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経営力向上計画とは?概要から手続きまでを解説!

記事作成日2023/08/09 最終更新日2023/09/07

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経営力向上計画という名前は知っていても、経営力向上計画を利用するには何をしたら良いのかよく分からない、そもそも経営力向上計画とは一体何か、と思われる方は多いのではないでしょうか。今回は概要から手続き方法までを解説いたします。

経営力向上計画について

1.制度の概要

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。
経営力向上計画
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

2.制度利用ポイント

★POINT1 申請書様式は3枚程度
①企業の概要、②現状認識、③経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容、⑤事業承継等の時期及び内容(事業承継等を行う場合に限ります。)など簡単な計画等を策定することにより、認定を受けることができます。

★POINT2 計画策定をサポート
認定経営革新等支援機関(商工会議所・商工会・中央会や士業、地域金融機関等)に計画策定の支援を受けることができます。また、ローカルベンチマークなどの経営診断ツールにより、計画策定ができるようにしています。

★POINT3 計画実行のための3種類の支援措置
税制措置:認定計画に基づき取得した一定の設備や不動産について、法人税や不動産取得税等の特例措置を受けることができます。

金融支援:政策金融機関の融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることができます。

法的支援:業法上の許認可の承継の特例、組合の発起人数に関する特例、事業譲渡の際の免責的債務引受に関する特例措置を受けることができます。

3.制度活用の流れ

① 制度の活用を検討/事前確認・準備

税制措置を受けたい場合:
・適用対象者の要件(資本金1億円以下など)や手続き等を確認してください。
・設備投資について税制措置を受けるためには、計画申請時に工業会証明書や経産局確認書等が必要です。
・事業承継等に伴う準備金の積立や登録免許税・不動産取得税の軽減については、対象となる事業承継等の条件や手続きについて確認してください。

法的支援を受けたい場合:
・承継が認められる許認可の種類その他の特例の条件や、必要な手続きを確認してください。
※許認可承継の特例を受ける場合、認定までの間に相当程度長い期間を要する場合があります。事前に所管行政庁にご相談ください。

金融支援を受けたい場合:
・適用対象者の要件や手続き等を確認してください。
・金融支援を受けるためには、計画申請前に関係機関にご相談頂く必要があります。

② 経営力向上計画の策定

1)「日本標準産業分類」で、該当する事業分野を確認
※計画書に記載する必要がありますので、下記サイトで自社の事業分野を検索してご確認ください。
>>自社の事業分野検索はこちらから

2)事業分野に対応する事業分野別指針を確認
・「事業分野別指針」が策定されている事業分野(業種)については、当該指針を踏まえ
て策定いただく必要があります(策定されていない事業分野は「基本方針」)。
・「事業分野別指針」「基本方針」は以下のURLからダウンロードできます。
>>こちらからダウンロード

3)事業分野別指針(または基本方針)を踏まえて経営力向上計画の策定

③ 経営力向上計画の申請・認定

1)各事業分野の主務大臣に計画申請書(必要書類を添付)を提出
不動産取得税の軽減措置を受ける場合は都道府県経由での提出

2)認定を受けた場合、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。
申請受理から認定まで約30日かかります。(所管する省庁が単一である場合。複数省庁にまたがる場合は約45日)。

また、不動産取得税の軽減措置又は許認可承継の特例を利用される場合は、上記の日数に加えて、関係行政機関における評価・判断に日数が必要となります。
※経営力向上計画申請プラットフォームにて電子申請した場合(経済産業部局宛のみの申請に限る)、申請受理から認定までは約14日かかります。

申請書に不備がある場合は、各事業所管大臣からの照会や申請の差戻しが発生し、申請から認定までの期間が上記の日数を超える場合がありますので、必ず余裕を持った申請をお願いします!

④ 経営力向上計画の開始、取組の実行

税制措置、金融支援・法的支援を受け、経営力向上のための取組を実行

4.特定事業者等の範囲

認定を受けられる「特定事業者等」の規模(中小企業等経営強化法第2条第6項目)
特定事業者等の範囲

「特定事業者等」に該当する法人形態について
① 個人事業主
② 会社(会社法上の会社(有限会社を含む。)及び士業法人)
③ 企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商工組合(「工業組合」「商業組合」を含む。)、商工組合連合会(「工業組合連合会」「商業組合連合会」を含む。)、商店街振興組合、商店街振興組合連合会
④ 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合
⑤ 一般社団法人
⑥ 医業を主たる事業とする法人
⑦ 歯科医業を主たる事業とする法人
⑧ 社会福祉法人
⑨ 特定非営利活動法人

