海外不動産を利用した節税策
オーナー企業の経営者や開業医など、所得の高い富裕層を対象とした節税策として、海外不動産の利用が人気を集めてきました。しかし、この節税策については以前より問題視されており、今回発表された令和2年度税制改正大綱では、ついにその規制につながる内容が盛り込まれました。
最近では、物件を仲介する不動産会社の売り込みも異常な過熱をみせていましたが、今回の改正を通して鎮静化すると考えられ、物件購入に際して今後は十分に注意する必要があります。
問題視された理由
個人の所得税負担を減らす方法には、例えば給与所得が多い年において、別の所得で赤字を作ることにより、それらを通算して所得を少なくすることが考えられます。その方法の1つとして注目されてきたのが、海外不動産への投資です。
海外の中古不動産は、価格に占める建物比率が日本よりも高く、しかも短期で償却できるため、減価償却費を多めに計上することができます。結果、不動産所得の計算において、不動産管理費等に減価償却費を加えた経費が、賃料収入を上回ることで赤字を作り、給与所得等の所得と通算して所得を少なくすることを狙いとしています。
このような特殊な節税対策は、税負担の公平性を欠くとしてこれまで問題視されてきました。
税制改正大綱と今後
今回の改正の概要としては、不動産所得の計算上、国外中古建物の賃貸で損失が生じている場合には、減価償却費の計上によって生じた損失部分について、給与所得等の所得と通算させることができなくなるという特例となっています。一方で、該当する建物を売却する際には、譲渡所得の計算上、取得費から控除すべき減価償却累計額から上記で認められなかった減価償却費分を除くことができる措置も盛り込まれています。
今回の税制改正大綱を通して、海外不動産投資は、毎年の税負担を減らすという考え方から、売却時の税負担を減らす考え方になっていくと考えられます。改正は令和3年分の確定申告からの適用となるので、現在該当の建物を保有されている場合や、これから取得する場合には慎重な検討が必要となります。
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