建物の法定耐用年数は構造で決まります
馬や牛、樹木にも法定耐用年数があるということは、あまり知られておりませんが、建物の法定耐用年数という言葉は何かと耳にする機会があるかと思います。法定耐用年数とは、機械や設備などの減価償却資産の使用可能な期間が、それぞれ個々で変わってしまうため正確に見積もることが困難であることから、税法で年数を定めたことによります。たとえば木造住宅用建物なら22年、鉄骨造住宅用建物で鉄骨の厚みが3.1mm~4mmまでなら27年、賃貸マンションなどの鉄筋コンクリート造住宅なら47年になります。
実際には何年もつのか?
耐用年数という考え方は明治の頃からあったようですが「固定資産の耐用年数に関する省令」が制定されたのは昭和26年のこと。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」は昭和40年に制定されました。当初、木造は50年、鉄筋コンクリート造は150年などの規定があったようですが、年を経るに従って徐々に短くなり、現在のような年数になりました。それでは実際には何年もつのでしょうか。耐用年数が規定された当時と比較して、現在ではコンクリート造200年住宅なども誕生しており、建築技術は格段に進化しております。鉄筋コンクリート造の建物などは当初の想定をはるかに超える構造寿命となってきました。
暮らし方の変化も建物寿命に影響か?
それでは耐用年数と矛盾するのではないか?といった声を聞くことがありますが、実際に鉄筋コンクリート造のマンションなどが建替えられた事例などでは、築30~40年前後の例も多く、その理由としては、建物の構造躯体的には問題が無くても配管設備が劣化したり、居室のバリアフリー化が困難であったり、耐震基準が新基準を満たさないなどの設計基準の変化や、エレベーターの普及や高断熱化、セキュリティ設備に対するニーズの高まりなど、暮らし方の変化や住宅設備の進化等に建物が対応できない等の要因があります。このように構造躯体の劣化が原因ではなくても解体除却しての建替えもあり、矛盾するとは言えないのです。
建物寿命が延びたとしても・・
建物に200年の寿命があったとして、社会構造の変化や価値観や暮らし方の変化、AI(人工知能)技術の進化やコミュニケーションツールの変貌など、建物を取り巻く環境は日進月歩に変化しています。これからの建物が200年先まで環境変化に対応できるかと言えば、それは予測可能な範囲までの想像の世界でしかありません。走る目的が満たされても車を新車に乗り換えるように、建物も「住める」だけが目的ではなくなっています。