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略式組織再編

記事作成日2017/12/11 最終更新日2017/12/11

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組織再編行為を実施する際には、会社法上多くの手続きが求められています。手続きのひとつに株主総会がありますが、一定の条件のもとに株主総会を省略できる制度があります。これからご説明する内容は、存続会社が組織再編前から存在していることが条件ですので、新設合併・新設分割・株式移転については対象外となります。

◆略式組織再編行為を利用できる場合

通常の場合、組織再編行為は消滅会社等の経営に重大な影響を与えるため、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議で組織再編行為の承認を受けなければなりません。しかし、株主総会を開催するには、多くの時間やコストがかかってしまいます。そのため、株主総会を開催しても賛成が得られることが明らかである場合には、株主総会を省略することができます。
株主総会が省略可能なケースとは、存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有している場合です(この場合の消滅会社を「特別支配会社」といいます)。
特別支配会社の株主の90%以上が存続会社であるため、特別支配会社の株主総会を省略することができます。なお、存続会社においても株主総会を省略できる「簡易組織再編」がありますが、ここでは詳細な説明は割愛させていただきます。

◆略式組織再編が認められないケース

前述の要件を満たしている場合であっても、次のすべての項目に当てはまる場合は略式組織再編を利用できません。
(1)合併対価等の全部または一部が譲渡制限株式等である。
(2)消滅株式会社等が公開会社である。
(3)種類株式発行会社ではない。

◆少数株主の保護

略式組織再編を適用できる場合であっても、100%の支配関係でなければ少数株主が存在することになります。そのため、会社法では組織再編行為の差止請求権や反対株主の株式買取請求権を認めています。差止の請求権ができる要件は次の2 つです。
(1)組織再編行為が定款に反している。
(2)組織再編行為の条件が著しく不当である。
「条件が著しく不当」とは、例えば合併比率が不平等というようなケースです。
以上の制度は、あくまでも株主総会を省略できる制度であり、その他の手続きについては実施する必要があります。しかし、組織再編行為を迅速に実施することができるため、少数株主を整理するには有効な制度となります。手続きが複雑等の理由で踏みとどまっている方は活用されてはいかがでしょうか。