを義務付けられている年金で、保険料は原則として被保険者が全額負担します。保険料は一律です。個人の就業状況に応じて3種類の被保険者があります。

厚生年金とは、上記の第2号被保険者が国民年金に上乗せして加入する公的年金で、保険料は所得に応じて変わり、雇用主と折半して支払う仕組みです。私的年金とは、任意で加入できる年金を指します。企業では厚生年金基金や企業型確定拠出年金、個人では国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などの選択肢があります。

このように年金には3種類があり、義務付けられているものと任意で追加できるものがあること、厚生年金は雇用主が保険料を折半する必要があることを覚えておきましょう。

【ポイント②】厚生年金で受け取れる年金は4種類

厚生年金に加入した人が受け取ることのできる年金は、老齢基礎年金・老齢厚生年金・障害年金・遺族年金の4種類です。

厚生年金の被保険者は、基本的には、老齢基礎年金と老齢厚生年金を65歳から受け取れるという点を押さえておきましょう。

【ポイント③】国民年金や企業年金とどう違う?

厚生年金は、会社員・公務員など国民年金の第2号被保険者が、国民年金に上乗せして加入する年金です。公的年金である点は国民年金と同じですが、第2号被保険者しか加入できない点と保険料を雇用主と折半する点が、国民年金とは異なります。

企業年金とは、私的年金の1種で企業が私的に設置する年金です。運用方法などの違いによって、厚生年金基金・確定給付企業年金・企業型確定拠出年金の3種類があります。
厚生年金は公的年金で加入は義務であるのに対し、企業年金は私的年金で加入は任意であることが、大きな違いと言えるでしょう。

少子高齢化に伴い公的年金の給付額が下がっていく傾向にある中で、企業年金をどのように準備し老後対策をしやすい環境を整えられるかも、従業員の福利厚生を充実させるうえで重要なポイントになってきています。

2022年 年金制度 改正内容

2022年4月の年金制度改正は、働き方改革の年金版ともいえる内容になっています。主な改正内容は、次の4つです。

【改正点①】厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大(2022年10月改正)
【改正点②】在職老齢年金制度の見直し・在職定時改定の導入(2022年4月改正)
【改正点③】受給開始時期の選択肢が増加(2022年4月改正)
【改正点④】確定拠出年金加入要件が緩和(2022年4月・5月・10月)

従業員区分や年齢にとらわれずに、長く働ける環境づくりを後押しする改正内容となっているのが、特徴と言えるでしょう。
以下の小見出しでは、詳しい改正内容と、改正によってこれまでとどう変わるのかを解説します。

【改正点①】厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大


※厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律参考資料集」より

上記のとおり、今回の改正で、厚生年金の加入対象となる従業員の範囲が中小企業でも拡大されます。

2022年10月からは従業員が100人を超える規模の企業、2024年10月からは50人を超える規模の企業で、それぞれ短時間労働者についても、勤務期間が2ヶ月を超える場合は厚生年金保険に加入させなければなりません
これに伴い、雇用者側には、年金への加入手続きや保険料負担額の増額などの処理が発生することになります。
短時間労働者とは、「週労働時間が20時間以上で交通費などを除く月額賃金が88,000円以上、継続して雇用する期間が2ヶ月超見込みの従業員」です。

2022年10月の改正により、新たに厚生年金の被保険者に該当する従業員の把握や社会保険料の増額分の算定・本人への説明などを行う必要があるでしょう。

【改正点②】在職老齢年金制度の見直し・在職定時改定の導入

在職老齢年金制度とは、60歳以降に仕事をしながら年金を受け取る場合、1ヶ月あたりの給与や賞与の額と年金額の合計額が基準額を超えると、年金の支給額が減らされる仕組みのことです。

これまでは60歳から65歳未満までの間は、給与や賞与と年金額の1ヶ月あたりの合計が28万円を超えると減額の対象になっていましたが、2022年4月からは、基準額が47万円まで緩和されることになりました。これによって、これまでより給与や賞与を多く受け取っても、年金の支給停止がされなくなり、これまで以上に積極的に仕事に打ち込みやすくなります。

また、在職定時改定とは、65歳以上で厚生年金に加入しながら年金を受け取る場合に、在職中であっても加入実績に応じて年金額が毎年改定されるようになる仕組みのことです。
これまでは、65歳以降に厚生年金に加入していても、在職中に払っている社会保険料の実績が年金額に反映されるのは、退職後もしくは70歳到達後となっていました。
これが2022年4月の改正によって、在職中であっても、払っている社会保険料が毎年年金額に反映されることになり、働くことへのモチベーションアップの効果があると考えられます。

【改正点③】受給開始時期の選択肢が増加

現在、年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、60歳から70歳までの間で本人の希望により年金の受給開始時期を選ぶことが可能です。
2022年4月の改正でさらに、選べる範囲が75歳まで広がります。

本来の年金受給開始時期は65歳であるため、60歳から64歳までは繰り上げ受給となり、年金額が、繰上げ月数×0.5%減額されていましたが、2022年4月より、この繰上げ受給の減額率が1月あたり0.5%から0.4%に変更され、最大減額率は24%(60月×0.4%)となります。これは、2022年3月31日時点で、60歳に達していない方(昭和37年4月2日以降生まれの方)が対象となります。

一方で、66歳から75歳は繰り下げ受給となるため、繰下げ月数×0.7%増額されます。今回の改正で選択可能となった75歳を年金受給開始時期にした場合、増額率は84%(120月×0.7%)にもなります。

この改正に伴い、70歳を超えても年金の受給時期を遅らせることで、仕事を精力的に継続する選択がしやすくなったといえるでしょう。企業側としては、優秀な経験豊かな人材に、長く活躍してもらいやすくなる改正ととらえることができます。

