急速なテクノロジーの発展や、働き方の変化など一昔前と比較すると、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。
労働市場の流動化が進み、人材の定着が難しくなる中で、組織内に一体感を生み出す方法として注目されているのが『ビジョン』です。
今回は、ビジョンとは何か、混同しがちなミッション(経営理念)との違いから、ビジョンを作成する際のポイントまでを丁寧に解説します。
「未来志向ビジョン経営」セミナーのお知らせ/2023年11月28日(火)10:30~11:30
※【開催終了】たくさんのお申込みありがとうございました。次回開催日程が決まり次第お知らせします。
目次
ビジョンとは…会社の進むべき方向性、将来像を言語化したもの
ビジョンとは何でしょうか?
ビジョンとは、自社が数年先の未来において、どんな企業でありたいのか、何を成し遂げたいのかをまとめたものです。つまり、会社の進むべき方向性、将来像を言語化したものと言えるでしょう。
あるいは、ビジョンは社員一人ひとりが正しい方向へと進む道しるべのような存在と言い換えてもいいでしょう。
例えば、腕立て伏せをして筋トレをする場合、下記のような理想像を描くと思います。
「筋肉をつけて健康になりたい」
「スリムになって素敵なワンピースを着たい」
このように、数ヶ月後の自分の理想像を明確に描き、その姿に向けて具体的な努力の道筋を示す。これがビジョンの持つ役割です。
ビジョンは組織に一体感をもたらす
ビジョンによって【ゴールを決める】【ゴールにあるベネフィットを示す】ことで、社員に前向きな行動を促すことができます。
また、ゴールに向けて自分が何を頑張れば良いかが明確になることで、自身の成長を感じられたり、少しずつゴールが近づいていく達成感=働きがいを得られるでしょう。
そして、同じゴールを目指す仲間が周りにいるという事実が、社内のやる気や士気の向上や一体感の醸成につながります。
ビジョンとミッションの違い
ビジョンとよく混同されるのがミッションです。
ビジョンは、〇年後に実現したい姿(Where:どこにいくのか)
ミッションは、我々は何者で・何をなすべきか(What:何をなすべきか)
簡単に、ケーキ屋さんで例えると、
ビジョンは、食べた人を笑顔にするオンリーワンのケーキを提供するお店になること。
ミッションは、食材と製法にこだわる一流のケーキ屋として最高の味と感動を提供すること。
なぜ、現代の企業にビジョンが必要なのか?
ビジョンを作成する企業が増えている背景には以下の2つの要因があります。
ビジネス環境の急速な変化
私たちの生活やビジネスをとりまく環境は、AIをはじめとするデジタルテクノロジーの進化、市場や社会課題、働き方の変化など、急速に変化を続けています。
テレワークを導入する企業が増えたのは顕著な例の一つです。
かつては毎日同じ時間に同じメンバーが会社に集い、同じ目的を目指して業務に取り組んでいましたが、テレワークの普及は社員同士の関係を希薄にする傾向があります。
会社が目指す共通の方向性(ビジョン)がないと、社員の気持ちが会社から離れる可能性が高くなります。これは会社とのエンゲージメントの低下に繋がります。
複雑で変化の速い時代だからこそ、会社経営の指針となるビジョンが求められています。
労働市場の流動化と働き手の価値観の多様化
近年は労働市場が流動化しており、人材の定着が以前よりもむずかしい状況にあります。
働き手が企業に求めることも多様化する現況において、「自社で働く意義・会社が向かう方向性」を端的に伝える手段としてビジョンは大変有効です。
会社と個人の関係が希薄になりがちな時代において、ビジョンは企業と個人をマッチングさせる働きがあります。
ビジョン作成によって得られる5つのメリット
ビジョンが求められる背景は、時代の流れだけではありません。
作成によって、さまざまなメリットが得られます。
メリット1:経営者自身や事業の「軸」が定まる
ビジョンは将来(例えば5年後や10年後)の自社の姿を描くもの。
経営者自身がぼんやりとしていることの多い、経営の「軸」をしっかりと定めることができます。
メリット2:社内で危機感を共有することができる
社員一人ひとりが会社の未来を自分事として捉え、『理想に向かって変わっていきたい』『このままではいけない』という危機感を育みます。
メリット3:社内外に向けて会社の方針をシンプルに伝えることができる
ビジョンは社内だけでなく、社外へアピールすることで自社のブランド力向上にも寄与します。顧客や金融機関、求職者といった社外の関係者へも自社の方針を伝えることに役立ちます。
メリット4:社内外に向けて成長を続ける企業であることをアピールすることができる
ビジョンで将来の姿を明確にし、ビジョンに向けた取り組みの実施状況について社内外に発信することで、成長を続ける企業として期待してもらうことができます。また、『成長を続けるんだ』という意識が社内に広がることで、社外の取引先などにも想いが伝播します。
メリット5:ビジョンに共感する人や会社に選ばれる企業になる
