申告に誤りがないか、税務署の調査官が捜査に入る税務調査。
追徴課税されることにならないよう、調査当日やその後の流れも事前に知っておきたいところです。
今回は、税務調査の事前準備・当日の流れ・その後の流れについてご紹介していきます。
■事前通知
まず、一般的な税務調査の対象となった場合は、調査の前に会社の顧問税理士(いない場合は会社)に電話連絡が入ります。
連絡内容は、税務調査の日程調整・調査場所・調査対象の税目・期間・調査の目的などです。
調査日時は事前準備に必要な日数も関係してくるので、顧問税理士と相談しながら調整しましょう。
なお、飲食店など現金取引が主な法人や過去に悪質な脱税を行った法人、関係者から通報があった場合などは、事前通知が行われないこともあります。
また、悪質な脱税行為などが発覚した場合に行われる強制調査の場合は、一種の犯罪捜査となるため事前通知はありませんので注意が必要です。
■事前準備
税務調査の日程が決まったら、それまでに顧問税理士と相談し、傾向と対策を考えた上で証憑書類等の準備をしておきましょう。
◇準備すべきもの
準備すべきものは、事前通知された事業年度の資料(通常3年間分)です。準備しそびれて当日慌てて探すと、心象が悪くなる恐れがありますので、しっかりと準備しておきましょう。
●総勘定元帳
●補助元帳
●現金預金出納帳
●賃金台帳および年末調整書類
●棚卸明細表
●預金通帳
●見積書、納品書
●証憑(会社が受領した請求書および領収書)
●会社が発行した請求書
●会社が発行した領収書の控え(耳)
●会社が発行した手形および小切手の控え(耳)
●販売契約書、賃貸借契約書、稟議書
●出張手当等の経理規定
●会社のパンフレットおよび組織図
●議事録(株主総会や取締役会等の議事録)
●タイムカードまたは勤怠管理表
●その他重要だと思われる書類
■調査当日の流れ
通常、調査は2~3日間で行われます。
ただし、そもそも会社の規模が大きい場合や調査中に追加調査が必要と判断された場合は日程が延びることもあるので、2~3日間で終わるよう万全の準備をしておきましょう。
◇調査1日目
調査官は大体2人組で午前10時頃来社します。
その際、身分証明書の提示があるので、必ず所属と氏名を確認しましょう。
午前中は、いきなり帳簿を調査されることは少なく、世間話から始まり社長や関係者へのインタビューがなされます。
雑談の中でも例えば、「社長の趣味はゴルフ」→「会社のゴルフ大会に必要以上の経費が計上されていないか」といった形で、調査官は不正を見つける手がかりを探しています。
もちろん、インタビューで会社の設立趣旨や企業概要等、会社の基本情報も聞かれます。
だからといって過度に緊張すると怪しまれますので、自然体で落ち着いて話しましょう。
午後は、売上請求書、納品書、売上帳、当座帳等をもとに、売上勘定を中心に調査が行われることが多いです。仕入れに架空仕入れがないか、売上の計上漏れがないか等を確認します。
1日目は大体午後4時半頃に調査官が帰署します。
なお、調査官のお昼は各自で用意するため、こちらで用意する必要はありません。
◇調査2日目
午前中は、1日目の続きに加え、源泉所得税関係の調査が行われます。
各種給与・賞与が正しく処理されているかの調査です。
午後は、経費関係についての調査です。
怪しい処理がないか調査されるとともに、消費税についても調査が入り、調べきれたら税務調査は終了です。
調査不足分については、追加資料の提出や実地調査に加え、「反面調査」という取引先への調査が入ることもあります。
特に反面調査は取引先の業務を滞らせてしまうので、準備は万全に整えておきましょう。
■調査後の流れ
調査後、調査官は税務署に調査結果を持ち帰り、修正申告が必要か検討します。
そして調査2~3週間後、今後の動きについて通知があります。
税務署との折衝では、会社側の主張に関して税理士を通じてしっかりと行うことが重要です。
◇修正不要の場合
「更正決定等をすべきと認められない」(=是認)との通知書面が送付されます。
これで税務調査は終了です。
◇要修正の場合
顧問税理士へ指摘事項について連絡が入ります。
修正申告が必要な場合と、指導のみで終わる場合があります。
修正申告が必要な場合は、顧問税理士と調査官で修正について話し合いが行われます。
修正申告をするかどうかはあくまで納税者側に決定権があるので、修正申告をしないという選択も可能です。
修正申告をすると、不足分の本税を支払う上、翌年の法人税申告の際の計算が複雑になります。
しかし、修正申告をしない場合、「決定」という行政処分を税務署長から受け、裁判に発展することもあるため、自主的に修正申告をするケースが多いようです。
税務調査は数日がかりの骨の折れる調査です。ただし、きちんと準備し堂々と受け答えができれば、そこまで恐れるものでもありません。いつ調査が入ってもいいように、普段からきちんと準備しておきましょう。