平成28年11月に予定していた東京都中央卸売市場の豊洲市場への移転は延期となり、国税庁では豊洲市場への移転延期に伴う固定資産の減価償却費及び評価損の取扱いをまとめ、市場関係者に対し周知を行いました。
豊洲市場に設置した固定資産の問題点及び取扱い
法人税法(所得税法)上、「減価償却資産とは、棚卸資産、有価証券、繰延資産以外の資産で償却すべきものとして一定のものをいう。(ただし、事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)」と定義されており、減価償却資産に該当した資産については、損金経理を要件とし、税法上で定められる償却限度額を損金(必要経費)に算入することができると規定されています。
移転延期となった豊洲市場で問題となったのは、開場前の豊洲市場に設置した大型冷蔵庫などの機械装置等が事業の用に供されているかどうかの判定です。
国税庁は、固定資産を本来の目的のために使用を開始しているものについては、事業の用に供していると判断し、減価償却費の計上を認めています。
本件の場合においては、大型冷蔵庫を通電することによって冷蔵する機能を発揮している状態にある場合には、中身が空っぽの場合でもその大型冷蔵庫を本来の目的のために使用しているものとして、事業の用に供していると判断されます。
一方、法人事業者が豊洲市場に設置した固定資産のうち事業の用に供していないと判定された資産についても、事業年度末日における時価が帳簿価額を下回る場合には、法人税法上の評価損計上事由である物損等の事実(資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと)に該当します。この場合「東京都の補償基準に従って計算される価値減耗相当額」を限度として損金経理を要件に損金の額に算入することを認めています。
ただし、評価損の損金算入の規定は、法人税法上のみの規定であり、所得税法上には規定がありません。個人事業者については必要経費に算入できませんので注意が必要です。
また今回の豊洲市場への移転延期に伴い東京都から補償金を受領した場合の取扱いについても周知されました。法人事業者が受領する補償金については、支払を受けることが確定した日(補償金の交付決定通知日)の属する事業年度の益金の額に算入することとなります。
一方、個人事業者が補償金を受領する場合には、原則として移転延期に伴う財産的損害を補填するものであると考えられるため所得税法上の非課税所得に該当します。
ただし、個人事業者が受領する補償金のうち減価償却費として必要経費に算入される金額を填補するための補償金は、非課税所得に該当せず、補償金をその支払を受けることが確定した日(補償金の交付決定通知日)の属する年分の収入金額に算入することとなります。
まとめ
今回は世間の身近なニュースを税務上の観点から説明しました。普段なかなか税務上の観点から見ることはありませんが、このように税務上の視点から身近なニュースを見ることも新鮮で新たな発見を得られるかもしれません。