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ついに施行の「パワハラ防止法」 今さら聞けない法律のポイントをおさらい!

記事作成日2020/06/19 最終更新日2021/01/22

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2019年5月に改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が成立しました。大企業では2020年の6月から、中小企業では、2022年4月から施行されます。
今回は、そもそもパワハラとはなんなのか?そしてパワハラ防止法とはどんな法律なのか?ポイントをまとめて解説したいと思います。

「パワハラ防止法」とは?今さら聞けない法律のポイント

しっかりと理解できていますか?パワハラの定義とは

パワハラとは、パワーハラスメントの略というのは社会人であれば周知の事実でしょう。
では、「パワハラを一言で説明してください」と言われた時、あなたは答えられますか?
ビジネスシーンにおけるパワハラとは、優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就労環境が害されるもののことを言います。
当事者ではない第3者が「きつい言い方するなぁ」と思っても、業務上必要であり、適正な範囲で行われる指示、指導に関しては該当しないものとされています。

欧米で1990年代に法制化が始まり、日本においては、2000年代からよく耳にするようになりました。
特に、組織が閉鎖的な日本において、「大人によるいじめ」行為であるパワハラは横行しやすい環境だと言えます。
具体的には以下のような事例が挙げられます。

(1)身体を傷つける攻撃(暴行・傷害)

仕事でミスを犯した部下に対して「なんでこんな仕事もできないんだ!」と言って頭を叩くetc

(2)心を傷つける攻撃(脅迫・暴言等)

「この給料泥棒!」「お前は所詮、高卒だからな!」など業務とは直接関係のない暴言

(3)人間関係の切り離し

話しかけても意図的に無視をする。
チーム単位で個人を仲間はずれにする。

(4)達成困難な業務の要求

通常であれば絶対にできないような業務を強要する。
通常業務とは全く関係のない仕事をさせる。

(5)個人の能力とはかけ離れた業務の要求

熟練の営業にオフィスの掃除だけを延々とやらせるなど、能力や経験に見合わない仕事をさせる。

(6)個の侵害

「休みの日にゲームばっかりやっているから仕事ができないんだ!」などプライベートに踏み入った言動をする。
※上記6項目でパワハラの全てを網羅しているわけではありません。

パワハラは鬱病の原因にもなる重大な社会問題です。
年功序列、終身雇用が当たり前であったかつての日本では、ある程度の無理を言ってもまかり通っていたかもしれません。
しかし現代は昔に比べて転職がしやすい環境です。
パワハラが横行する状況を野放しにしていれば、従業員のモチベーション低下はもちろん、離職にもつながります。
マンパワーの減少は会社経営の基盤を揺るがしかねません。もし、自社内にパワハラが発生しているのであれば、今回の法改正を機に本腰を入れて状況の打開に勤めることを強くお勧めします。

大手企業は2020年6月から「パワハラ防止法」とは

では、2019年6月に成立した、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)とは、一体どんな法律なのでしょうか。
「パワハラ防止法」とは、パワーハラスメントを未然に防ぐため、雇用管理上の措置を企業に義務づけた日本においては初めての法律です。

大手企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から施行されます。
企業あるいは事業主は、職場にパワハラが発生しないよう、適切な措置を講じなければならなりません。
万が一、措置を行わなかった場合、何か罰則が課せられるわけではありませんが、是正指導を受ける可能性もあります。
みなさんご存知の通り、パワハラやセクハラは、ニュースとして最も取り上げられやすい話題の一つです。
そのため、もし指導対象となった場合には企業イメージを大きく損なうおそれがあります。

また、罰則がないということで、パワハラを見て見ぬ振りをし、放置した場合には安全配慮義務に抵触し、民法第709条、第715条上の不法行為責任に問われる可能性もゼロではありません。

「パワハラ防止法」の内容 企業に課せられた責務とは?

