課税庁が法人に対して行っている税務調査は、一般的に
①法人税中心タイプ
②消費税中心タイプ
③源泉所得税のみ
④印紙税のみ
に分けられます。
ここで注目しなければならないのは、公益法人等の非営利法人では①と②でも「源泉所得税」についての調査が平行して行われており、調査対象となりやすいということです。
また、源泉所得税の調査において、通常行われる現金支給の給与とは異なり、現金以外で支給する「経済的利益」についてはミスが散見されており、指摘事項となりやすいため、今回は経済的利益の例について解説していきます。
■経済的利益となる利益
金銭以外の物又は権利その他経済的な利益を享受したときでも収入を認識することになり、その収入額を「経済的利益」と呼んでいます。
■課税しない経済的利益
税務調査でも論点となりやすい、代表的な経済的利益についての課税関係について触れていきます。
1.永年勤続者の記念品等
永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
(1)その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
(2)勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
(3)同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。
※なお、上記の要件を満たしていても課税されるものもあります。
(1)現金、商品券の支給
記念品の支給や旅行、観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
(2)表彰者が記念品等を自由に選択できる場合
記念品等を支給者が決めるのではなく、表彰者が規定金額の範囲内で自由に選択した品物を支給する場合は、課税対象とされる可能性が高いと考えられています。これは、表彰者が支給された金額で品物を購入したのと同様の効果であるとみられるためです。
したがって、表彰者が限定された品物の中から好きなものを選ぶ方法ではであれば同様の効果とは言えないため、課税されないことになります。
(3)旅行券の支給
旅行券は有効期限もなく、換金性もあり、実質的に金銭を支給したことと同様になりますので、原則として給与等として課税されます。 ただし、次の要件を満たしている場合には、課税しなくて差し支えありません。
1.旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること。
2.旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます。)であること。
3.旅行券の支給を受けた者が当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して貴社に提出すること。
4.旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券は貴社に返還すること。
(国税庁タックスアンサー源泉所得税No2591.Q より)
2.食事(残業食事代)の支給
法人が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外に勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については課税されません。
※ここでの残業の定義は、労働基準法に規定されている労働時間には拘束されずに、その法人にとっての通常の勤務時間を指しています。
3.レクリエーションの費用
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額であることから、強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものと認められ、かつ、その旅行が次のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいこととなっています。
(1) 旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
(2) 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。
(注1)行事に参加できなかった人に支給する金銭については、理由を問わず給与として課税されます。
(注2)従業員の家族も参加した場合、この家族にかかる費用は給与として課税される可能性が高いとされています。
(注3) 次のようなものについては、ここにいう従業員レクリエーション旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。
(1) 役員だけで行う旅行
(2) 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
(3) 実質的に私的旅行と認められる旅行
(4) 金銭との選択が可能な旅行
ここまで間違えやすいとされている経済的利益の取り扱いについてみてきましたが、課税されないと思っていたのに課税されてしまった、ということもありえると思います。また、公益法人等にとっては、特定の者に特別な利益を供与してしまうと、法人税法上の非営利型の要件や公益認定法上の認定要件を満たさなくなるといった、取り返しのつかない事態に陥ってしまうこともありますので注意が必要です。
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