平成28 年度税制改正にて、特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)を対価とする役員報酬の特例が創設されました。役員報酬を株式報酬にすることにより、業績向上のインセンティブ効果、株式目線の経営を促すことが期待されます。
◆特定譲渡制限付株式とは
経済産業省が発表した指針によると以下の(1)~(4)の要件すべてを満たす株式を特定譲渡制限付株式としています。
(1) 一定期間の譲渡制限が設けられている株式であること
(2) 法人により無償取得(没収)される事由(無償取得事由)として勤務条件または業績条件が達成されないこと等が定められている株式であること
(3) 役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引換えに交付される株式等であること
(4) 役務提供を受ける法人またはその法人の株式等の全部を直接に保有する親法人の株式であること
◆会計上の取り扱い
(1)株式総会等の決議による報酬額の確定時
(借方)前払費用等 ××× (貸方)報酬債務 ×××
(2)株式発行
(借方)報酬債務 ××× (貸方)資本金等 ×××
(3)役員による職務執行期間終了時
(借方)役員報酬 ××× (貸方)前払報酬費用等 ×××
◆法人税法上の取り扱い
法人税法上の損金算入時期については、役員等に給与等課税事由が生じた日、つまり特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日において、その法人が役員等から役務提供を受けたものとして、その役務提供に係る費用の額(上記(3)の額の合計)をその法人の事業年度の損金の額に算入することとされています。損金算入認容となるまでは別表四でその役員報酬額を前払報酬費用等として所得金額に加算(留保)し、譲渡制限が解除された事業年度の申告において別表五(一)に計上されている前払報酬費用等の額を所得金額から減算(留保)する処理をします。
◆届出不要となる事前確定届出給与
一定の要件に基づいて交付される特定譲渡制限付株式については事前確定届出給与の届出が不要とされています。
具体的には、職務執行開始の日から1 月を経過する日までに株主総会の決議により取締役報酬を定め、その決議から1 月を経過する日までに特定譲渡制限付株式を交付することが要件となります。