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「年5日の年次有給休暇の確実な取得」に関する実務上の留意点

記事作成日2019/04/15 最終更新日2020/07/02

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この4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。
もちろん、クリニックも例外ではありません。
具体的にどのような対応が必要になるのか確認していきましょう。
 
対象となる従業員
年10日以上の年次有給休暇(以下、年休)が付与される従業員が対象となります。
クリニックではパート勤務者も多いかと思いますが、
パート勤務のように所定労働日数が少ない従業員についても、
勤続年数によっては年10日以上の年休が与えられるので注意が必要です。
 
年5日をカウントする期間
従業員ごとに「年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内」に、
5日の年休を取得させなければなりません。
「事業年度ごとに5日」ではない点に注意が必要です。
クリニックでは中途入社の職員さんが多いと思われます。
管理が複雑にならない工夫をしましょう。
 
年休を取得させる方法
従業員自ら年5日の年休を取得している場合には、
使用者から時期を指定して取得させる必要はありません。
 
従業員自ら取得する年休が年5日に満たない場合には、
使用者から従業員に「いつ年休を取得したいか」を聞き取り
従業員の意見を尊重して、使用者が年休取得時季を指定します。
これを「時季指定」といいます。
使用者から一方的に日付を指定するのではなく、
できる限り従業員の希望に沿った時季に取得できるよう努力が必要です。
 
時季指定を行う場合、就業規則に時季指定の対象となる労働者の範囲及び
時季指定の方法等について記載しなければなりません。
就業規則の届出義務がある場合(常時従業員10人以上)はご注意ください。
 
なお、年休は1日単位での取得が原則ですが、
従業員が希望すれば半日単位で与えることも可能です。
ただし、時間単位の年休は「年5日」の対象となりません。
 
「年次有給休暇管理簿」の作成
労働者ごとに年休の管理簿を作成し、3年間保存しなくてはなりません。
 
罰則の有無
年5日の年休を取得させなかった場合には、30万円以下の罰金が設けられています。
また、時季指定をしたにも関わらず従業員がそれに従わずに出勤し、
年5日に満たなくなった場合にもその責任は使用者に問われます。
時季指定をするだけでなく、実際に取得させるところまでの対応が必要となります。
 
具体的事例
最後に、クリニックで見られる年休の確実な取得の為の工夫をご紹介します。
 
・ミーティングの時に年休を希望する日を各自発表し、
 院長だけでなくスタッフ間でも年休取得日の情報を共有する
 
・カレンダーを張り出し、年休希望日を各自で書き込んで年休予定日を「見える化」する
 
・年度の初めに5日間の連続した年休取得日を決めてしまう。
 まとまった休みが取れるので、自己研鑽の為の時間に充てたり、
 効果的にリフレッシュできるといった効果もあり。
 
期限間近で慌てて年休を取得すると、クリニック運営に支障をきたす恐れもあります。
また院長だけで年休の状況を把握するのでなく、スタッフ間でも情報共有することで、
休みの間の業務引継ぎがスムーズに行えるなどのメリットもあります。
クリニック全体で協力して、計画的に働き方改革を推進していきましょう。