11月に入り、間もなく冬の賞与を支給するという医療機関も多いかと思います。
この1年は新型コロナウイルス感染症に関する補助金やワクチン接種費など、例年とは違った収入があったかと思います。「今年の冬の賞与は例年と同様で良いのだろうか」と頭を悩ませている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のブログでは、賞与の算定方法に関する考え方をいくつかご紹介します。職員さんの頑張りに対してどう賞与で報いればよいのか、支給額を決める際のシミュレーションのご参考としていただければ幸いです。
基本給に基づく算定方法
まずは、多くのクリニックで取り入れられているベーシックな考え方です。
(基本給×〇ヶ月分) で支給額を計算
基本給などに対して、毎年決まった月数分の賞与を支給する方法。定額を支給する方法などになります。
業績連動に基づく算定方法
(基本給×〇ヶ月分) × 収入等の伸び率 で支給額を計算
こちらは、収入・利益の伸びを賞与に反映する方法です。今年度と前年度の数値を比較した伸び率計算では、本業の収入の他、新型コロナウイルス感染症に関連して得た補助金などもこちらに加えて計算されてはいかがでしょうか。収入・補助金の増加の裏には院長先生、職員の皆さんの数多くの身体的・精神的な負担があったことと思います。ベーシックな計算による賞与に加え、皆さんの頑張りで伸びた収入を同じ増加率で分け合う形です。
労働分配率に基づく算定方法
労働分配率 = 人件費 ÷ (収入 ー 収入に紐づく経費)
賞与支給額 = (収入 ー 収入に紐づく経費)× 労働分配率 -すでに計上している人件費
【計算例】
(例年の数値)
収入が1億円、薬品仕入・検査委託料が1,000万円、人件費が5,000万円
労働分配率=5,000万円÷(1億円 - 1,000万円)= 55.5%
(今年の数値)
収入が1.1億円、薬品仕入・検査委託料が3,000万円、今年計上している人件費が4,000万円
賞与支給額=(1.1億円 - 3,000万円)× 55.5% - 4,000万円 = 440万円
労働分配率とは、生み出した利益の何%を人件費へ割り振っているか(還元率)を表す指標のことで、還元率に着目して賞与支給額を計算する方法です。収入面の増加に加え、診療に紐づいて発生する医薬品の仕入れ、検査委託料などの支出面も反映する経営バランスを考慮した考え方です。例年の労働分配率を計算し、今年も同程度の割合で支給することで、これまでと同様の配分ができます。職員さんへしっかりと賞与で報いつつ、支給過剰による経営への圧迫も抑えることができます。
例えばPCR検査のように収入が大きく増加する一方で検査料として経費も同程度増加するケースでは、収入に連動する経費も考慮して賞与を計算することで、収入以上に経費が膨れ上がることを防ぎ、利益確保に貢献します。先行きが不透明な状況下では、還元のコントロールにより安定した経営を行うための道しるべとなり得る方法です。
この1年は新型コロナウイルス感染症対策で、例年以上に新たな業務、対応が必要となり様々な負担のなか経営されてきたことと思います。職員さんの努力に報い、この先もやる気をもって業務に励んでもらえるよう賞与支給額の算定方法についてご紹介致しました。
具体的な数値計算など、ご不明な点がございましたらお気軽にTOMAまでご相談ください。