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2023(令和5)年10月1日から導入開始!インボイス制度とは何か?を徹底解説!

記事作成日2021/05/28 最終更新日2021/07/21

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インボイス制度とは?

2019(令和元)年10月、消費税が10%となるのに伴い導入された軽減税率。現在では8%と10%の2種類の消費税が混在しています。消費者としては慣れてきた感のある軽減税率ですが、2023(令和5)年10月1日から経理の透明性の向上、ミスのない処理を目的とした「インボイス制度」の導入が決定しています。

企業にとって大きな変換点となる制度。今回は「インボイス制度とは」にはじまり、導入の流れまで徹底解説したいと思います!

そもそもインボイス(適格請求書)とは?

インボイス(invoice)とはそもそも「送り状・明細付請求書」という意味の単語です。 ビジネスの世界では主に海外と物品のやり取りを行う企業や、貿易業界でよく使われています。 インボイス(適格請求書)には主に価格の明細書の他、請求書や納品書の役割を兼ねたもので、品名、数量、単価、企業名や連絡先などさまざまな情報が記載されています。 輸入されてきた品に間違いがないかどうかを最終確認するために使われる大変重要な書類とされています。

インボイスとは

現在、日本では10%と8%、複数の消費税が存在しています。 この状況は正確な消費税納税に関して問題があるとして、明確に消費税額を把握するため、課税事業者の売買にインボイスを交付する今回の制度導入にいたりました。

2023年、新たに始まるインボイス制度とは?

では、今回の導入される「インボイス制度」とはどのような制度なのでしょうか? 簡単にいうと、今後は「売手が買手に対して適用税率と消費税額を明記するようにしましょう」という制度です。 具体的にはこれまでの請求書に記載されていた内容は踏襲しつつ、申請によって得られる企業独自の「登録番号」、8%または10%の「適用税率」、さらに「消費税額等」を追記します。 これらが記載されていれば、請求書、納品書、領収書、レシートなど名称は関係ありません。

発行された請求書は売手・買手ともに保存をすることが義務付けられています。 インボイス制度によって発行されたインボイス(適格請求書)は、消費税の仕入額控除を受ける際に必要です。

インボイス制度とは

ちなみに、国税庁のHPではインボイス制度を以下のように定義しています。 インボイス制度が導入されたら、売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)がインボイスを求めたらインボイスを交付しなければなりません。そして、交付したインボイスの写しは保存することが義務付けられています。

買手は今後、消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには原則として、登録事業者と認められた取引相手(売手)から交付されたインボイスの保存が必要になります。 買手は、自ら作成した仕入れ明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され、取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

参考)国税庁 適格請求書等保存方式(インボイス制度)チラシ

売手側の留意点

世の中にはさまざまな企業が存在します。 B to Bを生業としている企業もあれば、洋菓子店やパン屋といった小売業、居酒屋やレストランなどの飲食店、タクシー業など不特定多数の顧客を相手にする企業もあります。 このようなB to Cを基本とする企業は記載事項を簡易的にした「適格簡易請求書」の交付も認められています。

また、インボイス(適格請求書)の形は書面での交付はもちろん、電磁的記録(いわゆるデータ)での交付でも問題ありません。

【交付の際に注意すべき事項】

(1)適格請求書発行事業者が発行したインボイス(適格請求書)に誤りがあった場合には修正の上、再交付しなければなりません。

(2)適格請求書発行事業者の登録がなされていない事業者がインボイス(適格請求書)と誤認するような書類を交付する、あるいは意図して記載内容を偽る行為は禁止されており、違反した場合には罰則が設けられています。

売手側の留意点

買手側の留意点

インボイス(適格請求書)を受領した課税事業者は現行と同様に、以下の4点を帳簿への記載する必要があります。

1.課税仕入れの相手方の氏名又は名称
2.取引年月日
3.取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4.対価の額

買手側の留意点

保存をする請求書等は以下のものが含まれます。

1.適格請求書または適格簡易請求書
2.仕入明細書等(適格請求書の記載事項が記載されていて、売手の確認を受けたもの)
3.卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる農産物や生鮮食品の譲渡について受託者から交付を受ける一定の書類

これらは電磁的記録での保存でも問題ありません。

インボイス(適格請求書)の交付が免除される場合

インボイス(適格請求書)の交付が困難な以下の場合は交付義務が免除されます。
(1)バス・船舶・鉄道などの公共交通機関(運賃が3万円未満に限る)
(2)卸売市場にて行われる生鮮食料品等の譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が行う卸売業務に限る)
(3)農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定しないものに限る)
(4)自動販売機での販売(料金が3万円未満に限る)
(5)郵便切手を対価とする郵便サービス(ポストに投函されたものに限る)

以下の場合は必要事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。
(1)適格請求書の交付義務が免除される取引
(2)適格簡易請求書の記載事項を満たした入場券などが回収されてしまう場合
(3)古物営業や質屋など、適格請求書発行事業者ではない者から棚卸資産を取得する取引
(4)適格請求書発行事業者ではないものから再生資源又は再生部品(棚卸資産に限る)を購入する場合
(5)従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当に係る課税仕入れ

