日本では、医療、介護、障害福祉サービスの対価、具体的には診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬が定期的に見直され、サービスの質の維持向上や適切な評価が求められています。これら3つが同時に改定される「トリプル改定」は、それぞれの分野で複数の課題を抱える医療機関や介護施設に大きな影響を与え、広い範囲での影響が予想されます。
本ブログでは、2024年度の診療報酬の改定内容についてまとめています。
2024年度 診療報酬改定について
2024年度の診療報酬改定は、従来の予定から2ヶ月遅れる6月に行われることになりました。これは医療DXの推進に伴う業務負荷を考慮した結果です。医療情報システムベンダにとっては、診療報酬改定に伴うシステム変更作業があるため、その負荷を緩和する意味があると思われます。
一方、薬価(薬の公定価格)の改定および介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定は従来通り4月に行われます。以前から薬剤費の高騰が問題視されていたため、薬価の引き下げは経済的負担の軽減につながることでしょう。
また、新たな厚生労働相として起用された武見敬三氏の下、2024年からは第8次医療計画が始まります。これには医療・介護費用の増加、DXの推進、働き方改革などの課題が含まれており、これからの社会保障分野の予算編成においては、それらの問題に対する解決策が求められることでしょう。
さらに、高齢者増に伴う医療費の増加や現役世代の減少、物価上昇などから来る医療従事者への賃金の抑制など、医療現場には多くの問題が山積みです。そのため、予算編成だけでなく、年金制度の改革や医療保険制度の見直し等、包括的な社会保障制度改革が求められています。
出典:厚生労働省HP 医療医療DXの推進に関する工程表について
改正点の検討ポイント
医療DXの推進
・医療情報プラットフォームはどのような現状とニーズを反映しているか
・診療報酬改定施行時期の後ろ倒しがもたらす影響
・電子処方箋の普及状況とそれに連動した改善点
・現在のサイバーセキュリティの水準と強化の必要性
・医療DXを通じた業務効率・生産性向上への具体的なアプローチ
医療計画
・三次救急医療機関、二次救急医療機関の対応や役割の改善
・災害医療体制の現状と必要な強化策
・へき地医療へのオンライン診療の活用について
・人口構造の変化を踏まえ、地域医療構想の取組と推進
働き方改革
・医療従事者のタスクシフト・シェアの推進手法
・時間外労働制限や健康確保措置の現状と見直し点
・AIやICTによる業務効率化策の詳細と実装方法
・診療報酬改定の対象となる範囲や効果の予測
外来医療
・かかりつけ医の機能強化の具体的な方法と効果
・生活習慣病管理の評価体系の改良点
・外来機能の分化の必要性と実行プラン
・オンライン診療の質と安全性をどう担保するか
入院医療
・急性期/高度急性期入院医療における課題と改善策
・回復期入院医療における役割と評価方法の再確認
・慢性期入院医療における課題と改善手法
在宅医療
・在宅医療の需要に合致した体制整備の具体的なプラン
・看護職員の働きやすさをどう向上させるか
・在宅歯科医療の提供体制の改善点
歯科
・医科歯科介護の連携をどう進めるか
・歯周病重症化予防や口腔機能管理、障害児者等の歯科診療推進
感染症対策
・新型コロナウイルス感染症を含む感染症対策の現状把握と評価
・薬剤耐性問題にどう対応するか
調剤
・医療機関と薬局の連携強化の進め方
・重複投薬、ポリファーマシー及び残薬への具体的な対策
小児周産期
・少子化進展に対応した医療体制や診療報酬改定の考え方
・メンタルヘルスも含めた周産期医療の提供体制の強化策
医療提供体制は「治す医療」から、「治し、支える医療」へ
医療制度の概念は「治す医療」から「治し、支える医療」への移行であり、「地域完結型」の医療・介護体制の構築が挙げられています。各病床は、急性期~回復期~慢性期を通じて、各フェーズに応じてその機能を果たし、各医療機関間での協力体制を構築することが必要であると述べています。
また、高齢者の入退院を逐一対応し、終末期医療を提供するためには、地域に根ざしたかかりつけ医の存在が不可欠で、その機能が強化されることも重要とされています。
2025年と2040年の人口動向を踏まえた上で、日本の医療・介護ニーズが著しく増大するとし、この問題に対応するために全国的に医療と介護の体制づくりが進められています。そして、2024年の診療報酬に向けた議論が進行中であり、そのための委員会や専門部会の活動も活発化しています。これは、新しい医療制度をより実現可能で効果的なものにするための一環と理解できます。
以上のことから、医療制度の改革の方向性とは、医療機関間での役割分担と連携を深め、地域密着型の医療提供体制を通じて高齢社会に対応することと言えます。
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