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医師偏在対策で変わる開業・承継のポイントを解説します

記事作成日2026/04/03

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2026年4月、改正医療法が施行され、診療所の開業・承継を取り巻く環境は大きく変化しました。都市部での新規開業は新たな手続きが求められる一方、医師が不足している地域では、手厚い支援策が設けられようとしています。今回は、開業や承継を検討されている先生に向けて押さえておきたいポイントを解説します。

医師偏在対策とは

多くの医師が都市部に集中しており、地方やへき地では医師不足が深刻化しています。この問題を是正するため、2025年12月に改正医療法が成立、2026年4月に施行されました。

改正医療法では、都市部などの医師が集中している地域を「外来医師過多区域」、必要な医師が確保できず人口減少を上回るペースで医療機関が減少している地域を「重点医師偏在対策支援区域」と設定しました。

これにより、都市部での開業に対して一定の制限を設け、地方やへき地での開業を促す仕組みが設けられました。外来医師過多区域の候補は国が、重点医師偏在対策支援区域の候補は厚生労働省がそれぞれ提示しています。

ご自身が開業を予定されている地域が該当しているかどうか、参考としてご覧ください。

出典 厚生労働省「医師偏在対策について

<外来医師過多区域の候補>

<重点医師偏在対策支援区域の候補>

出典 厚生労働省「医師偏在対策について

外来医師過多区域で開業する場合

安定した医院経営を行う上で、どれだけ来院患者を見込めるかは重要な視点です。では、外来医師過多区域で開業を考える場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。厚生労働省が提示している流れは、下記の通りです。

出典 厚生労働省「医師偏在対策について

医療法改正前は、診療所を開設するには開設届出を自治体に提出することが主な手続きでした。しかし改正後は、この届出に加えて、開業の6カ月前までに提供予定の医療機能等を記載した「地域外来医療の提供に関する意向等を示した事前届出」を都道府県に提出します。

そして、区域内で地域外来医療を提供しない意向を示すなど一定の要件に該当する場合は、都道府県から協議への参加を求められることがあります。

この協議では、地域外来医療を提供しない理由などの説明を行います。このように、診療所開設までにより時間を要することになります。もし、地域外来医療を提供する意向がないと回答した場合は、一定の場合を除き、保険医療機関としての指定期間の短縮措置などが取られる可能性があります。

また、継続して勧告に従わない場合は、医療機関名の公表や補助金の不交付などの措置が取られる可能性があります。

外来医師過多区域での開業が禁じられたわけではありませんが、従来と比べて手続きが増え、地域で不足する医療機能の提供が実質的に求められることになります。該当地域での開業を検討されている先生は、都道府県が公表する地域外来医療の要請内容を事前に確認し、開業計画に反映しておくとよいでしょう。

なお、医業承継による開業をした場合、どうなるのか気になる先生もいらっしゃるかと思います。個人診療所を承継する場合、前院長が廃業届を提出した後、新院長が開業届を提出することになりますので、新規開業に関する規制の対象となる可能性があります。

一方、医療法人を承継した場合は診療所の開設者が変わりませんので、規制の対象外となる可能性があります。もっとも、下記のような事例が起きた場合は、一時的に事前届出の猶予措置が設けられます。

<事前届出義務の猶予対象となる事例>

・親が開設していた診療所について親の死亡により子が急遽承継する場合
・予期せず前任の開設者が不在となり、事業承継が必要となった場合

ただし、現時点ではまだ明確な方針が示されていないため、承継を予定されている先生は事前に所管の自治体(保健所等)へ問い合わせることをおすすめします。

重点医師偏在対策支援区域で承継・新規開業する場合

区域内の医療機関や医師に対して検討されている支援は以下の通りです。

①承継、開業する診療所の施設整備、設備整備、一定期間の地域への定着に対する支援
②土日の代替医師確保等の医師の勤務、生活環境改善支援
③区域内の医療機関に医師を派遣する派遣元医療機関に対する支援
④医師への手当増額

①の支援については、既に自治体から概要が公表されているケースがあります。開業予定の地域が決まっている場合は、医療機関が所在する自治体のホームページを調べてみるとよいでしょう。

また、医師偏在対策は令和8年度税制改正にも盛り込まれています。一定の要件を満たす必要がありますが、診療所の用に供する不動産に係る登録免許税及び不動産取得税の軽減措置が設けられます。

まとめ

診療所の承継や新規開業は、先生にとって大きな決断です。医療法の改正により、開業地が経営に与える影響はより大きくなりました。

外来医師過多区域での開業には一定の制限が設けられる一方、重点医師偏在対策支援区域で開業する場合は、医療機器の整備や地域定着を目的とした補助金など、手厚い支援を受けられる可能性があります。

具体的な支援内容は今後も厚生労働省や各自治体から更新される見込みですので、開業や承継を控えている先生は最新情報を定期的に確認することをおすすめします。

TOMAには、最新情報に精通した専門家が多く在籍しています。複雑な制度改正により、開業や承継にお悩みでしたら、お気軽に無料相談・お問い合わせよりご連絡ください。