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公益法人の予算・決算対策|作成・提出すべき書類と会計処理の基本を解説

記事作成日2023/11/16 最終更新日2023/11/20

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公益法人を立ち上げたばかり、あるいは一般法人の公益法人化を目指している場合、予算策定や決算のノウハウを押さえておく必要があります。しかし、実際のところ「専門知識がないので不安を感じる」「必要書類やルールについて知りたい」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、公益法人の予算策定・決算で作成する書類のほか、行政庁への提出書類、公益法人のおもな収益科目や他会計振替などについて詳しく解説します。

なお、公益法人の概要については、以下の記事をご確認ください。
関連記事:社団・財団は公益法人化すべき?メリット・デメリットの両面を詳しく解説

公益法人の予算策定|作成すべき書類

事業計画書
公益法人が予算策定のために作成すべき書類は、以下の3種類です。

  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類

これらは公益法人の「定期提出書類(事業計画書等)」にも含まれているため、毎事業年度開始日の前日までに行政庁へ提出が必要です。

事業計画書

事業計画書とは、「どのような事業に取り組むのか」をまとめた書類のことです。事業内容、運営戦略、サービスの特徴、収益見込みなど、当該事業年度における事業と関連情報を明確に記載する必要があります。

公益法人は、公益目的事業の実施を主たる目的とする団体であるため、公益目的事業の内容は必ず記載しましょう。基本的に公益認定を受けた事業で構いませんが、それ以外の事業を行なう場合や、事業内容を変更する場合は、変更認定申請もしくは変更届出を別途提出しなければなりません。

この事業計画書をもとに、事業の立ち上げ・継続などに必要な資金を調達するため、法人運営の観点から考えても事業計画書は重要な書類といえるでしょう。

なお、公益法人の事業計画書は決まった様式がないので、法人任意のフォーマットを使って作成します。ほかの書類との整合性を取り、視認性や可読性を高めるフォーマットを選ぶとよいでしょう。

収支予算書

収支予算書とは、一年間の組織運営において必要な金額を計算し、「どの事業にいくらお金をかけられるのか」を明確化する書類です。

公益法人の場合、損益をベースにした予算を「公益目的事業会計」「収益事業等会計」「法人会計」の3つに区分して作成する必要があります。会計処理が複雑になりやすいため、公益法人会計や「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益認定法)」などの専門知識を有する人員に任せるとよいでしょう。

また、収支予算書を作成する際には、以下に挙げている「財務3基準」を遵守することも忘れてはいけません。

  • 収支相償

公益目的事業における収入が、事業の実施にかかる適正な費用を償う金額を超えてはならない。

  • 公益目的事業費率50%以上

事業費・管理費の合計額に対し、公益目的事業の費用比率が50%以上でなければならない。

  • 遊休財産保有制限

遊休財産の保有額が、1年分の公益目的事業費相当額を超えてはならない。

この財務3基準を遵守するためには、公益認定法を踏まえた書類整備や会計処理のノウハウが求められます。

資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類

資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類とは、その名のとおり、資金調達の予定(借り入れを含む)や設備投資の予定をまとめた書類です。それぞれの項目に対して「あり」「なし」のチェックを入れ、「あり」の場合は詳細も併せて記載します。

書類自体はシンプルなので、すぐに作成できます。しかし、資金調達と設備投資は財政状況に直結する重要な事柄であり、意見調整や意思決定に時間がかかりやすいため、早めに対応しましょう。

公益法人の決算|提出すべき書類  

損益計算書
公益法人は、不特定多数の人々の利益(公益)のために活動する民間の法人です。したがって、組織や事業の透明性・健全性を確保する観点から、定期的に事業計画や事業報告等に関する書類の提出・開示が求められます。

具体的には、前章で紹介した以下の書類を作成し、毎事業年度開始日の前日までに行政庁に提出する必要があります。

  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類

併せて、法人運営の基本情報を記した下記の書類も、毎事業年度経過後3ヵ月以内に行政庁に提出します。

  • 財産目録
  • 役員等名簿
  • 役員等の報酬等の支給の基準を記載した書類
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類

