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「医療DX推進体制整備加算」とは? 2025年4月からの変更点やその背景などを解説

記事作成日2025/05/15

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医療DX推進体制整備加算とは、医療機関がマイナ保険証や電子処方箋の導入などDXを推進する中で一定の条件を満たした場合にその旨を医療機関所在地管轄の地方厚生局に届け出ることで、初診患者さんの診療報酬に加算できるという制度です。

2024年(令和6年)に医療DX推進体制整備加算の制度が開始され、2025年(令和7年)4月に制度が見直されましたが、医療現場でのDX化は進んでいますでしょうか?

このブログでは、4月の変更点と、医療DX推進体制整備加算の留意点についてご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

医療DXとは

医療DXとは、医療の質向上と効率化を目的に、デジタル技術を活用して医療サービスを革新する取り組みです。高齢化社会における医療需要の増加や、医療従事者の負担軽減が求められる中、DXは医療現場における重要な課題となっています。

電子カルテの普及や遠隔医療の導入など、DX化は医療の現場に大きな変革をもたらしており、中でも電子処方箋は医療の質向上や患者と医療機関の利便性向上を図るため中心的な役割を果たしています。

出展:厚生労働省 医療DXの推進に関する工程表

医療DXにおいて重要な役割を果たす電子処方箋

電子処方箋は医療DXの中でも重要な役割を担っています。

紙の処方箋に代わり、電子的に処方情報を管理・伝達するシステムですが、これにより、処方情報の正確性が向上し、患者の利便性が高まります。

また、薬局でも処方情報の確認が迅速化され、医療の効率化に寄与します。電子処方箋は、医療機関と薬局間の情報共有を円滑にし、医療の質を向上させる重要なツールです。

以下、そのメリットとデメリットについて記載します

電子処方箋のメリット

・患者さんに関わるこれまでの処方情報・調剤情報がデータとして蓄積され、より正確な情報を元にアドバイス等を行えるようになる
・上記の情報を活用し、重複チェックが行えるようになる
・紙処方箋の保管が不要となり印刷コストがカットでき、紛失する心配がない
・統一のフォーマットでのやり取りをすることで確認等の負担が軽減される

電子処方箋のデメリット

・費用負担が大きい
・ソフトのインストールやPCの設定に時間がかかり、定期的なメンテナンスが必要
・同一患者が通っている医療機関全てが電子処方箋を取り入れていないと処方の重複チェックが正確にできない

出展:厚生労働省 医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し

医療DX推進体制整備加算の見直しについて

2025年(令和7年)4月からどう変わったのか

医療DX推進体制整備加算は、下記の2点を軸として見直されました。

  1. マイナ保険証利用率の実績要件を引き上げる。
  2. 電子処方箋の導入の有無に関する要件を具体化した上で、既に導入した医療機関において電子処方箋管理サービスに処方情報を登録する手間を評価する観点から、導入済みの医療機関と未導入の医療機関の間で加算点数に差を設ける。

出展:厚生労働省 医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し

2025年(令和7年)4月からの見直しでは、電子処方箋の発行体制整備に関する要件が強化されました。医療機関に対する支援もあり、導入促進が図られています。

見直されたポイント

ポイント① マイナ保険証利用率のさらなる引き上げ

1つ目の見直しポイントは、マイナ保険証利用率のさらなる引き上げです。

こちらは施設基準にもなっていて、利用率が15%以上でなければ医療DX推進体制整備加算の適用を受けることはできなくなりました。
※2024年(令和6年)10~12月は5%、2025年(令和7年)1~3月は10%以上でした

ポイント② 加算の点数 6種類に見直し

2つ目の見直しポイントは、これまで3種類だった加算点数が、以下の6種類になったことです

・医療DX推進体制整備加算1 これまでの点数+医科1点+歯科2点+調剤3点
・医療DX推進体制整備加算2 これまでの点数+医科1点+歯科2点+調剤2点 
・医療DX推進体制整備加算3 これまでの点数+医科2点+歯科2点+調剤2点
・医療DX推進体制整備加算4~6は新設となり、詳しくは上記図の「医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し」のとおりとなります。

