2022年を迎えても終息の気配を見せない新型コロナウイルス感染症。
多忙を極める医療機関もある一方、逆に受診控えなどの行動抑制により経営的に影響を受けている医療機関の方もいらっしゃると思います。そのような状況に対応すべく国から様々な補助金施策が打ち出されていますが、中でも中小企業庁による「事業再構築補助金」をご存知でしょうか?
一事業者あたりの補助金上限が8,000万円~一億円と規模が大きく、その名の通り、感染症拡大の影響で沈んだ事業を、ウィズコロナ・アフターコロナで勝ち残る事業へと再構築していくための補助金といえます。
採択までには比較的厳しい条件が設定されていますが、TOMAで医療分野の申請をサポートし、無事に採択された事例があります。今回のブログでは補助金の概要と共にTOМAでのサポート事例を紹介させていただきます。
今回の事例紹介は医療機関様へのサポート事例ですが、他業種の方にも参考になるブログですので、ぜひお読みください。
目次
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金とは、令和2年度第3次補正予算にて中小企業庁(経済産業省)により新設された補助金で、「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す企業・団体等の新たな挑戦を支援」し、日本経済の構造転換を図るものとして、幅広い経費が補助対象になっています。
医療分野では、個人事業主(個人開業医など)が対象になります(※)。
補助金の上限は諸条件によって変わりますが8,000万円から1億円が上限設定されており、補助対象となる経費も広いなど、類を見ないほど規模が大きく利用しやすい補助金となっています。
※医療法人につきましては、社会医療法人が収益事業を行う場合にのみ、対象となっています。ご注意ください。
「事業再構築補助金」の申請には、認定支援機関と策定した事業計画が必要になります。また補助金の審査は事業計画を基に行われ、採択されるためには合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。
採択された事業を紹介します
TOMAで医療分野(クリニック様)の申請をサポートし、無事に採択された事例について紹介させていただきます。
事業者:田園調布長田整形外科 様
2005年9月設立。東京都で整形外科・リハビリテーション科を展開。開院当初から既存の保険診療の枠にとらわれない様々な予防医療プログラムを実践されています。
※田園調布長田整形外科 WEBサイトより
採択された事業:「メディカルサポート事業・子供たちの視覚教育サポートの新規開業」
①メディカル/コンディショニングサポート事業
⇒視覚情報を競技力に活かすビジョントレーニングや、脳検査に基づく脳機能を含めたコンディショニングであるブレイン・コンディショニングを含め、エビデンスに基づいて痛みの原因を明らかにし改善するメディカルサポート事業
②子供たちの視覚教育サポート事業
⇒コロナ禍で利用が進むデジタルデバイスによる子供たちの視力低下を防ぎ、適切な視力を獲得するためのサポートを行う。視覚と身体の協調性までを含め、科学的根拠に基づいたサポートシステムを構築
整形外科分野であることから慢性疾患の患者さんが多く、コロナ禍において通院は不要不急の行動と考える傾向があることなどが影響して、医業収入が大きく減少していました。そこで、SWOT分析やヒアリングを重ね、これまで実施してきたヘルスケアプログラムや日本スポーツビジョン協会との連携体制などの強みを生かし、新規事業として上記2事業の計画をまとめました(以下、計画書に記載した事業全体のイメージ図です)
採択までの流れとTOМAのサポート
①月次税務顧問での情報提供 日頃のコミュニケーションが重要
田園調布長田整形外科様では、慢性疾患の患者さんが多く、コロナ禍において通院は不要不急の行動と考える傾向があることなどが影響して、医業収入が大きく減少していました。
コロナ禍以前より、もともと月次税務顧問としてお付き合いがあり、月次巡回時には数字の報告のみならず、コロナ禍を乗り切るための様々な情報提供を行っておりました。その一つとして事業再構築補助金について説明したところ、TOМAで採択のお手伝いをすることになりました。
★TOМAサポートのPOINT(1):月次顧問でのタイムリーな情報提供
院長は元々、補助金の存在をご存じではありませんでした。コロナ禍で患者さんを支えるクリニックの院長は診療に忙殺され、医療分野以外の情報を入手する機会が中々ありません。TOMAの月次顧問では、こうした補助金情報など有益な情報提供も重要な役割の一つとなります。
