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目指せ100億円企業!経営計画の立て方と実行力を高めるためのポイントを解説

記事作成日2025/07/04

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今「100億企業」というワードが注目を集めています。これは、政府が日本経済全体の底上げを図るために掲げた成長戦略の重要なテーマのひとつであり、今後、成長意欲のある中小企業を支援するための施策がさらに打ち出されていく見込みです。

こうした追い風を受け、中小企業であっても確かな経営計画と実行力があれば、大きな成長を実現できる可能性が広がりつつあります。

今回は中小企業が「100億企業」を目指す意義をはじめ、経営計画の立て方や実行力を高めるためのポイント、さらには活用可能な税制優遇や補助金の紹介など、企業の成長を後押しするための具体策を解説していきます。

中小企業が100億企業を目指す意義

政府が「100億企業」を重要な経済戦略のテーマとして掲げる背景には、地域経済の活性化、雇用の創出、そして日本経済全体の持続的な成長への貢献という明確な目的があります。

100億企業を目指すことは、組織基盤の強化、経営戦略の再構築、そして社員の意識改革を通じて、企業全体の成長力を高める絶好の機会となり得ます。それを実現させるために、まず経営者が実施すべきことは明確な意思表示である「100億宣言」です。

「100億宣言」とは

中小企業が飛躍的成長を遂げるために「売上高100億円」という野心的な目標を目指し、実現に向けた取り組みを行っていくことを経営者が宣言するものです。

〈宣言のメリット〉
■宣言取得による補助金等の活用
・成長加速化補助金【3月~】
・経営強化税制の拡充措置【今夏~】
→税制優遇・補助金については後述。

■経営者ネットワークへの参加【今夏~】
宣言を行った成長を目指す経営者が、地域・業種を超えてつながれるネットワークを構築。

■宣言公式ロゴマーク活用による自社PR

■100億企業成長ポータルへの掲載

〈宣言内容〉
➀ 企業概要(足下の売上高、従業員数等)
➁ 売上高100億円実現の目標と課題(売上高成長目標、期間、プロセス等)
➂ 売上高100億円実現に向けた具体的措置(生産体制増強、海外展開、M&A等)

➃ 実施体制
➄ 経営者のコミットメント(経営者メッセージ)

この5つの宣言内容のうち、重要なのは②③④になります。

100億企業実現の鍵は経営計画!~策定から実行のポイント~

「100億企業」の実現には土台となる「経営計画書」が重要になります。経営計画書は単なる数値目標ではなく、会社の未来を描き、全社員が同じ方向を向いて動くための設計図です。以下は策定ポイントと注意点です。

経営計画書の策定ポイント

〈ビジョン・目標・意思統一〉
➀企業の方向性を明確にする
➁売上・利益の目標設定と達成の指針を示す
➂幹部・従業員の意思統一、役割明確化

〈具体的な戦略の立案〉
➃資金計画と財務戦略の立案
➄経営リスクの把握と対策
➅成長戦略と投資計画の策定

〈実行⇔改善の仕組みづくり〉
➆PDCAサイクルの要として策定

ビジョンを共有するだけでは動けず、仕組みだけでは進めません。ビジョンとPDCAによる仕組みづくり、この両輪が揃ってこそ、戦略は実行に移され、成果につながります。

注意点

「経営計画書策定」の間違った考え方

目標は「社長が決めるもの」と考えている
幹部・従業員が関与しない計画は「やらされ感」が生まれ、実行されないことが多い

経営計画=売上・利益目標の設定だけ
ただ数値目標を掲げるだけでは意味がなく、目標を実現できる具体的な行動計画は必須

目標達成のための「キャッシュ戦略」がない
いくら利益が出ていても、キャッシュが回らなければ事業は継続しない

計画発表して、あとは幹部・従業員任せ
計画を企業文化として浸透させる仕組みがなければ、組織が動かず計画倒れになる

短期目標ばかりで、長期戦略が不明確
一時的な成果を優先しすぎると、持続的に成長することが難しくなる

計画を実行に移して、利益を最大化する仕組みを構築しよう!

【成長戦略を活かすための3ステップ】

Step 1 幹部・従業員が自ら動く!ターゲット別の計画書を策定
経営層・幹部層・部門ごとのターゲット別計画書を策定し、各自が「自分事」として捉えることが重要。これにより当事者意識と行動力が向上します。

ターゲット別計画書
・社長の理念ビジョンを投影した「中期経営計画」
・幹部が自ら動きたくなる「単年度計画」
・部門の従業員が自ら動きたくなる「部門計画」

Step 2 キャッシュ最大化に着目した目標を設定
売上ばかりを追いがちですが、重要なのはキャッシュフロー基点の目標設定。資金計画を明確にすることで、成長戦略が実行性の高いものになります。

目標設定
・売上・利益の目標設定(PL視点)
・運転資金の確保(BS視点)
・キャッシュフローの最適化(CF視点)

Step 3 目標設定後、幹部・従業員が動きたくなる行動計画を策定
目標設定で終わるのではなく具体的かつシンプルな行動計画を作るかどうかが成否を分けます。幹部・従業員が主体的に動ける仕組みづくりが大切です。

行動計画のポイント
・KPI(重要業績指標)を設定し、進捗を可視化する
・「誰が・いつ・何をするか?」を明確にする
・PDCAを組み込み、計画を修正できる仕組みを作る

経営計画をやり遂げるためのPDCAとは?

