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セクハラは一体どこからやってくる? 実際の事例やリスク対策を徹底解説!

2020.07.17

2020.07.17

会社の経営者、人事を預かる担当者にとって社員間の問題は、常に気になるところ。中でもセクシャルハラスメントは何気ない一言が発端となり、気づかぬうちに社員の心を大きく傷つけてしまう社会問題の一つです。

うつ病の原因や離職率の増加、最悪の場合、裁判に発展することもあります。
今回は、セクハラについて改めて考え、どんな対処や心がけが大切なのかを解説したいと思います。

セクハラの定義とは社会問題になり始めたのはいつから?

セクハラとは、職場内のおいて性的な言動や行為によって相手に嫌な思いをさせることと、なんとなく理解はしているかもしれません。

男女雇用機会均等法において、セクハラは「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」と定義されています。

このセクシャルハラスメントという言葉が生まれたのは1970年代初め。アメリカの女性雑誌「Ms」の編集者が作り出した造語と言われています。日本におけるセクハラ訴訟は、1989(平成元)年に起こされた民事裁判が最初と言われています。

この年は「セクシュアル・ハラスメント」という言葉が新語・流行語大賞で金賞をとるほど話題となりました。これ以降、少しずつ日本にセクハラという概念が定着し始めるようになりました。 1997(平成9)年には男女雇用機会均等法が改正され、「採用や昇進において、女性を差別してはならない」という、セクハラに対する規定が定められました。

2007(平成19)年になると、女性労働者に対してだけでなく、男性へのセクハラ規定が整備され、現在は男女双方の性による差別が禁止となっています。

2020(令和)2年にはさらに改定が実施され、職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・ 育児休業等に関するハラスメントの防止対策も強化されました。

まず、事業主は以下の措置を行わなければなりません。
・セクハラに対する方針等の明確化及びその周知・啓発。
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備。
・職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応。

次に、事業主は相談等をした労働者に対して不利益取扱いをしてはなりません。
第3に、自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合、他社から協力を求められた場合、これに応じるよう努めることになりました。以上のように、時代の変化とともに、セクハラに対する法改正も行われているのです。

厚生労働省の指針では、セクハラには2つのタイプがあると規定されています。

  • 対価型セクシュアル・ハラスメント

職務上の立場や地位を利用したセクハラ。

性的な関係を拒否した従業員に対し、不利益を負わせる行為を指します。
例)
・事業主や上司が部下に対して性的な関係を要求し、部下がそれを拒否したことで、異動や解雇をする
・教師が学生に対して性的関係を求める
・セクハラに対して抗議した社員を処罰する
・求職者の外見など、個人の性的嗜好を雇用や待遇に反映する

  • 環境型セクシュアル・ハラスメント

性的関係を求めるわけではないが、職場内で性的発言を行い、労働者を不快にさせる行為。

・異性がいる前で、性的な話題で盛り上がる
・「彼氏(彼女)いるの?」など恋愛経験を何度も聞く
・飲み会の席で男性に裸になるよう促す
・私生活に関する根も葉もない噂を流し、労働者を働きにくくする

自分では「なんでもないこと」「ただのコミュニケーション」と思っていても、相手は不快に感じているかもしれません。発言や態度を「嫌」と思った瞬間にセクハラとなるため注意が必要です。

セクハラはなぜ起こるのか?セクハラを引き起こす3つの理由

では、なぜ職場でセクハラが起こるのでしょうか?セクハラを職場に蔓延させないためにはその原因を理解しておくことが大切です。主な理由は以下になります。

その1.性に対する考え方に個人差があることを理解していない

20代の男性同士であったとしても、「女性との恋愛に積極的」な人と、「恋愛は面倒くさい」と思う人がいます。価値観は人それぞれです。これが男性と女性であれば、価値観の差が大きくなるのは火を見るよりも明らかです。さらに、50代の男性と20代の女性の性の価値観は違って当たり前と考えた方が良いでしょう。

しかし、会社内において、同じ経営理念を共有したり、売上目標達成に向けてプロジェクトを進めていたりと、同じ方向を向いて仕事をしていると、「性の価値観は人それぞれ」という当たり前の境界線があやふやになってくるのです。仕事とプライベートは全くの別という考えをしっかりともち、一人ひとりが業務に臨む意識を持つことが大切です。