必要事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められるケース

現行の区分記載請求書とインボイス(適格請求書)の違い

現行の区分記載請求書とインボイス制度はどのような点が異なるのでしょうか。

区分記載請求書等保存方式

現行の請求書では区分記載請求書等保存方式が採用されています。 この方式では、以下の5点を記載する必要があります。

(1)請求書発行事業者の氏名又は名称
(2)取引年月日
(3)取引の内容(軽減税率の対象品目である旨)
(4)税率ごとに区分して合計した対価の額
(5)書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

この方法では『益税』が発生します。 益税とは、消費税を支払う義務のある「課税事業者」と開業から1年目あるいは売上高が1,000万円以下で消費税の納税義務がない「免税事業者」の両方が消費税の納付を免れ、消費税が国や自治体に納付されないまま企業に残ることをいいます。

もちろん、免税事業者は消費税を納税する必要はないのですが、課税事業者が免税事業者に支払った消費税が仕入税額控除税額に含まれてしまい、本来、課税事業者が支払うべき消費税額が少なくなってしまうのです。 現状、益税は数千億円規模になると推計されています。

仕入税額控除とは

仕入税額控除は受領した消費税から、仕入れにかかった消費税を除くことができる制度です。 課税事業者は製品の販売やサービスの提供によって得た対価に含まれている消費税を納付しなければなりません。

例えば、300万円の車を販売すると10%、30万円の消費税が課税されます。 では、30万円全てを納付しなければならないのかというとそうではありません。 その車を仕入れるために、税込み110万円の費用が発生したとします。 すると、課税事業者は10万円の消費税を仕入れに使っていることになります。 結果、納付すべき税額は30万円−10万円=20万円となります。

仕入れ税額控除の仕組み

適格請求書等保存方式(インボイス制度)

現行の区分記載請求書等保存方式では益税を解決できないため、令和5年10月から新たに導入されるのが「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。

インボイス制度の導入以降は以下の3点を追記しなければなりません。

(1)課税事業者が登録によって得られる登録番号
(2)適用税率
(3)税率ごとに区分した消費税額等

この方式を採用することで、仕入れにかかった消費税額を正確に把握できるようになります。 また、インボイス(適格請求書)を発行できるのは事前申請を行なった「課税事業者」だけです。 そのため、免税事業者へ支払った消費税が控除に利用されることで発生する「益税」がなくなります。

現行の請求書とインボイスの比較

大変複雑な制度がはじまるかのように感じるかもしれませんが、これまでの請求書と書き方が大きく異なるわけではありません。

比較すると従来の請求書に追記される内容が少し増えるといった感じです。 しかし、これらが記載されることで取引の透明性が担保され、正確な経理処理を行うことができるようになります。

2023(令和5)年10月1日(日)から導入開始

インボイス制度の導入は2023(令和5)年10月1日(日)から開始されます。 しかし、当日になったら全事業者がインボイス制度の対象となるわけではありません。 インボイス制度の対象となるのは「適格請求書発行事業者」だけです。

適格請求書発行事業者になるためには『適格請求書発行事業者の登録申請書(登録申請書)』を所轄の税務署に提出し、認可を受けなければなりません。

事前申請は2021(令和3)年10月1日から2023(令和5)年3月31日までです。 登録申請書の提出後、審査に問題がなければ税務署から登録番号などの通知が届きます。 登録番号は、法人事業者は「T+法人番号」です。 その他の事業者は「T+13桁の数字」が新たに発行されます。 現在、課税事業者である企業は申請が義務付けられています。 売上1,000万円以下の個人事業主など、免税事業者は取引先との関係を鑑みて申請するケースが増えることが予想されています。 課税事業者は取引先に免税事業者がいる場合、仕入税額控除の額が減少する可能性があるからです。

制度導入までのスケジュール

登録の準備には一定の期間が必要のため余裕を持っての申請が必要です。 TOMAではインボイス制度の関する相談、申請のサポートをしております。

申請したいけど、制度をいまいち理解していない、何を準備すればいいのかわからないといった相談も歓迎です。 初回は無料ですのでお気軽にお問い合わせください

なぜインボイス制度が必要なのか?

では、国はなぜインボイス制度を作るのでしょうか まず、最も大きな目的は正確な消費税額を把握し、正しい税率を確認できるようにするためです。 軽減税率の採用によって複数の税率が存在すると、仕入れにかかった合計金額だけでは消費税額がわかりません。

例えば洋菓子店では、一つのショートケーキを提供するためにさまざまな商品、サービスが必要になります。 イチゴに卵、砂糖、薄力粉、牛乳、バター、生クリームなどの食材は消費税率8%ですが、ボウルや泡立て器、オーブンなどの機材は10%です。

また、できたショートケーキを包むフィルムや包装箱なども10%となります。 複数の税率が混在すると、正しい納税額の計算が困難になるため、インボイス(適格請求書)の活用によって、正しい税率を確認できる状態にしておくことが大切なのです。