上記のような定期提出書類を漏れなく準備・作成し、遅滞なく提出するよう十分に注意しましょう。定期提出書類の様式は、「ポータルサイト(公益法人information)でダウンロードする」「行政庁の窓口でもらう」「郵送で送付を依頼する」のいずれかの方法で入手できます。

くわえて、これらの書類には保管義務がある点にも留意してください。主たる事務所では書類の原本を5年間、従たる事務所には書類の写しを3年間保存し、備え置く必要があります。
参考:定期提出書類の手引き 公益法人編|内閣府

公益法人における会計処理|おもな収益科目の計上ルール

公益法人の会計処理で以下のように配賦した場合、法人会計が黒字になるケースがあります。

  • 公益財団法人の会費収益
  • 寄附金収益
  • 補助金収益
  • 会費収益
  • 財産運用益
  • 公益目的事業に係る対価収益

黒字になったからといって、すぐに問題が生じることはありません。しかし、合理的な理由もなく多額の黒字が恒常化している状況は、収益獲得を目的としない公益法人のあり方として不適切です。

このような場合、行政庁から運営方法や体制について見直しを求められる可能性もあるため、注意が必要です。

そこで、公益法人におけるおもな収益科目と、その計上ルールについて解説します。

公益財団法人の会費収益

公益財団法人の場合、会員組織を設けて会員から会費を徴収しているケースがあります。

特に使途が定められていなければ、公益目的事業に100%計上することとなります。。一方、公益目的事業以外の使途が定められている場合は、その使用割合に沿って配賦します。

寄附金収益

寄附金収益はそれぞれの使途に沿って、各事業に配賦します。

公益目的事業だけに携わる公益法人の場合、寄付者より使途が指定されておらず、寄付金にかかる規程にそった合理的な範囲内であれば、管理費の不足相当分を法人会計に配賦することも可能です。

補助金収益

補助金収益は交付者によって定められた使途に沿って、各事業に配賦します。

会費収益

公益社団法人の会費収益は、徴収時にあらかじめ使途を定めていた場合、その内容に沿って配賦します。一方、使途を定めずに徴収した場合は、公益目的事業に50%計上することとなります。

財産運用益

財産運用益は、運用した財産の区分方法に沿って配賦します。

公益目的事業に係る対価収益

公益目的事業だけに携わる公益法人は、公益目的事業にかかわる対価収益の一部を、合理的な範囲で管理費の不足相当分として法人会計に配賦可能です。ただし、法人会計が収支均衡になるように配賦する必要があります。

公益法人における他会計振替の可否

他会計振替とは、利益の振替を会計区分間で行なうことです。他会計振替額は「公益法人会計基準の運用指針」において、「正味財産増減計算書内訳表に表示した収益事業等からの振替額」と定義されています。

公益法人は、以下のような他会計振替を行なうことが可能です。

  • 収益事業等会計から公益目的事業会計に利益の50%もしくは50%超の繰入れをする振替
  • 法人会計から公益目的事業会計への利益の振替
  • 収益事業等会計から法人会計への利益の振替

一方で、公益目的事業会計から収益事業等会計・法人会計への振替は認められていません。

なお、法人会計から公益目的事業会計への振替を行なう場合は、「公益法人認定法施行規則第26条第8号」で規定される定款・社員総会・評議員会のいずれかにおいて、公益目的事業のために使用または処分することを定めた額に当たる財産として振り替えます。

まとめ

公益法人の予算策定や決算を行なう場合、さまざまな書類を作成・提出する必要があります。記載内容はもちろん、求められる知識や提出のタイミングなども書類によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

また、公益法人の収益科目や計上ルールも一緒に押さえておくと、よりスムーズに対応できます。
公益法人の運営でお悩みを抱えているなら、ぜひTOMAコンサルタンツグループにご相談ください。経験豊富な専門家が多数在籍しており、書類作成や税務調査に関するアドバイスをワンストップで提供しています。