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各医療法人の事業報告書等のネット閲覧が可能に。そのメリット・デメリットを解説

記事作成日2023/04/25 最終更新日2023/04/29

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令和5年4月より、多くの都道府県ホームページ等から医療法人の事業報告書等の閲覧ができるようになっています。
医療法人の事業報告書の閲覧については、元々、医療法人運営の透明化の観点から各自治体の窓口で閲覧可能でしたが、デジタル化による事務負担の軽減の観点から、これらの情報をデータベース化しインターネットで閲覧することが可能になりました。

一方で、

自法人の経営情報が公開されてしまって大丈夫なのか?

とお考えの方もいらっしゃると思います。今回のブログでは、どういった情報がインターネットから閲覧できるのかの他、医療法人としてのメリット、デメリットの観点から確認していきます。

なぜ、医療法人の事業報告書が誰でも閲覧可能なのか?

医療法人運営状況の透明性の確保

医療法人は、地域医療の担い手としての役割を果たすよう、自主的な運営基盤の強化、医療の質の向上とともに、その運営の透明性の確保を図ることが医療法に定められています。

その公共性の観点から、安定・継続して地域医療を提供できるような医業経営を実現するため事業報告書等を各自治体に提出し、誰でも閲覧できるようになっています。

情報共有の効率化

今回、医療法人・都道府県、双方の事務負担軽減の目的で、これまでの紙媒体による届出がデジタル化され、また、インターネット閲覧が可能になりました。医療法人の情報取得にかかる移動の制限、時間の制限がなくなるなどデジタル化の効果が期待されます。

医療法人にとってのメリット・デメリット

メリット:インターネットから他法人の経営情報へアクセス可能

医療法人は決算終了後3ヶ月以内に決算届(事業報告書等)を都道府県に提出する義務があります。

提出された情報は都道府県の窓口で請求すれば以前から閲覧することができていましたが、今後は窓口に赴くこともなくインターネットから閲覧できるようになり、より手軽に情報にアクセスできるようになります。情報収集を効率的に行えることから、医療法人のより早い経営判断に役立てることができます。

●閲覧できる内容

事業報告書等とは、下記の書類をいいます。決算書の内容を簡略したものとイメージしてください。

・事業報告書
 名称、所在地、役員の情報、本来業務、付帯業務など医療法人の概要、
 事業の概要を確認できる書類

・貸借対照表、損益計算書、財産目録
 収入、利益、財産債務など決算書の概略を確認できる書類

・関係事業者との取引の状況に関する報告書
 MS法人や親族など関係事業者と行った取引を確認できる書類

・監事監査報告書
 事業報告書等が正しく示せていることを認める書類

●読み取れる情報

上記の書類からいろいろな情報が読み取れます。

・自法人と同エリアの医療法人はどのような経営状態なのか
・個々の医療法人の土地、建物は自己所有しているのか、賃貸しているのか
・財産状況からどの程度の利益を生み出せているのか 他

以前は国が公表する医療経済実態調査などの情報から全国平均情報等を得ることができていましたが、これにより、近隣エリアの気になる医療法人など特定の医療法人と自法人とを直接比較したり、今後の事業展開の参考とすることができます。

デメリット:自法人の経営情報も第三者に見られてしまう

デメリットとしては、多くの方が気にされる通り、自法人の経営情報が知らない誰かに見られてしまうという点があげられます。これは先述の通り医療行政の透明性・公共性の観点からある程度仕方ないとはいえ、気になる方もいらっしゃると思います。

ただ、決算届の提出は義務付けられているものの、提出する財務情報は大きな区分ごとの合計額となっており詳細の提出は求められていません

つまり、役員報酬がいくら、交際費がいくらといった勘定科目ごと1つ1つの金額までの提出は求められていないため医療法人の財務状況、経営スタンスなどの全てを見られるわけではありません。提出する内容は事前に確認できるので、よく確認してから提出しましょう。

今後の展開、政府方針

各都道府県への事業報告書等の提出は、紙媒体よる提出に代えてアップロード提出が可能となり、デジタル化とデータベース構築により医療法人と自治体、双方の事務負担の軽減が図られています。

データベースには全国規模の医療法人情報が蓄積され、国や都道府県において医療法人の経営実態の把握が可能となることで新たな補助金制度の創設、より適切な支援への活用が話し合われています。
その中で、現在義務付けられている内容よりさらに詳細な費用構成等の情報の提出が検討されています。

今後はより詳細な情報に触れることができる反面、先生の医療法人情報も多くの方に見られてしまいます。情報の開示についてご不安な面もあるとは思いますが、本制度を有効活用し今後の経営に上手に活用していきましょう。

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