それでは、パワハラ防止法の具体的な内容はどうなっているのでしょうか。

事業主の責務

事業主は正社員・派遣・パート・アルバイトなど、雇用形態に限らず、部下に対してパワハラを行なってはなりません。
そして、自身だけでなく他の部門の上長が部下に対してパワハラを行なっていないか細心の注意を払い、研修なども実施し、現場にパワハラが起きないよう、事前対策を講じることが必要です。
パワハラによって従業員の労働意欲が低下したり、健康状態が悪化したりといったことが起こらないよう、職場環境を整えることも求められています。

労働者の責務

労働者はパワハラとは何か、どんな点に気をつけなければならないかといった理解を深めなければなりません。
また、事業主がセミナーや研修を実施する際には積極的に協力する必要があります。

このように、「パワハラ防止法」は雇用側と労働者双方に責務が発生するのです。

法制化によって事業主が講じるべき措置

事業主は社内でパワハラが起こらないために、雇用管理上、以下の措置を講じることが義務付けられます。

その1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

・就業規則や服務規律を定めた文書でパワハラ行為禁止を明確化。
・社内報やイントラネット、パンフレットなどを使用した啓発。
・パワハラへの意識を高め、防止に努める研修・講習の実施。
以上のような措置により、パワハラに関する自社の方針の明確化。さらに、発生原因や背景を従業員に理解を促す活動をしなければなりません。
また、職場においてパワハラ行為が発生した場合、パワハラを行った者に対する懲戒規定を定め、労働者に周知・啓発するなど、厳正に対処する旨を伝えなければなりません。

その2.相談・苦情に応じ、適切に対応するための体制を整備

労働者からパワハラの相談があった際に、適切な対応ができる相談窓口を設け、その旨を周知しなければなりません。
パワハラ被害を受けた労働者は、気分が落ち込んでいることがほとんどです。
被害を訴えたことで、自身が会社に居づらくなってしまうのではないかといった悩みを抱えているかもしれません。
相談を受ける側には一定の専門知識、対応能力が求められます。
そのため、相談窓口を担当する者は、誰でも良いというわけではなく、しっかりとした研修を受け、適切に相談に応じられる人物でなければなりません。
社内での対応が難しい場合、社会保険労務士など外部に対応を委託することも可能です。

TOMA社会保険労務士法人では対応実績通算3,500件以上、契約継続率92%という圧倒的な経験と解決力でお客様の労務問題をサポートします。
パワハラ対応の外部委託でお困りの際には、お気軽にお問い合わせください。

その3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

どれだけ事前に対策を講じていてもパワハラが発生することはあります。
その際は迅速に事実関係を確認し、適切な対処をしなければなりません。
相談窓口の担当者や人事部が相談者と行為者の双方から聴取し、事実関係を確認します。
もし双方の主張が一致せず、正しい事実が把握できない場合は、第3者からの聴取も必要です。
それでも事実確認が困難な場合には、中立な立場の第3者機関に紛争処理を委ねなければなりません。

その4.プライバシーの保護・パワハラ相談を理由とした不利益取り扱いの禁止

職場において発生したパワハラ行為は相談者、行為者ともに双方のプライバシーに属します。
そのため、プライバシーを保護する措置を取り、その旨を労働者に対して周知する必要があります。
また、パワハラの相談をしたことによる解雇や、その他不利益な取扱いがされないことも労働者に周知・啓発することが義務付けられています。

法律の遵守はもちろん、パワハラが起こる原因・背景に目を向けることが大切

パワハラを発生させないためには、その裏にある原因を明らかにすることが重要です。
近年のオフィスワークでは、コミュニケーションが希薄になっている傾向があります。
普段からビジネスライクな付き合いが当たり前になっていて、業務以外の会話はほとんどない。
そんな企業ではパワハラが発生しやすい環境と言えるので注意が必要です。
・本来は優しい性格なのだが、もともと口調が荒々しい上司。
・体が大きく、厳つい見た目でも、性格はとても繊細な部下。
実際に話してみないと相手のことはよくわからないということは少なくありません。
相手の性格を知らないために、何気ない一言が「パワハラ」となってしまう可能性があるのです。
そのため、ランチミーティングを隔週で行なったり、定期的に面談を実施したりと風通しの良い職場環境を作ることを心がけましょう。
また、アンガーマネジメントなど、感情をコントロールする手法を学ぶことも効果的です。
外部セミナーや研修を受講したり、資料を配布することでも一定の効果が期待できます。上司はできると思った仕事量でも部下にとっては膨大だったということも考えられるため、アンケートやヒアリングなど調査を行い、長時間労働にならない適正な仕事量を測ることも大切です。

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TOMAコンサルタンツグループではパワハラ防止対策をはじめとした人事・労務ついて定期的にセミナーを通じて情報発信をしています。ご自身のパソコンから、お気軽にご参加頂けるWEBセミナーも好評開催中です。

中小企業は2022年4月から施行パワハラ防止法への準備を始めましょう

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