【改正点④】確定拠出年金加入要件が緩和

確定拠出年金制度とは、企業型DC(Defined Contribution)と呼ばれることもある企業年金の1種です。「拠出」つまりは掛け金額が確定しており、運用損益に応じて給付額が事後的に決まります。企業型の場合、掛け金は事業主と従業員(加入者)の双方が拠出し、加入者である従業員は運用方法を選ぶことも可能です。

今回の改正に伴い、確定拠出年金を利用できる条件が緩和されます。例えば、これまでは企業型DCの加入上限は65歳未満でしたが、2022年5月以降は、70歳未満まで加入上限を上げることが可能です。

これに伴い、各企業では、従業員の雇用状況に応じた柔軟な確定拠出年金の設計ができるようになります。65歳以上の従業員を雇用する機会が多い企業では、企業型DCの要件緩和を活用することで、優秀なシニア層人材を確保しやすくなるでしょう。

2022年年金制度 改正による企業の影響

今回の年金改正に伴って、企業が受ける主な影響は次の2点です。

【影響①】社会保険料の負担期間は増えるが、優秀な人材を長く雇用可能に
【影響②】福利厚生を充実させやすくなる

改正による影響を的確に把握しておくことで、取るべき対策や効果的な活用方法が明確になります。詳しくは以下をご覧ください。

【影響①】社会保険料の負担期間は増えるが、優秀な人材を柔軟に雇用可能に

今回の改正で、短時間労働者の一部が厚生年金の対象となることで厚生年金の加入者が増加したり、シニア層の雇用継続が増加することで社会保険料の負担期間が増えたりします。その結果、雇用者側としては、社会保険料の負担増という影響があるでしょう。一方で、短時間労働や60歳以降でも年金制度が柔軟に利用できることで、多様な働き方が可能となる結果、これまで勤労意欲はあっても仕事をしづらい状況にあった優秀な人材を確保しやすくなります

厚生年金保険・健康保険の適用範囲拡大で、育児や介護中の人が安心して仕事をしやすくなりますし、在職老齢年金制度の見直し・在職定時改定の導入に伴い、シニア層も積極的に仕事を続けやすくなるためです。

【影響②】福利厚生を充実させやすくなる

確定拠出年金加入要件が緩和されたことに伴い、老後の安心を確保したい従業員にとっての福利厚生をより充実させやすくなります
幅広い年代の従業員が利用しやすい企業年金を整備することで、安心して長く仕事を続けられる職場環境づくりができるでしょう。

今回の改正では、企業型の確定拠出年金に加え私的年金(iDeCo+)の要件も緩和されているため、私的年金の活用についてもアナウンスすると、さらに従業員の選択肢が広がって効果的と考えられます。

2022年年金制度 改正で企業が対応すべきこと

2022年の年金制度改正を踏まえて企業が対応すべきことは、次の3つです。

【対応①】適用範囲拡大に伴う対応
【対応②】シニア層労働者の雇用環境整備
【対応③】雇用計画などの見直し

以下で、それぞれの対応すべき内容を具体的に解説します。

【対応①】適用範囲拡大に伴う対応

まず着手したいのが、厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大することに伴う対応です。具体的には、対象者の把握・費用の計算・従業員への事前説明・加入手続きの4点を行う必要があります。

対応を漏れなく確実に行うために重要になるのが、適用範囲拡大によって、どの従業員が新たに厚生年金の加入対象となるのかを具体的に把握することです。
新たに加入対象となる従業員を正確に把握できたら、次は、具体的にどれくらいの金額、社会保険料の負担が増加するのか把握しましょう。負担増の試算は、現年度だけでなく、翌年以降も長期的に確認しておいてください。経営上、負担が大きくなりすぎる場合は、翌年度以降の雇用計画などを見直す必要があるためです。

同時に、新たに厚生年金の対象となる従業員への事前説明も欠かせません。従業員によっては厚生年金への加入を希望しないケースも想定され、その場合、勤務形態などを変える必要があるためです。
最終的な加入対象となる従業員が確定したら、被保険者資格取得届を提出し、加入手続きを行いましょう。

【対応②】シニア層労働者の雇用環境整備

年金制度の改正に伴い、シニア層がこれまで以上に精力的に仕事をしやすい環境が整います。雇用者側としても、少子高齢化に伴い、戦力として重要性の増すシニア層人材を有効に活用するための雇用環境整備を行う必要があるでしょう。

賃金や休暇・雇用期間など、経験豊富な一方で体力などが低下しやすい高齢者従業員が働きやすい環境を検討することが、優秀な人材確保につながります。

【対応③】雇用計画などの見直し

厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大することに伴う社会保険料の負担が大きくなりすぎる場合、雇用計画の再検討を行う必要があるでしょう。

改正に伴い新たに社会保険料が発生する対象者を具体的に確認したうえで、今後も厚生年金の対象となるような雇用形態の従業員を雇用し続ける必要があるのか、社会保険料の負担が発生しない雇用形態に変更が可能なのかを確認してみてください。

雇用計画の変更を検討する際は、社会保険料の負担増だけでなく、採用や社員教育にかかる経費なども合わせて総合的に判断することが大切です。

まとめ

年金制度の改正に伴い、企業では、適用範囲が拡大することに伴う対象者の把握・費用の計算・従業員への事前説明・加入手続きや雇用計画の見直しなど、さまざまな対応が必要です。法改正のタイミングに適切な対応を取ることで、これまで以上に生産性の高い労働環境を構築することも可能ですので、この機会に、ぜひ必要な見直しに取り組むことをおすすめします。

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