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建設業における事業承継の課題と対策

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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現経営者から後継者に事業を引き継ぐ、事業承継。どの会社でも注意すべき手続きではありますが、建設業で事業承継を行う際には特に注意しなければなりません。では、一体どういった点に気をつければよいのでしょうか?こちらでは、建設業における事業承継の課題と対策についてご紹介します。

■建設業の事業承継の問題

建設業の事業承継で問題となるのは、建設業許可を引き継ぐことができないという点です。正確にいえば個人事業では建設業許可を承継できませんが、法人ならば役員や株主が変わっても許可を引き継げます。ただし、事業承継時に要件を満たさなければ許可は取り消されてしまいます。

そもそも建設業許可とは、建設工事の完成を請け負って営業する際に必要なものです。公共工事・民間工事のどちらでも、建設業法第3条 に基づき建設業の許可を受けなければなりません。そして建設業の許可には、「経営業務管理責任者(経管)」と「専任技術者(専技)」の在籍が求められます。もし後継者への引き継ぎを済ませても、経管・専技の不在により建設業許可の取得ができないケースも大いにあり得ます。建設業許可が下りなければ、当然建設業務を行えません。

■建設業許可に必要な要件とは

ここでは、建設業許可に必要な要件をみていきましょう。

◇経営業務の管理責任者が在籍している

 建設業は、他の産業の経営とは大きく異なる業界です。そのため、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が最低でも1人は必要となります。

一定期間の経験とは、以下の通りです。

・5年以上経営業務の管理責任者としての経験。

・執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験。または6年以上経営業務を補佐した経験

・「許可を受けようとする建設業」以外の建設業において、6年以上経営業務の管理責任者等の経験。

また、法人では常勤の役員のうちの1人、個人では本人または支配人のうちの1人を経営業務の管理責任者として選ばなければなりません。

◇専任の技術者が在籍している

一般建設業の場合、専任技術者の要件は以下の通りです。

・指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者

・指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者。または専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者

・許可を受けようとする建設業の業種に関して、10年以上実務の経験を有する者

・申請業種に関して法定の資格免許(国家資格)を有する者

・複数業種において実務経験を有する者

なお、国家資格を取得していたとしても、1年以上の実務経験が必要な場合もあります。また、ここでいう実務経験とは「建設工事の施工に関する技術上すべての職務経験」のことです。

◇営業所が存在する

営業可能であることを証明するために必要です。

◇請負契約において誠実性がある

詐欺や脅迫といった「法律に違反する行為」を行わず、工事内容に対して真摯に取り組む体制を整えましょう。

◇財産的基礎、金銭的信用がある

一般建設業の場合、どれか1つの条件に該当しなければなりません。

・自己資本が500万円以上あること

・500万円以上の資金を調達する能力があること

・許可申請の直前過去5年間許可を受けて、継続して建設業を営業した実績を有すること

◇許可を受けようとする者が、一定の欠格要件に該当していない

申請者や役員が5年 以内に、建設業法違反などの行為を行っていないことが条件です。

■事業承継をめぐる建設企業の現状

2017年度の中小企業白書によると、後継者の選定を始めてから了承を得るまでに3年以上の期間を要した企業が約4割を占めています。

また、中小企業の経営者の年齢は、1995年の50~54歳層に対して、2015年には65~69歳層まで上昇し、過去20年間で大幅に高齢化が進行しています。

このような背景に加えて、建設業では新規の建設業許可が下りるまでに最大で2か月 かかります。

そのため、一般の中小企業と比べて、事業承継を完了するにもさらに期間が必要となる点に留意しなければなりません。

■事業承継対策としてできること

◇経営業務管理責任者の引き継ぎ

建設業で事業承継を行う際には、後継者の役職に注目しましょう。

個人の場合は支配人、法人では取締役として登記しておくことが大切です。

後継者の経営実績が5年以上あれば、経営業務の管理責任者としての実績を証明することができるため、建設業許可を引き継ぐための申請ができます。

なお、ここで注意しなければいけないのが、支配人・役員としての経験年数を証明できるようにしておくことです。

個人の場合は確定申告書の写し、法人の場合は登記事項証明書などが必要となります。

◇専任技術者の引き継ぎ

前述の通り、専任技術者については建設許可の業種における資格取得の他に、10年以上の実務経験が必要となります。

その業種における資格を後継者が取得しておくのはもちろんのこと、実務経験を証明する書類として社会保険証や厚生年金の加入記録を準備しておくとよいでしょう。

■まとめ

建設業は専門性の高い分野であるため、建設業許可が必要となります。しかし、事業承継時に建設業許可を引き継げず、経済的損失や経営危機が起こるケースも目立ちます。建設業許可の要件を把握したうえで、事業承継対策をきちんと行いましょう。