※①、②、⑥~⑨については、常時使用する従業員数が2000人以下である必要があります。④、⑤については、構成員の一定割合が特定事業者であることが必要です。
※①個人事業主の場合は開業届が提出されていること、法人(②~⑨)の場合は法人設立登記がされていることが必要です。

5.支援内容「中小企業経営強化税制」

中小企業等が指定期間内に認定を受けた経営力向上計画に基づき、「一定の設備」を新規取得等した場合、法人税(※1)について、即時償却又は取得価額の10%(※2)の税額控除を選択適用できます。
※1 個人事業主の場合には所得税
※2 資本金3000万超1億円以下の法人は7%

指定期間:平成29年4月1日から令和7年3月31日まで
中小企業経営強化税制
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

適用手続き

ここでは、中小企業経営強化税制の手続きについてご説明します。手続きの内容は各類型によって異なりますので、必要な手続きをご確認ください。

1.A類型:生産性向上設備

生産性向上設備の要件
図1の対象設備のうち、次の2つの要件を満たすものであること

①一定期間内に販売されたモデル(最新モデルである必要はありません)
②経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと
比較して年平均1%以上向上している設備(ソフトウェアについては、情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの)

なお、上記の要件について工業会等から証明書を取得する必要があります。

図1 A類型の対象設備
A類型の対象設備
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

適用手続き
適用手続きの流れは以下のようになっています。

図2 A類型の手続き
A類型の手続き
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

設備ユーザー(中小事業者等)は、当該設備を生産した設備メーカー等に証明書の発行を依頼します。依頼を受けた設備メーカー等は、工業会等の確認を受けて証明書を発行し、設備ユーザーに転送します(図2①~④)。

証明書を受け取った設備ユーザーは、証明書の写しを添付した計画申請書及びその写しを主務大臣に提出し認定を受け、主務大臣は計画認定書と計画申請書の写しを交付します(図2⑤~⑥)。

認定を受けた設備等については、税法上の他の要件を満たす場合には、税務申告において税制上の優遇措置の適用を受けることができます。適用を受けるときは、税務申告の際に工業会証明書、計画申請書及び計画認定書(いずれも写し)の添付が必要になります。

2.B類型・D類型

各類型の要件
①B類型:収益力強化設備
図3の対象設備のうち、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれることにつき、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備であること。

図3 B類型・D類型の対象設備
B類型・D類型の対象設備
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き

②D類型:経営資源集約化に資する設備
図3の対象設備のうち、経営力向上計画に事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものであって、経営力向上計画に従って事業承継等を行った後に取得又は制作若しくは建設をするもので、次の要件を満たすもの。

【要件】
計画終了年次の修正ROA又は有形固定資産回転率が下記の図4の表の要件を満たすことが見込まれるものであることにつき、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備であること。

図4 D類型の要件
D類型の要件
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き

なお、上記のいずれの要件についても、経済産業局から確認書を取得する必要があります。

計算について
要件に使用する数値の算定方法は次の通りです。

①B類型
年平均の投資利益率は、次の算式により算定します。

図5 B類型の算定方法
B類型の算定方法
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き

②D類型
目標値となる修正ROA又は有形固定資産回転率は、次の算式により算定します。

図6 D類型の算定方法
D類型の算定方法
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き

適用手続き
適用手続きの流れは、以下の通りです。

図7 B類型・D類型の手続き
B類型・D類型の手続き
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

中小事業者等は、必要事項を記入した申請書に必要書類を添付し、公認会計士又は税理士の事前確認を受け「事前確認書」の交付を受けます(図7①~②)。

必要に応じて修正等を行った申請書に事前確認書を添付の上、本社所在地を管轄する経済産業局に予約をして持参し、説明します。説明から概ね1ヶ月以内に経済産業局が確認書を発行します(図7③~④)。

確認を受けた後、申請者は計画申請書とその写し、確認書及び確認申請書の写しを主務大臣に申請し、計画認定書と計画申請書の写しの交付を受けます(図7⑤~⑥)。

認定を受けたものについて税制上の優遇措置を適用する場合には、申告の際に申請書及び認定書の写しの添付が必要です。また、計画認定後、B類型の場合は投資計画に関する実施状況報告書を、D類型の場合は事業の承継報告及び事業承継に関する状況報告を決められた期間提出する必要があります。

3.C類型:デジタル化設備

【要件】
図8の対象設備のうち、事業プロセスの①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかを可能にする設備として、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備であること。

なお、この要件について、経済産業局から確認書を取得する必要があります。

図8 C類型の要件
C類型の要件
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

①遠隔操作とは
1)デジタル技術を用いて遠隔操作をすること
2)以下のいずれかを目的とすること
A)事業を非対面で行うことができるようにすること
B)事業に従事する者が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにすること

②可視化とは
1)データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと
2)1)のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること
3)1)により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化を行うことができるようにすること

