新公益法人制度とは、112年続いてきた1896年制定の民法に基づく旧公益法人制度が、
2008年12月に、一般法人法として抜本改正され、設立された制度です。
もともと公益法人とは、主務官庁の許可を得て設立される法人で、企業のように営利を目的としない
非営利法人でしたが、不祥事が相次いだことをきっかけに、公益法人制度そのものを見直すこととなりました。
新制度では、まず営利を目的としない「一般法人」を登記で設立可能とし、その中で公益性が認められる
法人を「公益法人」とすることとし、「公益法人」となれば、税制上の優遇措置等が受けられるといった
制度に大きく変わりました。
そのような制度が開始されてから、昨年12月で10年が経過し、先月内閣府より
「新公益法人制度10年を迎えての振り返り」報告書が公表されました。
その報告書内で
「公益認定の基準として、公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を
償う額を超えない(収支相償)と見込まれるものであること、また、事業活動を行うに当たり、
遊休財産額が一定の制限を超えないと見込まれるものであること、が規定されているところ、
制度の趣旨を損ねない範囲において運用の在り方等を検討するとともに、当該規律の趣旨等について、
周知徹底を行っていく必要性が高いのではないか。」
との問題意識が示されています。
公益法人協会、さわやか福祉財団、助成財団センターが連盟で昨年12月付に出した「公益法人制度改正
提言に関する報告書」によると、
「公益法人の基礎となる一般法人法による一般法人は、2018年 11 月 1 日には 69,700 法人に達したが、
2017 年 12 月 1 日現在の統計によると、うち公益認定をうけた法人は 639 法人にとどまり、改正前の民法
による公益法人 24,317 法人から公益認定を受けた 8,854 法人に加えても、全体として 9,493 法人に
とどまっている」
として、新制度では公益法人数が伸びていない点を指摘しています。
法人の運営においても、想定より順調に寄付が集まると、待ったをかける場合もあり、収支相償の原則が
活動の妨げになっていたり、遊休財産の保有制限も厳しく、新たな分野に乗り出す余裕が生まれない
という声もあるようです。
実際に公益法人協会が毎年実施しているアンケート調査でも、40%を超える法益法人が収支相償等の
いわゆる財務三基準(収支相償、公益目的事業費率、遊休財産額の保有制限)により事業展開に制限を
受けているという実情も判明しているようです。
旧制度時代に不正な資金流用をした法人があったことによって設けられたルールではありますが、
あまり制度の使い勝手が悪いのも困りものであり、公益法人の新設申請が伸び悩んでいるのでは
本末転倒かと思われます。
10年の節目を迎え、今後は公益増進のための制度改正がされることを期待したいと思います。
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