ビジョンを社内外に発信することで、ビジョンに共感する人材が採用できたり、取引先との関係が強くなったりする可能性があります。
ビジョンを作成する際のポイント
ビジョンは闇雲に作成しても良いものはできません。
それどころか、経営者の想いだけを一方的に押し付けるようなビジョンになってしまうと、社員の気持ちがバラバラになってしまうリスクを孕んでいます。
そのため、ビジョンは適切に作成することが重要です。
ビジョンは社員を巻き込んで作成する
ビジョンは経営者や経営層だけで決めるのではなく、社員と共に作り上げることで社員と会社とのエンゲージメントを高めることに役立ちます。
役職や部署が混在した何人かのグループに分かれてディスカッションを通して幅広い意見を収集します。
この作業を通して社員に『将来に対する会社の危機感を共有する』ことができ、『社員に共感される』ビジョンを作ることができます。
トップダウンとボトムアップのバランスに配慮する
集約した意見を取りまとめる際には、経営層と社員の意見をバランスよく取り入れることが大切です。
【トップダウンが強すぎる場合】
・社員がビジョンに愛着を持てない
・やらされ感をもってしまう
・浸透しづらい
【ボトムアップばかりの場合】
・特定の目線に偏ったビジョンになる
・経営者の想いや経営方針に合致しないものになる
・経営者の想い入れがないものになる
共感された理想と現実のギャップから「危機意識」が生まれる
社員一人ひとりが納得できるビジョンが生まれると、組織の中の目指す理想と現実の状況を正しく認識することができ、「危機意識」を養うことができます。
これは、社員が掲げた理想像=ビジョンに向かって「変わっていかなければならない、成長しなければならない」という組織を発展させる良い意味での『危機感』です。
ビジョン経営で更なる高みを目指す!
ビジョン経営とは、ビジョンを軸に経営を行うことです。
ビジョン経営は以下のステップで進めていきます。
ステップ①:ビジョンの共有
全社員がビジョンの内容を正しく理解し、ビジョンを元に行動ができるよう共有・浸透している状態。
ビジョンの共有・浸透を図るために説明会を開催したり、事業場に張り出すなど、日常にビジョンが常にある、社員が意識できる状態を作りましょう。
ステップ②:ビジョンの実践
ビジョン実現のための行動基準や仕事の仕組みが整えられていて、理想像へ近づくために行動し、成果を出すことが日常となっている状態です。
プロジェクトチームを結成したり、幹部自らが主導となって社員に働きかけたりするのもビジョンの実践に有効です。
また、ある程度ビジョンが浸透してきたら、ビジョン実現のためのアイデアを募ったり、ビジョンについて社員同士で真剣に考える機会を作るのも良いでしょう。
ステップ③:ビジョンの顕在化
実践を通じて成果が上がり、誰の目にもビジョン実現を目指している企業として社内外で認知されている状態。
ビジョン実現に向けて行動し、成果を出した社員はその活動内容を社内報や社内掲示板(イントラネット)などで発表・表彰するなど、情報を共有していくことも大切です。
会社がビジョンに対して本気で取り組んでいる姿勢を積極的に見せていくと良いでしょう。
ビジョンの作成に困ったらTOMAがサポートします!
自社でビジョンを作成するのももちろん良いですが、途中でつまずいてしまうことも少なくないようです。
そもそも、ビジョンを作成すること自体が初めてであるケースが多いため、主導する人材がいなかったり、関係者を巻き込むことができないこともあります。
また、参加者の意見をうまく引き出したり、掘り下げることができずにありきたりなビジョンになってしまうケースも多いです。
ワンマン経営の傾向が強い場合、上長の機嫌を伺う意見ばかりが出てボトムアップがうまくいかないこともあります。
TOMAのビジョン作成コンサルティングでは、ビジョンの作成経験豊富なコンサルタントがファシリテーターとなり、作成をサポートします。
また、社員一人ひとりの会社への意見や思いを抽出するワークシートや、課題抽出のためのワークフローも充実しているのもポイントです。
些細な質問でも構いませんので、ビジョン作成を前向きに検討する際にはこちらからご相談ください。
また、TOMAでは定期的に人材開発・組織開発に関するメールマガジンを配信しております。こちらもぜひご登録ください。
「未来志向ビジョン経営」セミナーのお知らせ/2023年11月28日(火)10:30~11:30
※【開催終了】たくさんのお申込みありがとうございました。次回開催日程が決まり次第お知らせします。
著者情報
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役 人材開発コンサルタント
市丸 純子
2013年TOMAコンサルタンツグループ入社。現在はグループ内の長期ビジョン実現に向けた特別プロジェクトのマネージャーを務め、自社内の組織開発・人材開発に携わる。また、その経験を活かし、「100年企業を創る」をモットーに、多くの中小企業に向けて人材開発コンサルティングを提供している。