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会計不正の事例紹介 その2(固定資産の減損の兆候の回避)

記事作成日2018/05/17 最終更新日2021/08/06

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今回は、会計見積りの中でトピックとされやすい固定資産の減損処理に関する事例をとりあげます。会社は、合理的な理由がないにもかかわらず、仕入先から受け取ったリベート・協賛金を減損の懸念のある店舗に傾斜配賦し、減損処理を回避していました。なお、この会社は3月下旬に上場廃止となっています。

事例の紹介

・2018年2月1日に公表された上場会社の調査報告書(中間報告)の事例

店舗に係る固定資産の減損処理方法に関し、前提となる事実に精査を要する事項が判明し社外の有識者からなる調査委員会による調査が必要との指摘を会計監査人から受けて、調査を開始。中間報告でさらに遡っての調査が必要であることが判明し、会社は全容の解明に努力。

全容解明ができていないことを理由に、会計監査人から期限内の四半期レビュー報告書の提出を拒否され、延長承認後の提出期限の経過後8営業日以内の四半期報告書は提出できないこととなり、証券取引所より整理銘柄に指定、その後上場廃止

内容

固定資産の減損処理に関して、実際であれば減損処理の対象としなければならなかった店舗について、合理的な理由がないにもかかわらず受領したリベート・協賛金を傾斜配賦し減損処理を回避

(背景・発生原因)
・店舗の減損処理が行われないように、減損の懸念があった店舗は、売上や粗利益を上げることが必要
・調査委員会が調べていく中で、不正やその疑いのある事項が新たに判明したことから、調査範囲が拡大するなど更に時間が必要となることが判明。調査委員会の追加調査が継続中で完了時期も不明なことから、四半期報告書の提出は困難と判断(結果的に上場廃止)

(実際の対応)
・売上按分で各店舗に配賦されるべきリベートが減損の懸念のある店舗に傾斜配賦
・広告宣伝費の各店舗への配賦について、商圏が重なっている場合は、新聞の折り込みチラシ等をどの店舗に何枚つけるかで裁量が働く余地あり
・社内販売について、福利厚生の一環として店頭価格より安価に従業員に販売し各店舗に計上
・パート従業員の応援、エリア・チーフによる応援の人件費の処理

(発見の経緯)
会計監査人からの指摘。同時期に、会社の採用している配賦基準では、赤字店舗に本社費が配賦されていないとして、配賦の合理性についても指摘

(疑問点)
・会計監査人の指摘で発見されているが、中には8期前に遡って修正が必要とされる事項があることも判明。8期前も同じ監査法人が監査しており、もっと早い時期に気づくことができなかったかの疑問は存在(過年度に一部の項目で指摘していたが改善されていなかった事実も判明)
・会社は、減損を実施する意義を正しく理解し、現状の会社の経営状況を理解する必要があったが、減損の問題を配賦計算上の配慮のみで適用不要と対応しようとしていた。厳しい状況が継続し過去からも傾斜配賦している事実から判断して、店舗によっては踏み込んだ意思決定等が必要であったという事実は理解されていたと考えられており、早い段階からなぜ対応しなかったかの疑問あり

事例から学ぶこと

・多数の店舗を展開している場合の固定資産の減損処理について、一定の前提をもって収益・費用を配賦したうえで適用の可否を検討することは多いと考えられる。配賦計算に恣意性がないかを確認すること
・固定資産の減損に係る問題の全容が解明されなかったことから、期限内の四半期報告書の提出は困難と判断され、結果的に上場廃止されている。上場廃止に至るような影響のある会計処理として、適切な会計基準に従うことの意味の重さを理解すること

最後に

多数の店舗を展開しているような会社の固定資産の減損処理は、減損の判断の段階で、一定の前提をもった配賦計算が行われることが多いと考えられます。店舗レベルということから金額影響も大きくなり、経営の実態等を踏まえて客観的な判断を行う必要があることに注意してください。

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