平成29年度の税制改正のひとつの目玉が、事業承継税制の見直しです。日本が高齢化社会に突入すると同時に、日本の中小企業の経営者も同じく高齢化問題に直面しました。事業承継が声高に叫ばれても、現状として事業承継は遅々として進んでいません。事業承継の円滑化のため、事業承継税制の見直しが行われます。
見直し1:雇用要件の見直し
自社株式(非上場株式)の相続税・贈与税の納税猶予を受け続けるための要件の一つに、雇用の8割以上の維持があります。これは、常時使用する従業員数が、相続開始時又は贈与時における従業員数の80%(5年平均)を下回らないように維持しなければならないというものです。
この8割維持の計算で1人未満の端数が出た場合、現行では1人未満は切上げとされていましたが、切捨てに改正されます。例えば、従業員4人の会社の場合、80%で端数切り上げの場合、4人×80%=3.2人→切上げで4人となり、1人辞めてしまうだけで納税猶予の要件を満たさなくなります。
しかし、端数処理が切り捨てに改正されると、4人×80%=3.2人→切捨てで3人となり、1人辞めてしまっても要件は満たします。従業員が5人未満の事業者にとっては要件緩和となります。
見直し2:災害等の場合の要件緩和
納税猶予の適用を受けた事業者が災害等により被害を受け、また取引先が倒産するなど、経営環境に大きな変化があった場合であっても、当初課される要件が緩和されることはありませんでしたが、一定の条件に当てはまる場合には、納税猶予のための要件が緩和されることになります。
見直し3:相続時精算課税制度との併用
相続時精算課税制度との併用を認めるように改正がなされることにより、万が一納税猶予が取り消された場合であっても、相続税よりも高額な贈与税を納税しなくてもよくなります。
見直し4:相続税の納税猶予への切替時の要件緩和
贈与税の納税猶予から、相続税の納税猶予への切替を行うとき、要件として、中小企業者であることや、非上場株式であることなどの要件がありましたが、これらの要件が撤廃されます。これにより、企業の成長を阻害する要因がなくなり、後継者の経営に制約がなくなります。
非上場株式の納税猶予については、その制度が平成20年に開始されてから今まで、相続税の納税猶予が985件、贈与税の納税猶予が627件となっています。この適用の数が多いか少ないかはなんとも言えませんが、今回の改正により若干なりとも納税猶予が使いやすくなれば、事業承継の円滑化につながるものと考えられます。
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