贈与税の課税制度には、原則的な課税方式である「暦年贈与」と一定の要件を満たすと選択することができる「相続時精算課税」の2 つがあり、今回はこの2 つの制度について解説します。
◆暦年贈与の課税方式
暦年贈与は、1 月1 日~12 月31 日までの間(暦年)に贈与を受けた財産の合計額である課税価格から基礎控除額110 万円を控除した残額に累進税率(直系尊属からの贈与で一定の要件を満たした場合には、税率が緩和されています。)を乗じて計算します。
なお、暦年の贈与を受けた財産の価格が110 万円以下の場合には、贈与税が課税されず、申告も不要となります。
また、相続や遺贈によって財産を取得した者が相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与によって財産を取得したことがある場合には、贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算(生前贈与加算)し、暦年課税分の贈与税額控除で生前贈与加算をした財産の贈与税額を相続税額から控除します。
◆相続時精算課税の課税方式
相続時精算課税は、贈与の年の1 月1 日において贈与者が60歳以上であり、受贈者は贈与の年の1 月1 日において20 歳以上で贈与者の直系卑属である推定相続人又は贈与者の孫である場合に贈与者ごとに2500 万円(前年以前に既に控除した金額がある場合はその残額)を控除した残額に一律20%を乗じて計算します。
なお、相続時精算課税の適用を受けるには、最初の贈与を受けた年の翌年2 月1 日から3 月15 日までの間に、贈与税の申告書に相続時精算課税選択届出書を添付する必要があります。
しかし、相続時精算課税を選択すると暦年贈与に戻れないので注意が必要です。
なお、相続時精算課税適用者は、相続時精算課税適用財産を相続税の課税価格に加算し、相続時精算課税分の贈与税額控除で相続税額から相続時精算課税分の贈与税額相当額を控除します。
この場合に、相続税額から控除しきれなかった税額に相当する金額ついては相続税の申告書の提出を提出することで還付を受けることができます。
◆暦年課税と相続時精算課税のまとめ
将来値上がりする不動産等では、相続時精算課税を選択すると贈与税額控除は贈与時の時価で計算するため有利になることもありますが、納税者の資産内容等を把握した上で多面的に判断する必要があります。相続対策に強い税理士に早めにご相談ください。