②幾度もの打ち合わせ 院長の熱い想いをヒアリング
事業再構築補助金の申請が採択されるためには、その内容が、審査していただく側の方々に響くものでなければなりません。また、申請に至るまでの現状や背景、新事業を始めることによる展望などの一連の記載も論理的な説得力が必要です。医院の現状から新事業の展望までを一つのストーリーとすることに重きを置いて、申請書の作成を進めました。
2021年2月に申請を進めることを決定してから、同年12月に採択されるまで、院長とは幾度も連絡を取り合い、2週間ごとにzoomでの打ち合わせを行いました。その中で、院長が感じているリアルな声や熱い想いをヒアリングさせていただきました。
その結果、事業再構築補助金の申請の動機として「医業収入の減少により経営が厳しくなっており、既存事業のみで経営を回復することは難しく、今後も地域住民に『真の健康』を提供するためには、新たな事業を始めることが必要不可欠である」という申請書の根幹となる考え方をまとめました。
★TOМAサポートのPOINT(2):充分なコミュニケーションと説得力のある事業計画作成サポート
院長とコミュニケーションを重ね、充分な情報収集を行いました。クリニックの現状や背景、事業の将来性などを踏まえた論理的でストーリー性のある事業計画が作成できたことが、今回の申請採択の大きな要因になったと思われます。
③冷静な分析 現実味かつ希望のある数字的根拠を算出
事業再構築補助金の申請が採択されるためには、熱い想いと同時に、冷静な分析も必要となります。また、目標数値は、あまりにも現実とかけ離れているものだと、採択されない可能性が高くなります。始めようとしている新たな事業の市場規模の把握や、市場利用者の増加率や収益性の向上、医院の周辺環境を調べ、学校などが多く、子供たちへのサポートにニーズがあり、将来性があることや、国や地域の政策との整合性など、多角的且つ冷静に分析しました。
今回申請をした田園調布長田整形外科様は、税務および人事・労務の月次顧問のお客様であったため、普段の医院の状況を踏まえた上で、事業にかかる全体の費用や、競合他社・既存事業との差別化、事業の実施体制、スケジュール、資金計画など、より現実味のある数値を算出することが出来ました。
★TOМAサポートのPOINT(3):各分野の専門家同士の連携による多角的な分析
人事労務分野の月次顧問サポートの中で得たクリニックの実情を踏まえ、経営コンサル部門と連携して多角的な視点から事業の将来性を分析。こうした様々な分野の専門家同士による連携はTOMAの強みのひとつです。
④申請書のブラッシュアップ 不備無く見やすい書類づくり
院長の想いはとても熱く、また事業再構築補助金の申請について大変前向きに取り組んでくださいました。本来は先生の想いをすべて申請書に記したいところですが、申請書のページ数には上限があるため、収まるように記載内容はポイントを絞りました。
また、そのうえで、文字ばかりにならないように、写真や図(図の作成も含めて)を添付して、より目を引く申請書になるよう推敲。内容がどんなに良いものであっても、審査をする方々に伝わらなくては意味がありません。申請書をまとめる上で最も苦心した部分でした。
⑤部門を超えた複数名・複数回の社内チェック
作成した申請書は、社内で3名の者がチェックをし、改善を重ねました。様々な部署・立場の人間が見ることで、より第三者に伝わり、響くものとなりました。
以上のような経緯で、田園調布長田整形外科様の事業再構築補助金の申請は無事採択されました。
第5回の公募開始が発表されました。お気軽にTOМAにご相談ください。
事業再構築補助金のホームページで、第5回の公募の開始が発表されました。公募期間は令和4年1月20日から3月24日で、申請の受付は2月中旬に開始予定となっております。また、令和3年度補正予算の概要では、第6回以降の公募について、「令和4年にさらに3回程度の公募を実施予定」とされています。なお、申請方法などの詳細は、下記の記事もご参照ください。
2022年最新情報!「事業再構築補助金」中小企業なら最大補助額1億円!概要・対象・条件・申請方法を解説
TOMA税理士法人は中小企業の支援機関として経済産業大臣が認定した「認定経営革新等支援機関」です。今回ご紹介した医療分野(クリニック、歯科、病院、製薬企業、薬局含む)の他にも、様々な業種の事業者様の申請・採択サポート実績がございます。(第1回~第3回公募の採択実績は合計で29件)。
申請に関する無料相談も実施していますので、事業再構築補助金の申請をお考えの方はお気軽にご相談ください。