その2.男尊女卑の考えがいまだに世の中に残っているから

価値観の話にも通じるところですが、いまだに「男尊女卑」の思想が残っている企業(人)は少なくありません。若い世代にとっては信じられない考えかもしれません。
しかし、「女性は結婚・出産で退職・休職するから重要なポストは任せられない」「同等の仕事をしていても、男性と女性で給与に差があるのは仕方ない」このような考えを持つ人が少なからず存在しているのが現状です。

また、経営者や上司だけでなく、「上司のお酒がなくなったらお酌をしないと」「多少のセクハラは笑顔でやり過ごすしかない」「今の会社はとりあえず結婚・出産まで」このように考えてしまっている社員がいるのも問題がなくならない原因です。

その3.職場における上下関係が持つ力を正しく認識していない。嫌々付き合ってくれている部下を自分のことが好きだと勘違いしている

「セクハラが嫌ならはっきりと言えばいい」「なぜ断らないんだ」と考える事業主や上司も多いのではないでしょうか?全くの正論ですが、「それができたら苦労しない」というのが部下の本音でしょう。正論だけを語り、部下の気持ちを考えられないのは管理職の能力不足といえます。

人間には「人には嫌われたくない」という本能があるものです。さらに、上司に嫌われるということは、その後の会社で出世に影響するかもしれないと部下が考えるのは自然の流れ。そのため、多少嫌なことであっても我慢するというセクハラの構図が出来上がってしまうのです。

誘われた側は「本当は行きたくないと思っていても、誘われたら行くしかない」誘った側が「あの子は誘えば必ず付いてくる。自分に気があるのかもしれない」こんな気持ちのすれ違いがセクハラの原因となるのです。

「最近は飲み会に誘っても『それは仕事ですか?』と断る新入社員が増えた」こんなニュースを聞いた時、「時代は変わった」「最近の若者はダメだな」などと少しでも思ってしまったあなたはセクハラ予備軍と言えますから注意が必要です。

セクハラを放置することのリスク

セクハラの横行を見て見ぬ振りをしていると、企業にはさまざまなリスクが発生します。

  • 職場環境・業績の悪化

セクハラを野放しにしておけば、当然職場の雰囲気は悪くなります。

目標や売上を達成するために社員が一丸とならねばいけないのに、社員の気持ちがバラバラでは良い結果は出ないでしょう。また、新入社員が入ってきたとしても、セクハラを受けていた(いる)先輩社員が「あの上司には気をつけなさい」と注意喚起をすれば、社内の空気はどんどん悪化してしまうでしょう。

  • 仕事に対するモチベーションの低下

セクハラが横行する職場でぜひ働きたいと思う人間は、限りなくゼロと言っても過言ではありません。セクハラは社員の仕事に対する前向きな気持ちを削ぐ行為です。

モチベーションが下がれば生産性の低下、ミスの頻発、商品・サービスの品質悪化、顧客満足度の低下などさまざまな悪影響を及ぼします。

この状況をさらに放置すれば、転職を考える社員やメンタルをやられてしまう社員が増え、人的資源の損失にもつながるでしょう。

  • 企業イメージの悪化

男女雇用機会均等法では企業に対し、セクハラに関する対策をするよう義務付けられています。もし、従業員のセクハラが強制わいせつ罪(刑法176条)に該当し、逮捕者が出た場合、企業イメージを損なう恐れがあります。

また、セクハラが民放709条の不法行為に該当し、損害賠償責任を負う事態に発展したら企業が同額の損害賠償責任を負うリスクもあります。

さらに、会社が安全配慮義務違反により、損害賠償責任を負うケースもあります。

雇用機会均等法条の行政指導、是正勧告に従わない場合は企業名を公表されるケースもあります。逮捕者が出ない、行政指導を免れたと思っても現在は従業員や離職者が会社の評価を書き込めるサイトも存在します。

このようなサイトで表向きには出てこない企業情報を集めている求職者は少なくありません。セクハラは「百害あって一利なし」と心得ましょう。

実際に起こったセクハラ事例

では、実際に起こったセクハラの事件を紹介します。

事例1.福岡の出版社で起きたセクハラ事件

【福岡地方裁判所 1992年 4月 16日】

  • 事件概要

原告は出版社の女性従業員。被告は原告の上司にあたる編集長。被告は社内外の関係者に対し、原告の異性関係が乱脈であるように非難し、女性の評価を低下させた。原告は会社で働くことができなくなり、退職した。