加算1~3には施設基準に電子処方箋管理サービスに処方情報を登録できる体制を有していることとする要件が盛り込まれています。

電子処方箋を導入していない場合は加算4~6が該当することになります。

ポイント③ 施設基準の見直し

3つ目の見直しポイントは、電子処方箋についての施設基準の変更です。

・見直し前 電子処方箋を発行する体制を有していなくても、経過措置により2025年3月末までは電子処方箋の発行体制を有しているものとみなされていました。
・見直し後 加算1~3を算定する場合には、電子処方箋管理サービスに処方情報を登録できる体制(原則として院外処方を行う場合には電子処方箋又は引換番号が印字された紙の処方箋を発行すること)を有している必要があります。加算4~6を算定する場合には、電子処方箋要件はありません。

見直しに関する留意点

留意点①

・「電子処方箋管理サービスへ処方情報を登録できる体制」とは「電子処方箋を発行できる」か「紙の処方箋でも引換番号が印字されたものを発行できる」ことが必要です。

全てに共通することは「引換番号」が印字されているということです。

電子処方箋の仕組みは医療機関が患者の処方情報をサーバー(電子処方箋管理サービス)に登録し、調剤薬局が引換番号を使用して患者の処方情報を照会します。マイナンバーカードに処方情報が記録されているわけではありません。そのため引換番号が重要になってきます。

引換番号が発行できているということは処方情報を電子処方箋管理サービスに登録できているということになります。

万が一調剤薬局が電子処方箋に対応していないことも考えて紙を出力することも必要となっています。

出展:厚生労働省『電子処方箋及び紙の処方箋の取り扱いについて(医療機関)』

留意点②

・加算の具体的な計算方法

「マイナ保険証利用率45%」「施設基準を満たしている」「電子処方箋体制を有している」場合
 →医療DX推進体制整備加算1が適用される
 →初診の患者1人あたり、120円の診療報酬を請求できる

「マイナ保険証利用率45%」「施設基準を満たしている」「電子処方箋体制を有していない」場合
 →医療DX推進体制整備加算4が適用される
 →初診の患者1人あたり、100円の診療報酬を請求できる

このように加算点数が変わってくるため、電子処方箋管理サービスに処方情報を登録できる体制を有していることが重要です。

留意点③

・システムのセキュリティ対策

電子処方箋の導入に際しては、システムのセキュリティ対策が重要です。患者情報の漏洩を防ぐため、適切なアクセス管理やデータ暗号化が求められます。

また、医療従事者への教育やシステムの操作性向上も重要な課題です。さらに、患者への説明やサポート体制の整備も必要です。

留意点④

・新様式での届出の提出が必要

医療DX推進体制整備加算を利用する場合は、施設基準を満たしたのちに、医療機関所在地管轄の地方厚生局へ新様式で届出の提出が必要です。(病院は基本診療料の施設基準に係る届出書、薬局は特掲診療料の施設基準に係る届出書を提出)

※令和7年4月以降に加算1~3を算定する場合、新様式による届出直しが必要です。
※令和7年4月以降に加算4~6を算定する場合、新様式による届出直しは不要です。
※小児科で令和7年4月以降に加算3又は加算6を算定する場合、令和6年の延べ外来患者数のうち6歳未満の患者の割合が3割以上の保険医療機関は、マイナ保険証利用率が15%以上ではなく12%以上で算定でき、新様式による届出直しが必要となります。

留意点⑤

・施設基準を満たさない場合は令和7年4月1日以降施設基準を満たさない場合は、届出区分の変更や辞退届の提出が必要となります。

医療DXの今後について

今後、電子処方箋の普及が進むことで、医療の質と効率がさらに向上することが期待されます。政府や医療機関は、技術的な課題を克服し、全国的な普及を目指す必要があります。

また、患者の利便性を高めるため、システムのユーザビリティの向上や、患者への情報提供の充実が求められます。医療DXの進展により、医療現場はさらなる変革を遂げるでしょう。

加算の要件は今後も変更される可能性がありますので定期的に確認してください。

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