③自動制御化とは
1)デジタル技術を用いて、技術に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること
2)1)の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等を最適化するためのものであること

適用手続き
C類型の手続きの流れは、以下の通りです。

図9 C類型の手続き
C類型の手続き
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

必要事項を記入した申請書に裏付けとなる資料等の必要書類を添付の上、認定経営革新等支援機関の事前確認を受けると、「事前確認書」が発行されます(図9①~②)。

必要に応じて修正等をした申請書に事前確認書類を添付し、事前連絡をした上で、本社所在地を管轄する経済産業局に申請書二部・必要添付書類二部・事前確認書二部を一式として郵送します(図9③)。なお、確認書発行に対し、返信用封筒が必要です。

経済産業局は、郵送の受取から概ね1ヶ月以内に確認書を発行し、申請書及び必要添付書類を添付して返送します(図9④)。

確認後、申請者は当該設備について計画申請書及びその写しに確認書及び確認申請書の写しを添付して主務大臣に申請し、計画認定書と計画申請書の写しの交付を受けます(図9⑤~⑥)。

4.申請に必要な書類

経営力向上計画の申請に必要な書類は、申請書の原本です。都道府県に提出する場合は申請書の写しも必要になります。また、郵送で申請する場合には、上記に加えチェックシートと返信用封筒(A4の認定書を折らずに返送可能なもの)も用意しましょう。

事業分野ごとの申請先は、中小企業庁ホームページでご確認いただけます。

設備投資について税制措置を受ける場合には、以下の書類が必要になります。
①中小企業経営強化税制A類型の税制措置
・工業化等による証明書(写し)

② 中小企業経営強化税制B~D類型の税制措置
・投資計画の確認申請書(写し)
・経済産業局の確認書(写し)

また、取得した資産が発電設備等である場合には、「発電設備等の概要等に関する報告書」の添付が必要です。必要書類の様式や記載例は、下記中小企業庁のホームページ(中小企業庁 経営力向上計画の申請について)でご確認いただけます。

5.電子申請

令和2年4月より、経営力向上計画の申請が電子で行えるようになりました。電子申請ができるものは、経済産業部局や一部省庁(警視庁、金融庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省及び環境省)宛ての申請に限られます。また、経済産業部局宛のみの申請については、令和4年4月から電子申請のみ対応となっています。

電子申請は「経営力向上計画申請プラットフォーム」で申請できます。プラットフォームの利用にはGビズIDのプライムアカウントが必要になるので、事前にアカウントをご用意してください。

図10 電子申請
電子申請
出典:中小企業庁『経営力向上計画の申請をお考えのみなさまへ

設備の取得時期

設備の取得時期についてご説明します。

原則と特例

経営力向上設備等の取得時期は、経営力向上計画の認定後の取得が原則です。

図11 取得時期の原則
取得時期の原則
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

なお、例外として設備取得後に経営力向上計画を申請することもできます。この場合には、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。

図12 取得時期の例外
取得時期の例外
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

ただし、適用を受けるためには取得した事業年度内に認定を受けなければならないため、取得から認定までの日程に注意が必要です。

柔軟な取扱い

現行の申請では、事前にA類型は工業会証明書、B・C類型は経産局確認書を取得することが原則となっています。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化等、経営力向上計画の認定を迅速化する観点から、令和3年8月2日以降の経営力向上計画の申請において、工業会証明書(A類型)、経産局確認書(B・C類型)の申請手続きと同時並行で、計画認定に係る審査を行うことを可能とする特例が講じられました。

設備の取得時期ごとの適用のイメージは図13の通りです。

図13 柔軟な取扱い
柔軟な取扱い
出典:中小企業庁『中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き

この取扱いには、以下の注意点があります。

・工業会証明書、経産局確認書の申請は、経営力向上計画の申請より前に行う必要があります。
・経営力向上計画の認定までの標準処理期間(30日)について、工業会証明書、産業局認定書がないため認定業務を実施できない場合は、申請の補正を要する期間として標準処理期間に含まないこととします。
・工業会証明書を添付せず申請書を提出した場合で、決算期が近づいているときは、証明書の提出忘れがないがご自身での管理が必要です。また、工業会証明書のみを提出する際は、事前に申請先に電話等で連絡するようにしましょう。

まとめ

経営力向上計画を利用してみたい、計画策定のサポートを依頼したい等ございましたら、TOMA税理士法人までご相談ください。初回のご相談は無料で承ります。お気軽にお問い合わせください。

監修 TOMA税理士法人
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 法人経営支援部

書類作成や申告業務などの税務・会計業務はもちろん、そこから見えてくる課題をわかりやすくご説明し、改善策をご提案します。企業の規模・業種を問わず、最適なサービスを提供いたします。

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