■判決

被告の行為は不法行為に当たると判示。会社は原告と被告の確執を認識しておきながら、原告が退職することで事態が収拾すれば良いと考えた。その判断した会社専務の行為も違法と認められた。福岡地方裁判所は被告および会社に対し、損害賠償165万円(うち、15万円は弁護士費用)の支払いを命じた。

事例2.沼津のホテル従業員の間で起きたセクハラ事件

【静岡地検沼津 1990年 12月 20日】

  • 事件概要

原告はホテルフロントの会計係。被告は原告の上司にあたる会計課長。

会計課長である被告は仕事終わり、原告の女性を食事に誘う。その帰り、車の中で「モーテルに行こうよ。裸を見せてよ」と執拗に迫った。原告はその誘いを明確に拒否したにもかかわらず、被告は原告の腰に触れ、キスを強要するなどの行為におよぶ。原告はその後体調を崩し、退職。被告に対し、慰謝料500万円、弁護士費用99万円を請求した。

■判決

被告の行為は性質、態様、手段、方法などの面において不法行為にあたると判断。被告が上司であるという地位・権限を用い、被告に迫ったこと、女性を、快楽・遊びの対象として考え原告を感情のある人間として捉えていなことが明らかであると判断。被告に対し、110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の支払いを命じた。

事例3.札幌の中古自動車販売店で起きたセクハラ事件

【札幌地裁 1996年 5月 16日】

  • 事件概要

原告は中古自動車販売会社に務める女性 被告は原告が働く会社の社長。被告は原告の勤務中、または勤務に準じる時間に事務所内において、原告に対し性交を迫った。期間は1カ月以上。その間原告に対し性的言動を繰り返す、抱きつく、被告の腕を掴み自宅に引き込みベッドに押し倒そうとするなどの行為に及んだ。原告はそれらの行為が原因で退職に追い込まれた。

■判決

原告は被告からのセクハラ被害を他の従業員に相談していた。被告の供述に不自然な点が多々ある。社長による性的嫌がらせにより、原告の性的自由を侵害。社長という地位を利用した行動により、原告は断ることができなかったなどの点が認められ、被告および会社に対し、それぞれ70万円の支払いを認容した。

いかがでしょうか?この他にも判例は多数あります。対岸の火事と思わず、セクハラ事件は自社でも十分に起こる可能性があるものとして事前の対策が重要です。

セクハラを発生させないための対策は?7つのポイント

最後に、セクハラを事前に防ぐための対策を紹介します。

ポイント1.セクハラに対する事業主の方針の決定

「セクハラは絶対にゆるさない!」という事業主の確固たる意志を決定し従業員に示すことが最も大切なポイントです。

ポイント2.セクハラに対する事業主の意志の周知

方針を決めてもそれが誰の目にも止まらなければ無いのと同じ。従業員一人ひとりに事業主の決意を知らせる必要があります。

ポイント3.セクハラ行為に対する処罰、セクハラ行為の放置に対する処罰を示す

セクハラ行為を行うことはもちろん、見て見ぬ振りも罪であることを示します

ポイント4.セクハラに対する相談窓口を整備

万が一、セクハラが起こった場合に相談できる窓口を準備します。自社内に設置するのはもちろん、外部機関に委託することも可能です。

ポイント5.セクハラの事実関係を迅速かつ適切に確認する体制、事実関係判明後に適切な対処が取れる体制を整備

本当にセクハラが起こったのか、その場合、どういったフローで対処をするのかを明確にしておきます。「セクハラが起きてから対処しよう」では遅すぎるのです。

ポイント6.セクハラの再発防止策を策定する

同じことが2度と起きないよう、セクハラが発生した反省を活かす体制づくりを整えます。

ポイント7.セクハラに関する不利益取り扱いの禁止を定める

セクハラを相談する者は大変心細く不安を感じています。相談をしたくてもできないのでは意味がありません。セクハラを相談したことによる降格処分や異動など、不利益行為は絶対にしない旨を定め、周知し相談しやすい環境を整えましょう。

このように、セクハラに対する対策は就業規則の整備に始まり、社内の体制づくり、研修の実施、セクハラ発生時のマニュアル作成など、多岐にわたります。
TOMAコンサルタンツでは、セクハラ対策の相談を総合的に受け付けています。「現状、セクハラが横行していて困っている」「今後のセクハラ対策を徹底したい」など、お困りの際はお気軽にご相談ください。

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