事 例
わが社は40年前に父親が設立した建設会社です。
7年前に代替わりをして、私が社長になりました。先日父親が亡くなり、遺言書が出てきたので、中をみてみると、株式のことが書いてあり、株主名簿に記載されているうちのBさんは名義株なので名義の変更をしてもらえという記載がありました。そういえば、生前父親がそんなことを話していたなあと思い、Bさんに連絡をとってみると・・・
「いくらかは正確に覚えてないし、たいした金額じゃなかったと思うけど40年前会社の設立時に確かに出資をしたはずだ。ずいぶん前のことだが配当をもらったこともある。株式を渡すのはいいけど、買い取ってくれないか」
と言われました。
父親も亡くなっているので真実は確かめようもないし、わずかな株式のために揉めるのもいやなので、相手の希望の金額で買取りました。
父親が生きているときにきちんと整理をしておいてくれたらよかったのに・・・
なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか?
名義株の発生原因
平成2年の商法改正前においては、株式会社を設立するためには最低7人の発起人が必要でした。発起人は1人最低1株を引き受ける必要があった為、実際は、1人で出資したとしても残りの株式につき親戚や友人などから名義を借り発起人になってもらうケースが多くありました。
このように名義株の多くは、株式会社設立の際に最低7人の発起人が必要であったという事情に由来します。
平成2年以前に設立した会社は、株主名簿を見直して、名義株が残っていないか、確認してみて下さい。そして、もし名義株主がいるようでしたら、早めの対策が必要でしょう。
実質上の株主の判定基準
東京地裁昭和57年3月3日判決では、実質上の株主の判定基準として、以下の基準が示されました。
- 株式取得資金の拠出者
- 名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意の内容
- 株式取得・名義変更の目的
- 取得後の利益配当金や新株等の帰属状況
- 名義貸与者及び名義借用者と会社との関係
- 名義借りの理由の合理性
- 株主総会における議決権の取扱い及び行使の状況
名義株の存在を放置していたような場合には、名義株主が実質的株主とされてしまう場合があります。
また、商法登記法省令の改正に伴い、商業登記申請の際に株主名簿の添付が必要になるケースがあります。株主名簿が作成できない会社、株主名簿を役所に提出できないという会社は、早急に対策が必要です。
改正後の登記申請のポイント
登記申請時に株主総会(種類株主総会)議事録を添付する場合、株主名簿の添付が必要になります。
添付する株主名簿には、議決権の割合の多い方から上位10名の株主又は議決権の多い順に記載し、そのトータルの議決権が2/3に達するまでの株主の氏名又は名称及び住所、株式の株等を記載します。ただし、登記事項について、総株主の全員の同意を必要とする場合は株主すべてを記載することになります。
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