PDCAは形式的になりがちですが、実行力を伴わなければ意味がありません。まずは、目標を明確にし、達成状況を正しくチェックできる仕組みを整えることが重要です。

また、忙しい中でもPDCAを回せるよう、データ活用や定期的なフィードバックを取り入れ、習慣として根づく運用体制を目指しましょう。継続こそが成功の鍵です。

Plan(計画)
・目的・目標を具体的に設定
・詳細な現状分析により、課題を明確化
・アクション・責任者等を具体的に決めた計画立案

Do(実行)
・計画に基づき忠実に行動
・実施内容・結果を記録、評価のためのデータを残す

Check(評価)
・成果を目標と比較し達成度合いを分析
・ギャップと原因を特定
・KPIや成果指標を用いて評価

Act(改善)
・分析結果を基に改善策を立案
・改善内容を次の計画に反映
・内容を社内共有し、研修を行う

PDCAの実行はトップダウンではなく、ボトムアップで。

PDCAを制度として習慣化するためには、現場が「納得」「腹落ち」する仕組みを作ることが重要。トップからの強制ではなく、現場からの声を活かしたボトムアップ型の体制が求められます。

「100億企業」への挑戦を後押しする税制優遇・補助金制度

税制優遇「中小企業経営強化税制」適用期限(2027年3月31日)まで

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作等をした場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)が選択適用できます。

令和7年度税制改正にて経営規模拡大設備(E類型)が拡充!

売上高100億円超の達成に向けたロードマップ作成等を要件(経営規模拡大要件)に、工場のラインや店舗等の生産性向上に係る設備導入に伴う建物を対象設備に追加。令和7年夏以降の拡充予定。

本制度の適用を受けるためには
➀生産性向上設備(A類型)
➁収益力強化設備(B類型)
➂経営資源集約化設備(D類型)を導入して実施する「経営力向上計画の認定」を受けることが必要になります。

要件
投資利益率が年平均7%以上
売上高100億円超を目指すロードマップの作成
売上高成長率年平均10%以上を目指す
前年度売上高10億円超90億円未満(最低投資額1億円 or 前年度売上高5%以上)
賃上げ率2.5% or 5.0%以上等

対象設備
機械装置(160万円以上)
工具(30万円以上)
器具備品(30万円以上)
ソフトウェア(70万円以上)
建物及びその附属設備(1,000万円以上)
(生産性向上に資する設備の導入に伴って新増設される建物及びその附属設備に限る)

必須要件である「経営向上計画の認定」には、自社の経営課題とその改善策、成長戦略の一貫性を示すことが求められます。単なる提出書類ではなく、生産性向上に向けた数値目標や具体的な行動計画を記載した“経営の道しるべ”としての質が求められます。

補助金「中小企業成長加速化補助金」令和6年度補正予算

目的:賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果が大きい売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な投資を支援。

補助対象者:売上高100億円を目指す中小企業(※売上高が10億円以上100億円未満である必要があります。)
補助上限額:5億円(補助率1/2)
補助事業期間:交付決定日から24か月以内
補助事業要件:

➀「100億宣言」を行っていること
➁投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
➂一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間)

中小企業成長加速化補助金の活用には「100億宣言」が必須です。また、賃上げ要件として都道府県の基準率以上の賃上げ目標を掲げ、従業員に表明し、達成することが求められます。さらに、補助対象経費は建物費(※土地代除く)、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費に限定されており、用途に注意が必要です。

※上記の補助金の内容は2025年7月時点の情報になりますので、最新の情報と異なる可能性があります。詳細はTOMAまでお問い合わせください。

TOMAの「補助金申請支援サービス」はこちら

100億企業への挑戦が組織の継続的な進化につながる

「100億企業」は単なる数字の達成ではなく、その過程にある戦略の洗練、組織体制の強化、文化の醸成など、持続的な成長と発展のための企業進化こそが本質です。

TOMAでは、100億という目標に向かって社員が一丸となって取り組める計画策定や実行力のある仕組みづくりをはじめ、事業全体の構造や戦略の見直しなど、100億企業への挑戦をワンストップで支援しています。社員と共に歩む100億企業への道、その第一歩をTOMAと共に踏み出しませんか?

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