インボイス制度が必要な理由

次に、前述もしましたが、現行の方法では免税事業者の消費税が控除に含まれるなど正確な納税が行われていない現状があります。 この問題を解決するためには、消費税を納税すべき事業者とそうでない事業者を明確に区別することが必要です。 また、本来は消費税率8%の商品を仕入れたのに、悪意を持って10%と虚偽の計上をすれば、2%の不正利益を得ることも可能です。

これらの問題を解決するためにインボイス(適格請求書)が必要となります。 インボイス(適格請求書)を導入することで納税が正常に行われるだけでなく、意図しない経理のミスを防ぐことも可能です。

もちろん、導入当初は、経理の現場に負担がかかるでしょう。 一見、遠回りのように感じるかもしれませんが、必要なシステムをそろえ社員教育を徹底することが、正常な企業経営の近道となるはずです。

インボイス制度が必要となる理由2

インボイス制度はいつから?インボイス制度が始まったらどんな社会になる?

では、実際に制度が導入されたらどんな影響が起こるのでしょうか。 現状、課税事業者となっている企業は適格請求書発行事業者になるための登録申請が義務化されています。 現在使用している請求書発行システムがアップデートされ、インボイス(適格請求書)に対応すれば良いですが、そうでない場合は、インボイス(適格請求書)の発行に対応したシステムの導入が必要になります。 導入するシステムが決まれば、社員教育を行い導入開始に備えましょう。

また、インボイス制度が導入された後は、免税事業者との取引で支払った消費税は仕入税額控除として認められなくなります。 取引のある企業の中に免税事業者があれば、仕入額控除に影響が出るため、課税事業者になるよう要請するかどうかの検討も必要です。

ただし、2021(令和5)年10月1日の制度導入と同時に、免税事業者との取引全てが仕入額控除の対象外となると、社会に混乱が起きる可能性があります。 そのため、国税庁は『免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置』を設けています。 かんたんに言うと、「いきなり全部ダメにするのではなく、少しずつ仕入額控除を減らしていきますよ」という措置です。

区分記載請求書と同様の事項が記載された請求書等及び、この経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合、下記の期間、一定の割合で仕入税額を控除することができます。

《経過措置の期間》

2023(令和5)年10月1日から2026(令和8)年9月30日まで仕入税額相当額の80%
2026(令和8)年10月1日から2029(令和11)年9月30日まで仕入税額相当額の50%

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入方法

では、自社にインボイス制度を導入するにはどうすれば良いのでしょうか。 導入には、以下の手順を踏む必要があります。

【手順1】適格請求書発行事業者の登録申請書を提出

インボイス制度を自社に取り入れるためには、2021(令和3)年10月1日から受付を開始する事前申請が必要です。 適格請求書発行事業者の登録申請書(登録申請書)は、国税庁のHPからダウンロードすることができます。 提出先は納税地を所轄する税務署長ですが、登録申請はe-Taxから行うことも可能です。 申請書の提出後には審査がありますが、審査を無事通過すると登録事業者として認定され、固有の登録番号が通知されます。

【手順2】インボイス対応のシステムを整備

申請が完了したら、新たに記載が必要になる(1)課税事業者が登録によって得られる登録番号、(2)適用税率、(3)税率ごとに区分した消費税額等、以上3つの要件を満たすインボイス(適格請求書)を発行できるシステムを導入します。

【手順3】業務フローの構築

システムの導入まで完了したら、社内の機材や人材の整備です。 新しいシステムに対応したハードの購入が必要にケースもあるでしょう。 システムの運用に合わせて、営業や販売、経理部門の業務フローを変更する必要もあるかもしれません。 仕入れを行う際には、売り手がインボイス(適格請求書)を発行する適格請求書発行事業者かどうかに合わせて、新たな消費税の控除フローを構築する必要があります。

インボイス制度の導入手順

【番外編】免税事業者は課税事業者になるかどうかを要検討

現在、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者や、開業1年目の事業者は消費税の納税が免除されています。 免税事業者は仕入れを行う際に消費税を支払っているため、販売において消費税を請求することが可能です。 これは免税事業者の優遇措置として認められています。 しかし、インボイス制度の運用が本格的にはじまると、課税事業者は免税事業者との取引が仕入額控除の対象から外されます。

結果、免税事業者との取引を控えようとする課税事業者が増えるでしょう。 今後、課税売上高が1,000万円以下の個人事業主やフリーランスなどの免税事業者は、消費税を納税する課税事業者となるかどうかの決断を迫られることになるでしょう。 インボイス制度を導入し、免税事業者が課税事業者に切り替わることで、財務省はおよそ2千億円の増収につながると推計しています。

インボイス制度に迷ったらTOMAがサポートいたします

以上、インボイス制度の基本についてご説明いたしましたがご理解いただけたでしょうか。 解説してきた通り、申請の準備やシステムの選定、社内教育に業務フローの改定など導入には一定の準備期間が必要です。

インボイス制度の登録申請受付開始は令和3年10月1日からですが、準備を始めるのは早いに越したことはありません。 TOMAでは、制度に関する相談を税理士が、システム導入を専門アドバイザーが全力サポートさせていただきます。 初回相談、関連セミナーの受講は無料で行っていますので、お気軽にご相談ください。

参考
国税庁のサイト
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

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